会社は就業規則を勝手に変更できる?就業規則の「不利益変更」とは?

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監修者:みんなのユニオン 執行委員
岡野武志

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「給与が引き下げられた」「手当が廃止された」など会社側の一方的な都合で、就業規則や労働条件が不利益に変更されると、何だか損したような気分になりますよね。

特に変更の旨を通知されていない場合は、「騙されたのではないか?」と思われるかもしれません。

しかし、会社は労働者の不利益になることをしたくなくても、経営上、賃金の引き下げや労働条件などの変更を行なわざるを得ないことがあります。

ただし、たとえ会社側に一定の事情があるとしても、一方的に就業規則を変更することは原則として禁止されています

では、あなたの会社が、法律上の手続きのもと労働条件が変更されたのかどうかを知るために、労働者が知っておくべきことをみていきましょう。

労働条件の定義 | そもそも労働条件とは何?

雇用主は、労働者を雇用するにあたり、労働条件を定めなければいけません。

実際、会社に入社する前、始業時間や就業時間、休憩時間、休日、賃金など労働条件を確認したことでしょう。

では、労働条件はどのように定められているのでしょうか?

労働条件はどのように定められている?

労働条件とは、労働契約の期間、仕事をする場所、就業時刻、賃金などのことで、最低基準は労働基準法で定められています

そして、会社側は労働者を雇用する際、双方が合意しなければいけません。

労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。

労働契約法第6条(労働契約の成立)

つまり、労働条件は、双方の合意によって決めなければいけません

そのため、会社側は雇用契約書や労働条件通知書などを交付し、労働者はそこに署名や押印をすることが一般的となっています。

なお、雇用契約書や労働条件通知書などには、「法定どおり」とか「就業規則の規定による」などと記載されていることがあります。

なぜなら、すべての労働者に適用される労働条件は、就業規則に規定されているからです。

つまり、多くの労働条件は就業規則の記載通りになります。

労働条件と就業規則の関係性は?

労働契約は労働者と会社側で個別に結ぶものですが、労働条件は、労働基準法等の法令や労働協約、就業規則でも規定されています。

そのため、より上位の規定に反する部分は無効になることがあります。

例えば、労働契約では休憩45分なのに、就業規則では休憩1時間と定められている場合は、どうなるのでしょうか?

労働契約の労働条件が、就業規則の規定よりも低く定められていた場合

もしも労働契約の労働条件が、就業規則の規定よりも悪い場合は、その部分については無効となり、就業規則の規定に従うことになります(労働契約法12条)。

つまりこの場合、労働者のとれる休憩時間は1時間となります。

就業規則の労働条件が、労働協約よりも低く定められていた場合

就業規則の労働条件が労働協約よりも低く定められていた場合は、どうでしょうか?

就業規則その部分の条件は無効になり、労働協約の規定に従うことになります。

同様に就業規則の労働条件が、労働基準法の規定よりも悪かった場合も、その部分については無効となり、労働基準法に従うことになります。

会社側は就業規則の変更を一方的に変更できない

会社の経営を取り巻く環境は、常に変化しています。

そのため、雇用主には、その変化に対応した経営判断が任されており、必要であれば労働条件を変更しなければいけません。

しかし、会社側が一方的に就業規則を不利益変更することは原則としては許されていません。

その理由をみていきましょう。

労働条件は双方の「合意」によって決まる

会社側と労働者の双方の合意によって決まった就業規則は、会社側の都合で一方的に変更することはできません

もし雇用主が一方的に変更することができるのであれば、双方が「合意」する意味はなくなってしまいます。

法令では、就業規則の変更について、以下のように労働基準法第9条で定められています。 

使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。

労働基準法第9条(就業規則による労働契約の内容の変更)

よって、会社側と労働者の労働条件を定める就業規則は、労働者の合意がなければ、勝手に変更することは原則としてできません。

逆に、労働者との合意があれば労働条件の変更は可能です。

不利益変更とは?

不利益変更とは、会社側の一方的な判断で、労働者にとって不利益な方向に就業規則を変更することです。

会社は事業を運営するにあたり、常に一定の利益を生み出すことができれば、労働条件の変更をしなくても、従前の労働条件で労働者を雇用することができます。

しかし、経営が悪化している場合は、会社を存続させるために、労働者にとって不利益な労働条件へと変更せざるを得なくなることがあります。

具体的な例として、以下のものが不利益変更にあたります。

  • 賃金の引き下げ
  • 福利厚生の廃止
  • 休日を少なくして労働時間を長くする、など

また、他の会社と合併することになった場合、労働条件を統一するために、一部の労働者にとっては不利益な変更が行われる場合があります。

しかし、不利益変更には、一定の制限があります。では、不利益変更が認められている条件についてみていきましょう。

不利益変更の法的根拠| 不利益変更できる条件とは?

すでに見たように、就業規則は、原則として会社側と労働者の双方が「合意」によって決まります。

ですから、会社側が一方的に「賃金の値下げ」「始業時間の変更」など労働条件を変えることは原則として違反です。

しかし、会社が事業を運営していく上で、どうしても就業規則を変更せざるを得ない場合は、就業規則・労働条件の「不利益変更」を認めなければいけません。

では、不利益変更の法的根拠についてみていきましょう。

不利益変更が認められる2つの法的条件

労働者が関わる就業規則・労働条件の変更は、労働者を保護するために一定の制限が法令で課せられていますが、不利益変更が認められています。

ただし、それには条件があります。

前述した労働契約法第9条の但し書きには「次条の場合は、この限りではない」とあります。

そして、続く第10条は、以下のように定めています。

使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。

労働契約法第10条(就業規則による労働契約の内容の変更)

つまり、労働者にとって不利益な変更になるとしても、以下の2つの条件を満たしてる場合、変更が認められます。

  1. 就業規則の変更に合理性がある
  2. 就業規則を周知する

という2つの条件を満たしている場合は、たとえ労働者にとって不利益な変更になるとしても、就業規則の変更が認められます。

では、就業規則の変更に合理性がある、就業規則を周知するとはどのような意味でしょうか?

変更に合理性があるとは?

変更に合理性があるとは、以下の5つの要素をもとに総合的に判断されます(労働契約法第10条)。

  1. 労働者の受ける不利益の程度
  2. 労働条件の変更の必要性
  3. 変更後の就業規則の内容の相当性
  4. 労働組合等との交渉の状況
  5. その他の就業規則の変更に係る事情

1.労働者の受ける不利益の程度

まず1つ目の要素は、労働者が受ける不利益の程度がどれくらいか、という点です。

会社側は不利益変更をするにあたり、できるだけ不利益の程度を減らしたり、緩和する方法を検討してくれたかどうかを確認してみましょう。

2.労働条件の変更の必要性

2つ目は、変更が本当に必要だったのか、という要素です。

例えば、赤字経営や景気の低迷のなか、就業規則を変更することでコスト削減が叶い、健全な会社運営に近づくような場合には、「不利益変更の必要性」があると言えます。

また、倒産回避など高度な必要性がある場合は、変更の合理性が認められやすくなるでしょう。

3.変更後の就業規則の内容の相当性

3つ目は、変更後の就業規則の相当性は、変更内容が社会的に見て相当かという観点から判断されます。

具体的には、

  • 変更後の不利益が、特定個人や特定層のみ不利益をもたらすのではないか?
  • 同業から見て変更内容は相当か?

などの要素が考慮されます。

つまり、特定個人を狙い撃ちするような不公平な変更や、あまりに業界のルールから外れているような変更は不相当と判断されやすくなります。

4.労働組合等との交渉の状況

4つ目の要素は、労働者の代表や労働組合と交渉です。

会社側が不利益変更をする場合、すべての労働者に変更についての説明をしなければいけません。

また、社内に労働組合があるなら、合意を得られていれば、不利益変更が認められやすい方向へと働きます。

ですから、「就業規則が変更されたことを知らなかった」という状況は、会社側からの変更の説明なく一方的に就業規則が変更されたということです。

5.その他の就業規則の変更に係る事情

最後5つ目の要素は、その他の就業規則の変更に係る事情です。

具体的には、不利益変更を緩和するような代替措置があったか、移行期間が設けられたか、十分な説明がなされたか、などが考慮されます。

就業規則を周知するとは?

変更の合理性があったとしても、2つ目の条件「変更後の就業規則の周知」がされていなければ、就業規則の不利益変更は認められません

労働基準法施行規則第第52条の2では、労働者への就業規則の周知方法について、次のように細かく定めています。

一 常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること。

二 書面を労働者に交付すること。

三 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。

労働基準法施行規則第第52条の2

会社側は、これらいずれかの方法を通して、変更後の就業規則を労働者へ周知することが義務付けられています

つまり、就業規則が周知されていないなら、労基法違反に該当します。

ですから、もし会社側がこれら2つの法的条件を守っていないなら、弁護士に相談してみましょう。

監修者


みんなのユニオン

執行委員岡野武志

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みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。

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