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この場合も「給与未払い」!考えられる未払いの態様とその対策

更新日:

監修者:みんなのユニオン 執行委員
岡野武志

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「賃金」(労働基準法24条など)は労働契約の中でも最も重要なもので、労働者の関心事項の中でも最たるものと言っても過言ではない要素です。

労働契約において予め賃金の額として定めた額を支払わないという、いわば純然たる給与未払いについては中々ないのですが、これが残業代など割増賃金の話になると途端にあの手この手で同割増賃金相当額を支払おうとしない使用者は残念ながら少なくありません。

本記事においては給与未払いについて(特に割増賃金について)、法的な仕組みと弁護士に相談する際あるといいものについて解説します。

労働時間(労働基準法32条)について

未払い給与算定の前提となるのが労働時間です。

最低賃金や割増賃金の算定にも労働時間を用います。

しかしながら、「労働時間」そのものについても複雑な法的問題が存在します。

そのため、ここでは本題に入る前に前提事項として労働時間について確認していきます。

労働基準法32条

「労働時間」に関する主要な条文といえば労働基準法32条になります。同条文を見ると、1項で週40時間の原則、2項で1日8時間の原則を明示しています。

使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。

②使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

労働基準法32条

ここで注意しなければならないのが、労働基準法が「強行法規」という性質を持っていることです。

「強行法規」とは当事者の合意でさえも覆せない法規を言います。たとえば民法などでは民法に何らかの規定があっても当事者の合意でその適用を排除できるものがありますが、労働基準法においてその理は通用しないということです。

このことから、例えば労働契約書において、「労働時間は1日9時間とする。」との合意を労使間でしたとしても、労働基準法32条2項により労働時間は「8時間」と見なされ、かつ法定以上に働いた1時間/日については残業となり、割増賃金(労働基準法37条)の対象となります。

労働時間性

さらに労働時間が労働契約上8時間だったとしても、態様によっては休憩時間や仮眠時間など契約上労働時間とされていない時間が「労働時間」に算入される場合があります。

すなわち判例上労働時間とは「労働者が使用者の指揮命令下に置かれていると客観的に評価できる時間」であって、労働契約の形式ではなく、業務の実態から実質的に判断されるべきであるとされています。

したがって、例えば休憩時間であっても、実質的に労働時間と同じことをしていたり、また労働時間と同じことをしているとまでは言えなくても、客が来た等一定の事由があれば労働に戻らなければならないなどの事情がある場合には、たとえ契約上休憩時間などであっても法定上働いたとみなされる可能性があります。

未払い給与について

先にも述べた通り、使用者が労働契約で約した給与を支払わないという意味での給与未払いはほとんどの場合当然に違法です。

しかしながら、上の「労働時間」をもとに算定した「法的に支払われるべき金銭の額」-「実際に支払われた金銭の額」の差分もこの未払い給与として使用者に請求することができます。

ここでは「法的に支払われるべき金銭の額」を算定するにあたって重要な検討要素をいくつか挙げたいと思います。

給与が最低賃金を下回っていないか

意外と見落とされがちですがそもそも給与が最低賃金を下回っていることもあり得ます。

給与が最低賃金を下回っているかは、月給制の場合「月給÷所定労働時間」という計算で行います。

このうち「月給」については実際に支払われる賃金から次の賃金を除外したものが含まれます。(最低賃金法4条3項各号、同施行規則1条2項各号)

(1) 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)

(2) 1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)

(3) 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)

(4) 所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)

(5) 午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)

(6) 精皆勤手当、通勤手当及び家族手当

すなわち、基本給100,000円、職務手当20,000円、通勤手当30,000円をもらっているAさんについて、最低賃金算定の基礎は通勤手当を除いた120,000円となります。

ここでAさんが最低賃金が800円の県に住んで通勤していたとしましょう。

仮にAさんの勤める会社の所定労働時間が160時間だった場合、Aさんは120,000÷160=750円の時給しか得ていないことになるので最低賃金法違反により、Aさんは残業がなかったとしても月当たり差額50×160=8,000円を未払い給与として請求できることになります。

残業代が存在しないか

さらに先に述べた労働時間の算定から法定超過分の残業が発生した場合、使用者は労働基準法37条1項、4項、労働基準法第37条第1項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令に定められる率をもとに次の計算額において割増賃金を支払う必要があります。

1時間当たりの賃金額×超過時間数×割増賃金率

このとき1時間当たりの賃金額は月給制の場合、月給から以下の手当等を除いた額を所定労働時間で割ることになります。(労働基準法37条5項、労働基準法施行規則21条)

(1)家族手当

(2)通勤手当

(3)別居手当

(4)子女教育手当

(5)住宅手当

(6)臨時に支払われた賃金

(7)一箇月を超える期間ごとに支払われる賃金

※ただし(1)〜(7)は特に名称によって左右されず、法律的判断により算定基礎に算定される場合もあります。

すなわち月給230,000円、うち基本給160,000円、住宅手当30,000円、子供手当40,000円を得ているBさんが所定労働時間160時間の会社で残業(深夜ではない。)を月20時間した場合、1時間当たりの賃金は160,000÷160=1,000円で、割増率である1.25を乗じて1,000×20×1.25=25,000円を月当たりで請求できることになります。

固定残業代制度について

残業代の話になると「うちは固定残業代を払っている」と主張する使用者もいますが、固定残業代は会社側には経理上の事務手続きの簡略化というメリットがあるだけで固定残業代部分を超えた残業代部分については支払う義務があります。

したがって、月に固定残業代をいくらか払っているからと言って使用者が残業代の支払い義務を免れるわけではありません。

さらに固定残業代がそもそも未払いと見なされるケースも少なくありません。

固定残業代が有効な支払いと認められるには、以下の2点が必要です。

  1. 個別の労働契約又は就業規則で固定残業代制が明示
  2. 通常の労働時間の対価として支払われ基本給と割増賃金の金額が明確に区別されている

すなわち、給与明細等にも基本給15万円と書かれているだけなのに、「その中に固定残業代も含まれている」と主張しても、15万円のうち何円が残業代部分なのか予め明確に区別されていない限り有効な支払いと認められないのです。

未払い給与の時効は2年(令和2年4月1日以降については3年)

未払い給与は時効にかかり、請求権発生から2年(令和2年4月1日以降は3年)で消滅してしまいます。

しかしながら、それでも先のBさんの例であれば、25,000×24=600,000円と決して少なくない額になるように、未払い給与は積もり積もって多額になる場合も少なくありません。

未払い給与について弁護士に相談する場合

残業代請求には上記に挙げた問題のほかにも、36協定など様々な法的問題が存在する上、個人で請求しようと思っても使用者は残業代を支払いたがらずあの手この手で言い訳をしてくる場合も多いので、未払い給与があると疑わしい場合にはすぐに弁護士に相談すべきです。

それでは弁護士に相談する場合、あるといいものについて一例を挙げていきます。

出勤時間、退勤時間がわかるもの

先述の通り、賃金の算定には労働時間の計算が不可欠なので、出勤時間退勤時間がわかるものがあるといいです。

出勤履歴の印刷が取れるならそれがいいですが、残業代を支払わないような会社ではそもそもタイムカードなどの時間管理が杜撰である場合も少なくありません。

そこで有効な一例が、日記のように出勤時間と退勤時間をメモに取っておくことです。

その他にも公共交通機関で出勤している方ならばICカードの通過履歴や特定の人に向けたLINEの出勤&退勤のメッセージでもいいかもしれません。

とりあえず客観的な履歴があるとかなり有利です。

休憩時間の態様についてまとめておく

また休憩時間や仮眠時間など契約上労働時間ではない時間についても、法律上労働時間と扱われる余地があります。

様々な考慮要素がありますが考えの主軸は使用者の命令に応じる義務があるかどうかです。

この軸に立って、休憩等の態様をまとめておくといいかもしれません。

監修者


みんなのユニオン

執行委員岡野武志

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みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。