未払い給与を請求する5つの方法とは?事前の対策と請求の流れを解説

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監修者:みんなのユニオン 執行委員
岡野武志

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「適切な給与が支払われていないから回収したいけど、請求方法が分からない…」

「なるべく簡潔に解決したいけど、何かいい方法はないかなあ…」

給与の未払いに苦しんでいる方であれば、こんな疑問を抱えているのではないでしょうか?

あれこれと理由をつけて給料を踏み倒されたら許せませんよね。

今までの労力を水の泡にしないためにも、適切な給与が支払われていない場合は必ず請求するべきです。

今回は未払いの給与を請求する際に準備しておくべきこと、5つの請求方法の具体的な流れ、そして請求がいつまで可能なのかについて解説します。

ぜひご自分の状況に合った請求方法を探してみてください。

未払いの給与を請求する前に必要なこと

未払い給与を請求する際には、事前の準備が大切です。

ここでどれだけ入念な準備が出来ているかによって、最終的に得られる金額が大きく変わる可能性もあります。

どのようなことが必要なのか、見ていきましょう。

未払い分の給与額を確定させておく

まず、どれだけの給与未払いが発生しているのかを客観的な証拠を用いて確定することが必要です。

最初に、自分が給与をいくらもらう契約になっていたのかを明らかにします。

次のような資料がその証拠になります。

  • 雇用契約書
  • 労働条件通知書

次に、実際に支払われた給与の金額を確認します。

以下のようなものがその証拠になります。

  • 給与明細
  • 給与口座の通帳
  • 源泉徴収票

ここで契約上の金額と支払われた金額を照らし合わせ、未払い額がいくらなのか正確に計算しましょう。

請求する金額によってこの後の対応も変わってくるので、正しく未払い給与の額を把握しておくことが重要です。

もし自分で計算するのが難しければ、弁護士に依頼することも出来ます。

自分が労働したことの証拠を集めておく

そして次に、自分が所定の期間ちゃんと会社で働いていたことを証明する必要があります。

労働時間の証拠となりうるものとしては、次のようなものがあげられます。

  • タイムカード
  • クラウド勤怠管理システム
  • 業務日報
  • シフト表
  • パソコンのログイン・ログアウトの履歴
  • LINEやメールの送受信の記録
  • 始業時間・就業時間のメモ

適切な勤怠管理が行われている会社であれば、タイムカードやクラウド勤怠管理システムを用いて簡単に労働時間を証明することが出来ます。

ただし、会社に証拠隠滅を図られる可能性もあるので業務日報のコピーやシフト表の写真も用意しておくとなお良いでしょう。

そして勤怠管理が行われていない会社でも、メールの送受信の記録や労働時間を示したメモなどが証拠として認められるケースがあります。

特にメモを残す場合は、信憑性を高めるため手書きで、正確な時刻をその日の業務内容と併せて記述するようにしましょう。

未払いの給与を請求する5つの方法について

ここまで請求前の動きについて確認しました。

次に、具体的な請求方法を5つ見ていきましょう。

なるべく大ごとにしたくないという方が多いと思われるため、早期解決を目指しやすいものから順に紹介します。

会社に内容証明を送付して交渉する

まずは自分で書面によって未払い給与を請求することを検討しましょう。

内容証明郵便を送って請求する流れは以下の通りです。

  1. 適切な証拠を準備する
  2. 会社に内容証明郵便で請求の通知書を送る
  3. 会社側が応じれば、直接交渉する

内容証明は、郵便局が送付した事実及び送付内容を記録するため、会社が「何も受け取っていない」としらを切るのを防ぐことが出来ます。

ただしそれ以外は通常の手紙と変わらないため決して強い効力を持つものではなく、交渉に応じてもらえない可能性も高いです。

労働基準監督署に相談・申告する

交渉するのが難しい場合は、労働基準監督署に申告するという方法があります。

その場合は次のような手順を踏みます。

  1. 適切な証拠を集める
  2. 労働基準監督署に給与未払いを訴える
  3. 労働基準監督署が会社を調査する
  4. 違法性が認められた場合は会社に是正勧告が出される。また、違法性がなくても改善が求められる場合は指導が行われる

ここで注意してほしいのは、労働基準監督署の是正勧告はあくまでも行政指導であり、法的拘束力はないということです。

したがって、会社が必ずしも勧告に従うとは限りません。

また少額の請求の場合、労働基準監督署に優先順位の低い事項とみなされて対応を後回しにされることもあります。

請求額が少なければ少額訴訟を行う

少額でも確実に請求したい、という方は少額訴訟制度を利用するのが有効です。

少額訴訟は請求額が60万円以下の場合に行える簡易的な訴訟で、弁護士に依頼しなくても以下のように手続きを進めることが出来ます。

  1. 訴状・証拠書類を準備する
  2. 簡易裁判所に訴状・証拠書類を提出する
  3. 会社からの答弁書類を受理して追加の証拠を準備する
  4. 審理が行われ判決又は和解に至る

少額訴訟は基本的に1回の期日で終了するため、通常の訴訟よりも素早い解決が望めます。

ただし会社が判決に異議申し立てを出した場合は通常訴訟に移行する流れになるので、長期戦になる覚悟も必要です。

早期解決を目指すなら労働審判を行う

請求額が少額でなければ、労働審判を選択すると通常訴訟より短期間で決着させることが可能です。

労働審判の行う流れは以下のようになります。

  1. 必要書類と証拠を準備し、全て裁判所に提出する
  2. 40日以内に第1回期日が行われる
  3. 期日中に会社側と妥協点が一致すれば、調停が成立する
  4. 第3回期日まで調停が成立しなければ、審判官と審判員による審判が下される

労働審判は話し合いでの解決を目標としており、調停成立も十分に期待できます。

一方で、給与未払いによって会社に請求できる付加金(労働基準法第114条)は労働審判だと獲得しづらい、というのが難点です。

また、会社側が審判に異議申し立てをすればそのまま裁判に移行してしまうというリスクもあります。

それでも解決しなければ通常訴訟を行う

どうしても決着がつかない場合、最後の手段として通常訴訟に移ることになります。

訴訟を行う流れは次の通りです。

  1. 会社の所在地を管轄する地方裁判所または簡易裁判所に訴状を提出する
  2. 第1回期日は会社側が訴状に対する答弁書を提出する
  3. 2回目以降の期日では双方がそれぞれの主張とその証拠となる書類を一緒に提出し、具体的な答弁が行われる
  4. 双方が全ての主張書面の提出を終えると弁論終結となり、その後判決が言い渡される

証拠が十分に用意できているなら、訴訟を起こすことで付加金を含めた適切な請求額を得られる可能性が高くなります

しかし期日に制限がないため、決着に数年かかるというケースも珍しくありません。

出来る限り訴訟以前の段階での解決を目指すのが得策でしょう。

未払いの給与を請求できる期間はいつまで?

ここまで未払い給与を請求する5つの方法を確認しました。

これらの方法で請求するにあたって注意しなければならないのは、給与が未払いとなってからどのくらいの期間が経過しているか、ということです。

未払い給与の請求権がいつまで有効なのかについて、見ていきましょう。

未払い給与請求は2年又は3年で時効

従来は、未払い給与の請求権はこれを行使できる時から2年経過した時点で時効により消滅するとされていました(労働基準法第115条)。

しかし2020年4月から改正法が施行され、現在は時効になるまでの期間が3年に延長されています(労働基準法附則第143条3項)。

第百十五条の規定の適用については、当分の間、同条中「賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間」とあるのは、「退職手当の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)の請求権はこれを行使することができる時から三年間」とする。

労働基準法附則第143条第3項

これは2020年4月1日以降に支払われるはずだった給与が対象となるため、それ以前の未払い給与に関しては従来通り2年で時効となってしまうことに注意しましょう。

請求中であれば時効が延長される場合も

未払い給与の請求中に時効を迎えてしまい給与が踏み倒されてしまう、という事態を防ぐため、法律によって時効を延長する条件が定められています。

請求を開始してから6か月間は時効が完成せずたとえこの間に2年又は3年が経過したとしても未払い給与を請求することが出来ます(民法第150条)。

催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

民法第150条(催告による時効の完成猶予)

なお、請求を開始したと認められるのは会社に内容証明を送付した時裁判所に証拠書類を提出した時などであり、自分で証拠を集めている段階では請求を開始したと判断されません。

時効延長制度があるとはいえ、請求を進めていくのに予想以上の時間がかかるケースもあるため、なるべく早く行動を起こすようにしましょう。

監修者


みんなのユニオン

執行委員岡野武志

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みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。

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