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テレビのニュースなどでもよく見聞きする「懲戒解雇」「懲戒処分」。
どちらの言葉もあまりいいものではないですよね。
よく似ている言葉ですが、みなさんは両者の違いをご存知ですか?
今回は、社会人であればしっかり説明できるよう「懲戒解雇」と「懲戒処分」の違いについて分かりやすく解説していきます。
では、どのような違いがあるのか、さっそくみていきましょう。
目次
懲戒処分と聞くと、「懲戒解雇」とか「クビ」などをイメージされるかもしれません。
しかし、懲戒処分は、事案の程度に応じて懲戒処分が実施されます。
つまり、懲戒処分には、いくつかの種類があるのです。
では、懲戒処分と懲戒解雇には、どのような違い、また意味があるのか確認していきましょう。
懲戒処分とは、本来果たすべき義務や規律に違反した労働者を対象に、社内の企業秩序を維持することを目的に行われる制裁処分のことです。
会社は労働者に対して懲戒処分を下すためには、あらかじめ就業規則に懲戒処分の種類と程度を明記しておかなければいけません。
つまり、各企業によって、具体的な懲戒処分の内容や程度は異なるということです。
ですから、ご自身の会社の就業規則を確認することで、下されうる懲戒処分の重さについて知ることができるでしょう。
懲戒処分にはさまざまな種類があり、そのうちのひとつが「懲戒解雇」です。
懲戒処分の種類は、公序良俗に反しない範囲内であれば、企業が独自に定めることが認められています。
一般的な懲戒処分には、処分の軽いものから段階的に以下のようなものがあります。
口頭で注意される処分のこと。懲戒処分の中では最も軽い処分。
始末書を提出する処分。書面での反省が求められる。
賃金を減給する処分のこと。ただし、減給できる1回の額は平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない、と定められています(労働契約法第91条)。
一定期間の就労が禁止される処分のこと。ただの自宅待機ではない。なお、出勤停止期間中は、賃金が支払われない扱いになることが多い。
役職や職能資格を低下させる処分のこと。
一方的に解雇される処分のこと。懲戒処分の中で最も重い処分。
このように「懲戒解雇」は懲戒処分のひとつで、最も重い懲戒処分のことです。
懲戒解雇は、懲戒処分の中でも最も重い処分です。
確かに、即時に解雇されてしまうと、明日からの生活の糧を失ってしまいますよね。
そのため、法律では、雇用主の一方的な判断で懲戒解雇をしないよう、厳しい要件を定めています。
つまり、法律に従わないで実施される懲戒解雇は、違法ということです。
では、法律では懲戒解雇についてどのような規定を設けているのかを確認していきましょう。
懲戒解雇は、懲戒処分の中でも最も重い処分のため、厳しい要件が3つ定められています。
雇用主が労働者を懲戒処分をするには、あらかじめ就業規則に懲戒の「種類」と「事由」を記載しておかなければいけません。
労働契約法第15条
使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は無効とする。
労働契約法第15条
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
労働契約法第16条
つまり、「解雇の客観的に合理的な理由」がなければいけません。
この場合の合理的な理由とは、これまでの判例からすると、労働者の行為の性質・態様、結果、情状などから判断されます。
また、解雇することが「社会通念上相当」でなければいけません(労働契約法第15条)。
懲戒処分は制裁という性質があるため、解雇することに社会的相当性があるかは、
などを考慮して判断されます。
このように懲戒処分による懲戒解雇は、3つの厳しい要件を満たしているかどうかにより、当該懲戒解雇が適法か違法かを判断できます。
懲戒解雇に該当する懲戒事由は、各企業によって異なりますが、多くの企業では以下のような事由を就業規則に定めています。
経理担当者が不正経理によって横領したり、営業担当者が架空取引で利益を得たなどの行為
殺人、強盗、強姦などの重大犯罪を犯し、会社の名声に著しく妨害を与える行為など
採用される際、学歴や職歴、犯罪歴など重大な経歴詐称を偽る行為
正当な理由なく1ヶ月以上無断欠勤をしたり、出勤命令を拒否するなどの行為
また、これらよりも比較的軽い行為であったとしても、けん責などの懲戒処分を何度も受けているにも関わらず改善が見られなかった場合についても、懲戒解雇が認められる可能性があります。
あくまでも一般的な懲戒解雇の事由であり、企業によって事由は異なるので、自社の就業規則を確認してみましょう。
「なぜわたしに懲戒処分が下されたのだろう…」
もしこのように雇用主から言い渡された懲戒処分にどうしても納得できない場合は、どうすればよいのでしょうか?
まず会社側が懲戒処分に関する法律をきちんと守っているかどうかを確認してください。
では、労働者も知っておくべき懲戒処分に関する法律上の規定をみていきましょう。
会社側は、就業規則に「懲戒」に関する事項をあらかじめ明記していなければ、労働者に懲戒処分を下すことはできません。
つまり、就業規則にあらかじめ定めた懲戒事由に該当しているものに限り、懲戒処分をすることが認められています。
ですから、自分の行為が、懲戒事由として就業規則に明記されているかどうかを確認してみましょう。
もし自分の違反行為が懲戒事由に明記されていないのであれば、懲戒処分は無効となります。
日本では、1回の違反行為に対して2回の懲戒処分を行うことはできない、と刑事処分の規定があります(憲法第39条)。
この規定は、懲戒処分に直接適用されるわけではありませんが、過去の裁判例などでは「一時不再理の法理が懲戒にも妥当する」などの表現が用いられています。
つまり、一度懲戒処分歴がある場合は、以前の懲戒処分と同じ違反行為を今回の懲戒処分の対象とすることはできない、ということです。
ですから、もしすでに一部懲戒処分歴があるなら注意しましょう。
自分に実施された懲戒処分が、最も重い懲戒解雇だった場合、どうすればよいのでしょうか?
まず雇用主に、なぜ懲戒解雇になったのか、を確認してみましょう。
そして、解雇理由に至った理由が記載されている「解雇理由証明書」の発行を依頼してください。
その書類に記載されている解雇理由が、就業規則の解雇事由に該当しているかどうかを確認することができます。
そして、もし懲戒解雇が違法であった場合や不満や疑問がある場合は、信頼できる弁護士に相談しましょう。
みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。