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業績不振により、「希望退職」を募る企業が増えています。
東京商工リサーチによると、2020年10月29日までに発表された「上場企業の早期・希望退職者募集」は72社に達し、2019年の2倍を上回る水準となりました。
今後さらに、「希望退職」は労働者にとって関係のない話とはいえません。
この記事では「希望退職」について解説していきます。
目次
企業側から希望退職の募集に応えた場合、退職理由は会社都合になるのか。
それとも自己都合になるのか、どちらでしょうか。
以下で見ていきましょう。
希望退職制度とは、企業側が一定期間内に退職希望者を募る制度です。
目的としては、大きく分けて以下の2つあります。
まずは、人員整理です。
多くの企業の場合、これを目的とします。
希望退職を募る企業は、業績悪化により仕方なく実施することがほとんどです。
つぎに、組織の若返りを目的とするものです。
一定の年齢に達した労働者を対象に退職希望者を募り、世代間の人員バランスをとることで組織の若返りにつながります。
希望退職制度は、労働基準法などの法律に定められているわけではありません。
強制ではないため、労働者が希望退職に応募しないのは、なにも問題のないことです。
ただしこの希望退職制度、受け入れた労働者には優遇措置をとられることが多くあります。
例として、以下のものです。
希望退職制度では、労働者の自主的な応募を促すため、自己都合退職よりも魅力的な条件が設定されます。
希望退職制度は、「希望」とつくように労働者の意思が優先されます。
ただし、希望退職制度により退職した場合は、自己都合退職ではなく会社都合退職です。
これは厚生労働省が提示する「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準の概要」のなかに明記されています。
・事業所において大量雇用変動の場合(1 か月に 30 人以上の離職を予定)の届出がされたため離職した者及び当該事業主に雇用される被保険者の 3 分の 1 を超える者が離職したため離職した者
・事業主から直接若しくは間接に退職するよう勧奨を受けたことにより離職した者(従来から恒常的に設けられている「早期退職優遇制度」等に応募して離職した場合は、これに該当しない。)
これにより、希望退職制度により退職した場合は会社都合退職と判断されます。
転職先がすぐに決まらず、失業保険をもらう場合、退職理由が会社都合の方が有利です。
失業保険を受給するまでの期間が短く、また受給期間が長くなります。
では、希望退職制度の労働者にとってのメリット・デメリットはなんでしょう。
それぞれについて説明していきます。
希望退職のメリットは、主に以下の二つ挙げられます。
希望退職制度の場合、転職などの自己都合退職をするときに比べ、退職金が増額されるのが一般的です。
金銭的な余裕があることで、転職や独立など、次への行動をどうするか考える余裕が生まれます。
また、労働者の要望に応じて企業が再就職支援をしてくれる、転職活動をするための期間として特別休暇が付与されるなどの措置が設けられている場合があります。
希望退職制度により退職した場合、会社都合退職になるため、自己都合退職に比べて優遇されるというメリットがあります。
【会社都合退職の場合】
【自己都合退職の場合】
会社都合退職 | 自己都合退職 | |
---|---|---|
受給待期期間 | 7日のみ | ※2ヶ月又は3ヶ月7日 |
給付日数 | 90日~330日 | 90日~150日 |
このように退職理由によって、失業手当がいつからもらえて、いつまでもらえるのかが異なります。
希望退職制度による退職にも、デメリットはあります。
主なデメリットは以下の二つとなります。
感染症の流行により、今後さらに日本経済に影響を与えることが想定されています。
このことから、自分が働いていた業界全体に打撃を与えているため、これまでと同じ業種につくことができない。
また、年収が大幅にダウンする、さらには転職先が見つからないというケースもありえます。
転職や独立をするときは、すでに次への行動を決めてからの退職が一般的です。
しかし、突然の企業からの希望退職の場合、なにも決まらずに退職日を迎えてしまうという可能性もあります。
希望退職の場合は会社都合退職であるため、早い段階で失業手当をもらうことができます。
ただし、失業手当にも受給期間はあるので、なかなか転職先が決まらないと経済的にも精神的にも不安になってしまうはずです。
また、失業期間が長くなることで仕事のスキルが低下してしまい、なかなか採用されないというケースもあるでしょう。
希望退職制度にはメリットもありますが、当然デメリットもあるため、慎重に考えて決断する必要があります。
希望退職制度により退職した場合、会社都合退職となることがほとんどです。
しかし、自己都合退職となる例外もあります。
また、表面的には希望退職としながらも、実際は退職勧奨だったというケースも。
希望退職制度においての注意点を確認していきましょう。
希望退職制度に応募して退職した場合、基本的には会社都合退職です。
しかし、自己都合退職となるケースがあります。
それは、企業側から退職を引き止められたにもかかわらず、退職したときです。
希望退職制度は全従業員から退職者を募ることが一般的であるため、企業にとって必要な人材が希望退職に手を上げた場合、募集を拒否されることがあります。
判例では、労働者と企業とのお互いの合意がなければ希望退職が成立せず、企業側からの承諾なく退職した場合は、希望退職手続きにそった退職とはいえず、退職金の増額などの特典は受けられないとしました。
もし、企業から希望退職を引き止められてしまい、承諾してもらえなかった場合には自己都合退職となる可能性があります。
希望退職と退職勧奨の違いは、大きく二つ。
企業側は希望退職を実施しているつもりでも、実際は退職勧奨である場合があります。
退職勧奨自体は違法ではありませんが、「上司から何度も呼び出され、退職を促された」「希望退職に応じなければ解雇するといわれた」「退職届を出せと脅された」など、半ば強引な退職勧奨は違法行為です。
この場合、弁護士や労働組合に相談することをおすすめします。
みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。