会社都合の派遣切りは違法?派遣契約の仕組みと派遣切りの法的問題

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監修者:みんなのユニオン 執行委員
岡野武志

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近年「労働者派遣」という直接雇用や請負契約とは異なる労働形態が増えています。

大学生や主夫(主婦)など様々な人々が利用しているこの労働形態ですが、やはり直接雇用と比べてその地位が少し不安定であったり、弱い地位にあることも否定できません。

とはいえ、いわゆる「派遣切り」は労働者に突然派遣先での勤務の機会を奪うものであって、その不利益は甚大なもの。いくら地位が不安定とはいえ、法律上何らも保護されていないわけがありません。

そこで、本記事では「労働者派遣」や「派遣切り」の実態を明らかにしたうえで、会社都合の派遣切りについて法的に問題となる点、なりづらい点について解説します。

「派遣切り」とは

そもそも「派遣切り」とは何でしょうか。一昔前に問題視されたものではありますが、「派遣労働者がリストラされること」ぐらいの理解が一般的と思われます。

上記の理解でも誤りではないのですが、「派遣切り」の法的問題を説明するには、まず「労働者派遣」と「派遣切り」について、その法的構造を明らかにすることから始める必要があります。

前提

労働者派遣は確実に三者間のものとなり煩雑であるため、前提としてそれぞれの呼び方を説明しておきます。

A社が労働者XさんをB社に派遣している場合、A社を「派遣元」、B社を「派遣先」、Xさんを「派遣労働者」と呼びます。

上は法学上の呼称でもありますが、本記事もそれにならって「派遣元」、「派遣先」、「派遣労働者」という言葉で説明をしていきます。

「労働者派遣」とは

通常の労働契約では雇用者(使用者)と被雇用者(労働者)が直接労働契約を結ぶものです。

しかしながら「労働者派遣」はそうではなく、派遣契約とは派遣元と労働者の労働契約と、派遣元と派遣先の労働者派遣契約の二つの契約により成り立っています。

この二つの契約は「労働者派遣」に必要不可欠なものなので、いずれかが消滅すれば、労働者派遣それ自体も実現不可能となります。

「派遣切り」とは

派遣労働者は派遣期間が決まっていますが、逆に言うとこの定められた期間については就業先が確定しているということになります。

このような有期期間の経過を待たずして、期間途中で労働者の就業先を奪うこと、これが派遣切りと言われるものです。

派遣切りの法的構成としては以下の二つの場合が考えられます。

  1. 派遣元と派遣労働者の労働契約を中途解約するタイプ
  2. 派遣元と派遣先が労働者派遣契約を解除するタイプ

なお、1、2がいずれもなされる場合も存在します。

派遣切りの適法性

派遣切りの法的説明はしましたが、これによって生ずる法的問題は性質上不可避的に三者間の問題となるので通常の雇用契約と比べて難解になります。

ここでは、1.派遣元と派遣労働者の労働契約を中途解約するタイプ2.派遣元と派遣先が労働者派遣契約を解除するタイプ、それぞれの派遣切りの法的問題について説明していきます。

派遣元と派遣労働者の労働契約を中途解約する場合

この場合、派遣元と派遣労働者が結んでいた契約は労働契約なので、使用者による契約の解除、すなわちこのタイプの派遣切りは法的には解雇(労働契約法16条)ということになります。

派遣労働者が有期労働契約を結んでいた場合

さらに派遣元と派遣労働者が有期労働契約を結んでいた場合には、労働契約法17条により厳しい制限を受け、「やむを得ない事由」がなければ解雇はできなくなります

労働者派遣は一般に派遣先の労働期間に合わせて、派遣元と派遣労働者の間で有期の労働契約を結ぶことが多いので、原則として「やむを得ない事由」がなければならないと解してもよさそうです。

さらに「やむを得ない事由」に関しては当然そう簡単には認められないところ、派遣先がなくなった程度では事由該当性は認められない可能性が高いです。

派遣先と派遣元が労働者派遣契約を中途解約する場合

この場合、労働者としては派遣先での勤務については原則として諦めるしかありません。(例外については後述します。)

労働者派遣契約が中途解約された場合、当初予定されていた期間満了時まで労働者としては当然ながら職がない状態になります。

そもそも派遣元が早急に職を供給してくれれば問題は発生しないのですが、全ての派遣元で全ての労働者がすぐに職に就けるというわけではありません。

そこで、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(労働者派遣法)では、以下のような規定を定めています。

労働者派遣の役務の提供を受ける者は、その者の都合による労働者派遣契約の解除に当たつては、当該労働者派遣に係る派遣労働者の新たな就業の機会の確保、労働者派遣をする事業主による当該派遣労働者に対する休業手当等の支払に要する費用を確保するための当該費用の負担その他の当該派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置を講じなければならない。

労働派遣法29条の2(労働者派遣契約の解除に当たつて講ずべき措置)

つまり、労働者派遣契約が派遣先会社都合で中途解約された場合、派遣先に新たな就業の機会の確保や休業手当の確保に要する費用の負担などが求められています

会社都合の契約中途解約の場合における賃金

また、派遣先会社都合の労働者派遣契約の中途解約により派遣労働者が就労不能になった場合は、労働基準法で以下のように規定が定められています。

「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の 100 分の 60 以上の手当を支払わなければならない。」

労働基準法第 26 条

このように、派遣元は残りの期間について平均賃金の6割以上の額の休業手当を派遣労働者に支払わなければなりません

これは働いていなくても当然発生する債権となりますので、休業手当の不払いがある場合、労働者は派遣元に同金銭を請求することができます

また、想定しがたい場合ですが、労働者派遣契約がもっぱら「派遣元」のせいで解約され、労働者が就労不能になった場合、民法536条2項により、労働者は派遣元に賃金全額の請求権をなおも有することになります。

この休業手当(平均賃金の6割)と賃金全額について、どちらの請求権を得れるかは事情によって異なりますが、使用者側の帰責の程度によると解されています。

例外 労働契約申込みみなし制度

以上のように、一般には会社都合による中途解約であっても、労働者側は金銭的な解決しか望めないのが基本です。

さらに有期の派遣契約の場合、期間満了による雇止めに関しては労働契約法第18条、19条に該当する(いわゆる「無期転換ルール」)場合でない限りは、原則として認められることになります。

したがって、会社都合の中途解約→休業手当の支払→期間満了で雇止めの順序については法律上適法であるということになります。

もっともいずれの場合においても何らかの例外があることは確かであって、ここでは以上に述べたことの例外を説明していきます。

【参考】:「無期限ルールの概要」厚生労働省

派遣先による労働契約申込みみなし制度

労働者派遣法40条の6によると、①派遣禁止業務への労働者派遣、②無許可派遣業者による派遣、③派遣可能期間の超過、④偽装請負などの違法派遣の実態があって、かつ派遣先がその違法な派遣につき、そのことを知っていたか知らなかったことに過失があった場合については派遣先は派遣労働者に労働契約の申込みをしたとみなされることになります。

みなしの効果

労働契約の申込みをしたとみなされる、ということは労働者が望む場合であれば派遣先と派遣労働者の間に労働契約が締結されることになり、派遣先の会社都合の派遣切りはまさに解雇と同視されることになり、労働契約法16条や17条により厳しい規制が課されます。

これは適法な派遣であれば、労働者の管理に関しては一次的に派遣元が責任を負い、派遣先はほとんど責任を負わないことに照らしても非常に強力な効果だと思われます。

監修者


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執行委員岡野武志

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みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。