怪我や病気が原因で休職してから退職という扱いを受けた場合に労働者ができること

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監修者:みんなのユニオン 執行委員
岡野武志

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仕事中に怪我をしたり、過重労働で精神疾患を発症したなど、療養が必要となった場合には、会社を休職をすることが考えられます。

休職は期間を定めて行うのですが、その期間満了後にまだ働けない状態のときには退職・解雇となります。

収入を失う労働者としてはどのようなことが主張可能で、どのような手続きが利用可能なのかを確認しましょう。

怪我や病気が原因での解雇についての法律関係

怪我や病気が原因で雇用契約が解除されることについての原則や、法律上の規制などについて確認しましょう。

怪我や病気が原因で労務の提供ができない場合には解雇の原因となる

労働契約は、労働者が労務の提供をすることが契約内容となっています。

怪我や病気が原因で労務の提供ができない場合には、労働者の債務が履行できない状態です。

このような場合には解雇をすることが通常就業規則に定められています。

怪我や病気が労務災害である場合には解雇制限がある

この怪我や病気が、業務が原因での発症である場合には、労働基準法19条1項によって、療養のために休業する期間およびその後30日間は原則として解雇をすることができない旨規定しています。

ただし、3年を経過しても怪我や病気が治らない場合には、平均賃金の1,200日分の打ち切り補償を支払うか、天災事変その他やむをえない理由で事業の継続ができなくなった場合には、例外的に解雇することができます(同法19条1項但書、81条)。

私傷病休職制度がない場合でも解雇は制限される

もし会社の就業規則に私傷病休職制度がない場合には、普通解雇が行われることになります。

ただし、怪我や病気により一時的に労務が提供できないに過ぎないような場合には、直ちに解雇をすることができないと解釈されています。

また、ある仕事が出来なくなったとしても、他の仕事ができる場合には、解雇をすることができない場合があります。

たとえば、建設業において建設現場での仕事ができなくなった場合に、会社の事務職の仕事が可能であるような場合には、配置転換を検討すべきとなります。

私傷病休職制度がある場合には解雇の前に私傷病休職制度を利用する

ほとんどの会社では、業務とは関係のない怪我や病気である私傷病について、私傷病休職制度が規定されています。

私傷病休職制度がある場合には、所定の期間休職をすることができ、休職を経ないで解雇をすることは、労働契約法16条における解雇権の濫用とされる可能性が高いとされています。

ただし、怪我や病気の程度から、休職期間で回復することが困難である場合には、休職を利用せずに解雇される可能性があります。

岡田運送事件(東京地方裁判所平成14年4月24日判決)において、脳梗塞で運転ができなくなった運転手を、休職を経ずに解雇した件について、解雇が濫用とはいえないと判断しました。

私傷病で休職をしても回復しない場合には解雇ということになりますが、一定の場合には後述する例外がありますので注意をしましょう。

休職期間満了した場合の解雇が不当解雇になる場合がある

休職期間を満了しても怪我・病気の症状が良くならない場合には解雇を行うことになります。

しかし、会社での勤務が原因で休職を余儀なくされたような場合には解雇が無効と判断されるケースがありますので、確認しましょう。

長時間労働やパワハラ・セクハラなどが原因で精神疾患を患って休職していた場合

休職のきっかけが、長時間労働やパワハラ・セクハラなどが原因による精神疾患になるような場合には、休職期間が満了したとして解雇をすることは不当解雇と評価されます。

例えば、東芝事件(東京地方裁判所平成20年4月22日判決)において、時間外労働の平均が約70時間にのぼっており、これが原因でうつ病を発症しその後も治療中であった従業員を解雇したのは不当解雇であると判断しました。

会社が復職を認めないまま休職期間を満了した場合

休職制度は復職を前提としているのですが、医師が復職は可能であると判断していながらも、会社が復職を認めないまま休職期間を満了したことによって解雇することが不当解雇にあたる場合があります。

キャノンソフト情報システム事件(大阪地方裁判所平成20年1月25日判決)において、労働者が復職を希望しており、医師も復職可能と判断していたにも関わらず、会社が復職を認めず復職期間満了として解雇をしたケースで、裁判所は不当解雇であると認定しています。

不当解雇と判断される場合の労働者の対応策

不当解雇された場合には労働者はどう対応すべきなのでしょうか。

慰謝料を請求する

不当解雇をされると、労働者は多大な精神的苦痛を被ります。

そのため、会社に対して精神的苦痛を受けたことを理由に、慰謝料の請求をすることができます。

ただ、現実に解雇によって精神的苦痛が認定されて、慰謝料の請求ができるのは、解雇の違法性が著しい場合に限られます

不当解雇の違法性が著しいかどうかは、個別具体的にケースを観察しないと判断できませんので、弁護士に相談をしてください。

従業員の地位にあることを主張して未払いの給与を請求する

会社としては解雇によって労働契約は終了したので、給与の支払いを当然やめます。

しかし、不当解雇である場合には、労働契約は続いていると評価されることになりますので、法律上は会社が給与未払いの状態となります。

労働者としては、不当解雇を主張して、従業員としての地位があることを確認し、未払いになっている給与の支払いを主張します。

現実に復職しても良いですし、復職するのは気まずいのであれば、示談として金銭を受け取って解決をすることになります。

解雇制限期間中の解雇については労働基準監督署に通告をする

冒頭に述べたように、解雇には制限がありますが、労働基準法19条の規定に違反するような解雇については、同法119条1号で罰則が定められています。

また、行政処分として、事業所への立ち入りなどの処分もすることができます

労働基準法違反については労働基準監督署が取り扱いをしているので、労働基準監督署に通告することも手段の一つになります。

他の請求も一緒に行う

不当解雇を争う場合には、他にも同じ会社に請求できるものを併せて請求します。

たとえば、長時間労働やセクハラ・パワハラによって健康を害したような場合には、会社の労働者に対する安全配慮義務に違反していることが認定され、損害賠償の対象となります。

長時間の残業に対する残業代の支払いがないような場合には残業代の支払いを求めます。

こういった請求を不当解雇と一緒に行うのが望ましいといえます。

まとめ

このページでは、病気や怪我が原因で休職しその後退職したような場合の法律問題や、違法な解雇にあった場合の対処法についてお伝えしてきました。

病気や怪我の原因や、どのような対応を受けているかによって、対応方法も変わってきますので、弁護士に相談して、適切な対応方法を検討しましょう。

監修者


みんなのユニオン

執行委員岡野武志

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みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。

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