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長時間労働や業務のストレスによる死亡が過労死と認定されるのはどのような場合なのか分かりにくいのではないでしょうか?
過労死とは、「業務における過重な負荷による脳血管疾患あるいは心臓疾患を原因とする死亡」と「業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡」を指します。
過労死であるかどうかは、客観的に判断することが難しいです。そのため、厚生労働省によって過労死の認定基準が定められています。
この記事では、過労死とはどのようなものなのか、過労死と認定される基準はなにか、過労死と認定された時の労災保険による補償について解説します。
目次
過労死とは、長時間労働や業務のストレスによる死亡を指します。過労死等防止対策推進法によって定義されており、厚生労働省によって認定基準が定められています。過労死と認定されることで、労災保険による補償を受けることができます。
過労死等防止対策推進法第2条では、「過労死」を以下のように定義しています。
脳血管疾患・心臓疾患で死亡した場合は、業務における過重な負荷が死亡の原因となったのか、食生活や遺伝によるものなのかの判断が難しいです。また、精神障害で自殺した場合も、業務における強い心理的負荷による自殺なのか個人的な問題によるものなのかの判断も難しいです。
脳血管疾患・心臓疾患による死亡や精神障害による自殺が過労死であるかどうかを客観的に判断することが難しいため、厚生労働省によって過労死の認定基準が定められています。
厚生労働省は、業務を原因とした脳血管疾患・心臓疾患による死亡と精神障害による自殺が過労死(労災)と認定されるための基準を定めています。死亡しなかった場合や自殺に至らなかった場合でも、認定基準を満たすことで労災と判断されます。
それぞれの認定基準を解説します。
脳梗塞などの脳疾患や心筋梗塞などの心疾患は、加齢や食生活、生活環境といった要素や遺伝によって発症する場合と、仕事が原因で発症する場合があります。脳・心臓疾患が個人の身体的要素によるものなのか、仕事が原因のものなのかは認定基準により慎重に判断されます。
脳・心臓疾患が労災と認定される要件は以下の3点です。
それぞれの内容について解説します。
異常な出来事とは以下のようなものを指します。
通常の業務では滅多に遭遇しないような状況だったのか、作業環境の変化が急激なものであったのかといった点を総合的に判断します。
過重な業務とは、日常の業務と比べて身体的・精神的に負担のかかる業務を指します。過重な業務かどうかについては、業務の内容や作業環境といった負担のかかる具体的な要素と一般的な労働者にとっても同様であるかなどによって、総合的に判断します。
長期間の過重な業務をおこなっていた場合は、疲労の蓄積により脳・心臓疾患を発症させたと判断します。
長期間の過重な業務による疲労の蓄積がどの程度だったのかは、以下のような負荷要因から総合的に判断します。
1か月間に100時間を超える時間外労働をしていたり、2か月から6か月にわたって平均で月80時間を超える時間外労働をしていた場合は、業務と発症の関連が強いと判断されます。
精神障害は、外部からのストレスの強さと個人のストレスに対する耐久力の強さのバランスで発症すると考えられています。外部からのストレスは仕事だけではなく個人の問題の場合もあり、どれが精神障害の原因であるのかは認定基準により慎重に判断されます。
精神障害が労災と認定される要件は以下の3点です。
それぞれの内容について解説します。
認定基準が対象としている精神障害は上記になります。
ただし、認知症や頭部外傷によるものとアルコールや薬物によるものは除外されます。
業務による過労を原因とする精神障害としては、上記の「気分[感情]障害」に該当するうつ病が代表的なものになります。
強い心理的負荷がかかる業務をおこなっていたかどうかは、「業務による心理的負荷評価表」を用いて判断します。心理的負荷の強度は、労働者の主観によるものではなく、一般的な労働者がどのように受け止めるかによって判断されます。
長時間労働も精神障害の要素となることから、以下の場合には業務と発症の関連が強いと判断されます。
業務以外の原因で発病していないことを確認するためには、業務以外の心理的負荷評価表を用いて心理的負荷の強度を評価します。精神障害の既往症やアルコール依存といった個人の問題による精神障害かどうかは、個別に内容を確認し慎重に判断します。
脳血管疾患・心臓疾患による死亡や精神障害による自殺が過労死と認められれば、労災保険による補償を受けられます。過労死として認定されることは、労災であると認定されることにもなり、労災保険の対象になります。
労災とは、業務を原因とした業務中あるいは通勤中のけがや病気、死亡を指します。業務中のけがや病気、死亡の場合は業務災害、通勤中のけがや病気、死亡は通勤災害と呼びます。過労死は、業務を原因とした業務中の死亡になるので業務災害にあたります。
業務中あるいは通勤中のけがや病気、死亡が労災と認定されるためには、以下の3点を満たす必要があります。
業務遂行性とは業務中のけがや病気、死亡であるかどうか、業務起因性とは業務を原因としたけがや病気、死亡であるかどうかです。
過労死の判断をおこなう場合は、業務を原因とした死亡であるかという業務起因性が重要になります。
業務中のけがや病気、死亡が労災と認められると、労災保険による補償を受けることができます。
労災保険による主な補償は以下の通りです。
過労死の場合に労災保険から受け取れる給付は以下の2点になります。
遺族補償給付は、労災によって死亡した場合に遺族に支払われる給付です。この場合の遺族とは、労働者の賃金によって生計を立てていた人になります。
遺族補償給付には以下の3種類があります。受け取れる金額は、遺族の人数によって異なります。
遺族(補償)年金は給付基礎日額×日数、遺族特別年金は算定基礎日額×日数で計算されます。
遺族の人数 | 遺族(補償)年金 (給付基礎日額) | 遺族特別支給金 | 遺族特別年金 (算定基礎日額) |
---|---|---|---|
1人 | 153日分 | 300万円 | 153日分 |
2人 | 201日分 | 300万円 | 201日分 |
3人 | 223日分 | 300万円 | 223日分 |
4人以上 | 245日分 | 300万円 | 245日分 |
給付基礎日額とは、3か月間の賃金総額を3か月間の総日数で割った金額です。
算定基礎日額とは、労災認定の日以前から1年間に受け取っていた特別給与を365で割った数値です。特別給与とは給付基礎日額の算定から除外されているボーナスなどの賃金です。
また、過労死の場合には、葬祭給付が支給されます。
受け取れる金額は、以下の金額のうち多い方の金額になります。
みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。