労働審判と裁判の違いを徹底解説!

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監修者:みんなのユニオン 執行委員
岡野武志

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労働審判と裁判(民事訴訟)の違いをご存知ですか?

例えば以下の目的だと、どちらの制度を使うべきでしょうか?

  • 会社員が不当解雇について訴える
  • パワハラ上司を訴える
  • 公務員が賃金問題について訴える

労働問題で争うことになった場合、労働審判と裁判のどちらを利用するべきかと迷うことがあります。

どちらも労働問題を取り扱うという点では共通していますが、それぞれに特徴があります。

今回の記事では、労働審判と裁判の違いや流れ、それぞれのメリットとデメリットについてわかりやすく解説していきます。

制度を正しく理解して、適切な利用ができる手助けになれば幸いです。

労働審判と裁判の違いや流れをわかりやすく解説

労働審判と裁判について言葉は知っていても、制度の違いについて知っている人は少ないのが現状です。

もしみなさんが労働問題で争うことがあったら、双方の違いを知ったうえで適切な選択をする必要があります。

この記事では、混同しやすい労働審判と裁判の違いや流れについてわかりやすく解説していきます。

労働審判と裁判の違いは?

労働審判と裁判は解決できる問題の種類が異なります。

労働審判は労働問題を簡易迅速に解決する制度として2006年にスタートした制度で、対象は個人と企業の争いに限定されています。

労働組合などの集団での訴えや、会社ではなく上司個人を訴える場合などには労働審判は利用できず、対応できるのは裁判です。

裁判は全ての労働紛争に対応できるという点で、労働審判より取り扱い範囲が広く設定されています。

労働審判労働裁判
特徴労働問題を簡易迅速に解決労力、費用、期間などが労働審判より過大
対象個人と企業の争いに限定すべての労働紛争に対応

一般的には、どちらでも取り扱える労働紛争の場合は、あっせんや労働審判などで簡易解決を図り、解決できなかったケースで裁判へ移行するという流れが多いです。

裁判は全ての労働紛争に対応できますが、訴える労働者にとって、労力、費用、期間などが労働審判より過大で、労働紛争解決の最終手段と考えられています。

労働審判で取り扱えない問題に関しては、最初から裁判で争うことになります。

労働審判で取り扱えない労働問題とは?

労働審判で取り扱えない問題はいくつかあります。

以下に例を記載します。

  • 労働組合などの組織や集団で企業と争う場合
  • パワハラ、セクハラなどで個人(上司など)を訴えたい場合
  • 労働者が公務員の場合

労働審判は、労働者個人が企業を相手に争う制度ですので、労働組合などの組織や集団で訴えることはできません。

また、対象が企業に限られている点で、上司などの個人を訴えることもできません。

公務員の場合も、対象が企業とならないため労働審判の利用はできません。

以上のような問題に関しては労働審判では争えませんので、申立てを行う際には留意する必要があります。

労働審判と裁判の実施数、期間、和解率などの違いは?

労働審判と裁判では、年間実施数、かかる期間、解決率などに違いがあります。以下に各種の平均的な数値を記載します。

労働審判労働裁判
労働審判の数2018年3630件(年間3500件前後)2018年3496件(年間3000~3500件)
労働審判期間半数以上は3か月以内平均14.5か月
主な案件解雇・雇止め45.4%、賃金手当等 39.6%解雇・雇止め28.2%、賃金等請求 57.7%
和解率80%以上60%以上
解決金給与6ヵ月分程度(中央値)給与10か月分程度(中央値)

労働審判も労働裁判も年間3500件程度行われており、件数は同等です。

かかる期間に関しては、迅速解決を目指す労働審判の方が短いです。

主な案件は、労働審判が解雇問題と賃金問題がほぼ同等なのに対し、裁判は賃金問題が最も多いです。

和解率は労働審判より裁判の方が低いですが、裁判は労働審判で解決できなかった困難な問題を取り扱うことが多いため、解決率が低くなる傾向があります。

また解決の際には解決金が出ることも多く、金額は裁判のほうが高いです。

裁判は期間が長く費用もかかるため、解決金も高くなる傾向があります。

また、それぞれどの程度の費用がかかるのかという点も気になりますが、費用に関しては期間や訴額に応じて差が出るので一概に言えません。

参考までに労働審判でかかる一般的な金額は20万~40万+成功報酬(請求金の20%前後)程度と言われており、裁判になるとそれ以上の可能性があります。

労働審判も裁判も数十万円の費用を要するという点は共通しています。

労働審判と裁判の流れ

労働審判も裁判も裁判所への申立てでスタートします。

労働審判の場合は、地方裁判所へ申立てを行い労働審判官(裁判官)と労働審判員を含めた話し合いで、原則3回の期日内にて解決できるようにします

裁判の場合は、簡易裁判所か地方裁判所へ申立てを行い、互いの主張をもとに期日の制限なしで判決が出るまで争うことになります。

裁判は、訴額が140万円以下の場合は簡易裁判所で争い、140万超の場合は地方裁判所で争うことになりますので、訴額により申立てする裁判所が異なります。

どちらの場合も労働者は弁護士を代理人として雇う場合がほとんどであり、労働者自身で進行していくことは少ないです。労働者自身で行うことも不可能ではないですが、裁判に関する専門的な知識がないと不利な結果になる場合があるので注意が必要です。

そのため、申立てや必要書類に関しては弁護士に任せ、労働者は弁護士にアドバイスをもらいながら争いを進めていくことが多いです。

労働審判もしくは裁判で問題の解決ができない場合は、その後の展開が異なります。

労働審判の場合は裁判へ移行しますが、裁判の場合は控訴、上告を行うことができます。

しかし、民事訴訟の場合は控訴や上告で第一審判決が覆る可能性は極めて低いのが現状です。

労働審判の申請方法や流れについて詳しく知りたい方は「労働審判とは?手続きの流れや費用を解説!労働審判は自分でもできる」をご覧ください。

【参考】:「各紛争解決制度紹介リーフレット(R1件数)」厚生労働省

労働審判と裁判のメリットとデメリット

労働審判と裁判には、それぞれにメリットとデメリットがあります。

この記事では、それぞれのメリットとデメリットについてわかりやすく書いています。

それぞれの長所と短所を理解した上で、自分にはどの制度が適切なのかを判断することをおすすめします。

労働審判のメリットとデメリット

労働審判は簡易迅速な解決を図れるなどのメリットが多いですが、複雑な問題の解決力は弱いなどのデメリットもあります。

以下に労働審判のメリットとデメリットを記載します。

労働審判のメリット

  • 原則3回の期日以内で簡易迅速に問題解決できる
  • 労働者個人が企業相手に対等に争える
  • 非公開である
  • 代理人(多くは弁護士)に任せることができる
  • 話し合いで解決できる場合が多い
  • 解決率が80%以上と高く、解決金がもらえることが多い
  • 和解の効力は裁判と同等

労働審判のデメリット

  • 個別労働問題だけの取り扱いである
  • 数十万円の費用がかかる
  • 3回の期日で解決できない場合は裁判になる
  • 専門性の高い複雑な問題などの解決は難しい
  • 公務員は利用できない
  • セクハラ、パワハラには向かない(事実関係が争いになりやすいので労働審判には向いてない)

裁判のメリットとデメリット

裁判は、一般的には労働審判の後に行われる場合が多く、より複雑な問題解決に適していますが、期間と費用の点では負担が大きいです。

以下に裁判のメリットとデメリットを記載します。

裁判のメリット

  • 労働審判では難しい複雑で専門性の高い問題などを扱うことができる
  • 和解金が労働審判より高額になる傾向がある
  • 期間の制限がなく、時間をかけて争える
  • 弁護士に任せることで出廷する機会が少ない
  • 控訴、上告ができる
  • 判決ではっきりと結果が出る

裁判のデメリット

  • 労働審判より長期間かかる
  • 労働審判より費用が高くなる可能性がある
  • 第一審の結果はほとんどの場合、覆らない
  • 公開される

労働審判の結果を判断する際には「次に裁判になったらどうなるのか?」という視点や、裁判のメリットとデメリットも考慮して労働審判の結果を判断することも重要です。

労働審判と裁判のまとめ

今回は労働審判と裁判の違いについてまとめました。

労働審判と裁判では、労働者にとって負担が少ないのは労働審判ですが、取り扱える問題に限りがあります

また、今回は紹介していませんが、労働者の問題解決方法には労働審判よりさらに簡易なあっせんという制度もあります。

あっせんについて詳しく知りたい方は「不当解雇はあっせんで解決! あっせんをわかりやすく解説」をご覧ください。

労働者個人が企業と対等に争うことは負担が大きいですが、いくつかの制度をうまく活用して、不利益のないように解決していきましょう。

監修者


みんなのユニオン

執行委員岡野武志

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みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。

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