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近年、解雇や雇止めが頻発しており、特に契約期間に定めがある派遣労働者は真っ先に派遣切りに直面しやすいのが実情です。
派遣社員の場合、退職金やボーナスが通常出ないため、転職先が決まっていないと生活が困窮してしまいます。
そんな時に利用できる制度が失業保険です。
派遣なのに失業保険がもらえるのか不安を抱くかもしれませんが、条件に該当すれば派遣でも支給を受けられます。
今回は、派遣切りにあったときの失業保険の受給条件等をご紹介します。
目次
まず、ご自身の置かれている状況が「派遣切り」にあたるのかを確認してみましょう。
一般的に派遣切りとは、派遣社員の方が契約を切られ、働けなくなってしまうことを指します。
しかしその実態には、いくつかの種類が考えられます。
このうち、その後も別の派遣先で働くことができる①を除く、②と③の場合には失業保険の基本手当を受け取れる可能性があります。
失業保険は正式には雇用保険といい、労働者が離職したときに生活及び雇用の安定、就職の促進のため、基本手当が給付される制度です。
失業保険は正社員・契約社員・派遣社員・アルバイトといった労働形態は関係無く受け取れます。
なお注意点として、失業保険は派遣切りをされたら自動的に誰でも受け取れる、というものではありません。
派遣社員の方が失業保険を受け取るには、ハローワークでの申請をすること・受給するための条件を満たすことが必要です。
派遣切りされたときに失業保険給付が受け取れるのは、以下の3つの条件を満たしてる必要があります。
失業給付金は雇用保険から支払われるものなので、前提として雇用保険に加入していることが条件です。
雇用保険に加入するには、労働者側から何かアクションをとる必要はありません。
何故なら、以下に述べる条件を満たしている労働者については、会社が必ず雇用保険加入の届出を行わなければならないからです。
万が一会社の手続きミスで未加入となっていた場合は、ハローワークで遡って加入手続きを行うことができます。
一般的な派遣社員の雇用保険の加入条件は、以下の2つです。
・1週間の所定労働時間が20時間以上であること
・継続した雇用が31日以上見込まれること
派遣に限らず、アルバイトでもパートでも上記の条件は変わりありません。
派遣労働者でネックになるのは「1週間の所定労働時間が20時間以上」という条件でしょう。
例えば、週4日、午前中だけの3時間勤務といったケースでは条件を満たせず雇用保険には加入できません。
一方、労働者派遣法第35条の4において、派遣の契約期間の下限は31日以上と定められているため、契約期間で争いが生じる場面は少ないです。
勤務期間が30日以下でも派遣会社との労働契約が31日以上であれば問題ありません。
例外として日雇い労働者の場合、31日以下の短期間の契約が生じるケースもありますが、日雇い労働者も日雇い手帳の交付を受ければ雇用保険の加入が認められます。日雇い手帳は最寄りのハローワークで交付を受けることが可能です。
また、天候や自然環境によって業務内容が影響を受ける季節労働者も雇用保険の加入条件は異なります。雇用保険の被保険者として、季節労働者は短期雇用特例被保険者に分類されます。
・4ヵ月を越えて雇用契約が継続する
・1週間の所定労働時間が30時間以上
漁業やスキー場での仕事などを担う季節労働者は上記の2つを満たす必要があります。
失業給付金の支給を受けるには雇用保険に加入しているかだけでなく、加入期間に関する条件も含まれます。
具体的な雇用保険被保険者期間は、離職理由によって以下の通りになっています。
自己都合退職の場合 | 離職日前2年間に12ケ月以上加入 |
会社都合退職の場合 | 離職日前1年間に6ケ月以上加入 |
上記の通り、離職理由が自己都合か会社都合かによって、失業保険のもらえやすさが変わってきます。
派遣切りの場合、多くは会社都合退職となりますが、自己都合退職となる場合もあります。
詳しくは「派遣切りの自己都合退職・会社都合退職の判断基準」をご確認ください。
なお基本的にこの期間は別の会社にまたがっていても問題なく、前の会社で7ヵ月間、今の会社で5ヵ月間というように通算で計算します。
失業保険は失業者のための手当ですので、実際に「失業状態」である必要があります。
具体的に失業状態とは、以下の全てを満たすような状態です。
したがって病気療養中で働くことができない、妊娠や怪我で働ける状況でないなど、ご本人に就職の意思や能力が無い場合は「失業状態」にあたりません。
また求職活動をすることも求められています。
この求職活動はハローワークを通じてするものでなくとも問題ありませんが、実際に求人に応募したり、特定の民間機関による職業紹介などが該当します。
退職理由が自己都合なのか会社都合なのかどうかで、雇用保険の加入期間の条件が変わってくることをご説明いたしました。
派遣切りで失業保険を受け取ろうとする場合、自己都合退職か会社都合退職となるかは非常に重要です。
退職理由が自己都合か会社都合かによって、以下のような違いが生じます。
(自己都合退職であっても、特定理由離職者にあたる場合は、会社都合退職と同様に扱われます)
自己都合退職 (一部の特定理由離職者*を除く) | 会社都合退職 (+一部の特定理由離職者) | |
支給開始までの期間 | 7日の待期期間+ 2ヵ月の給付制限期間**後 | 7日の待期期間後 |
給付日数 | 90~150日 | 90~330日 |
収入の心配なく就職活動を行うためにいつから支給開始となるのかは非常に重要ですし、また給付日数は最終的な失業保険の総額を大きく変えます。
このため、派遣切りが自己都合退職に当たるのか、会社都合退職に当たるのかのは判断する必要があります。
自己都合退職となる派遣切りには、以下のようなものが考えられます。
派遣会社から仕事の紹介を受けたのに断ったり、派遣先との契約更新を自らの意向で行わなかったりする場合は、自己都合退職となる可能性があります。
また派遣労働者自身の重大な規律違反行為により、派遣元から懲戒解雇された場合も自己都合退職となります。
一方で、会社都合退職となる派遣切りには、以下のようなものが考えられます。
以上の場合は会社都合退職として、失業保険受給の面でより有利に扱われる可能性があります。
また、契約期間満了に伴い派遣元企業から仕事の紹介を受けられず、その後派遣元との雇用契約期間が終了してしまった場合も、会社都合退職に該当します。
働く意志も能力もあり、仕事の紹介を待っているのにもかかわらず、会社側の事情で仕事が見つけられずに雇用契約が終了してしまったと考えられるからです。
ただし、会社都合退職なのか自己都合退職なのか判断するのは、あくまでも認定機関であるハローワークです。ハローワークが認めなければ、派遣先企業から仕事の紹介が受けられないケースでも自己都合退職だと判断されてしまうかもしれません。
地域によっても判断が違ってくる部分なので、不安であれば所轄のハローワークに問い合わせてみることをおすすめします。
失業保険として受け取れる金額は、失業前の賃金や失業時の年齢によって変わってきます。
1日に受け取れる基本手当(基本手当日額)は元の賃金が高いほど高額になります。
基本手当を受け取れる日数(所定給付日数)は雇用保険の加入年数が長いほど、離職時の年齢が上がるほど(60歳まで)長くなります。
また、会社都合退職・契約更新を望んだにも関わらず更新がなされなかった場合にも、所定給付日数が長くなる傾向があります。
1日あたり失業保険をいくら受け取れるかを示す基本手当日額の目安は、以下の通りとなります(令和3年1月現在)。
【離職時の年齢が29歳以下】
賃金日額 | 基本手当日額の目安 |
2,500円以上5,010円未満 | 2,000円~4,007円 |
5,010円以上12,330円以下 | 4,008円~6,165円 |
12,330円を超えて13,630円以下 | 6,165円~6,815円 |
13,630円を超える | 6,815円(上限) |
【離職時の年齢が30~44歳以下】
賃金日額 | 基本手当日額の目安 |
2,500円以上5,010円未満 | 2,000円~4,007円 |
5,010円以上12,330円以下 | 4,008円~6,165円 |
12,330円を超えて15,140円以下 | 6,165円~7,570円 |
15,140円を超える | 7,570円(上限) |
【離職時の年齢が45~59歳以下】
賃金日額 | 基本手当日額の目安 |
2,500円以上5,010円未満 | 2,000円~4,007円 |
5,010円以上12,330円以下 | 4,008円~6,165円 |
12,330円を超えて16,660円以下 | 6,165円~8,330円 |
16,660円を超える | 8,330円(上限) |
【離職時の年齢が60~64歳以下】
賃金日額 | 基本手当日額の目安 |
2,500円以上5,010円未満 | 2,000円~4,007円 |
5,010円以上11,090円以下 | 4,008円~4,990円 |
11,090円を超えて15,890円以下 | 4,990円~7,150円 |
15,890円を超える | 7,150円(上限) |
おおよその目安として、月給15万円の場合は月額11万円・月給20万円の場合は月額13.5万円・月給30万円の場合は月額16.5万円ほどであることが多くなっています。
失業保険を何日間受け取れるかを示す所定給付日数は、以下の通りとなります。
【自己都合退職の場合】
年齢\雇用保険加入期間 | 1年以上 10年未満 | 10年以上 20年未満 | 20年以上 |
---|---|---|---|
全年齢 | 90日 | 120日 | 150日 |
【会社都合退職・契約更新がなされなかった場合】
年齢\雇用保険加入期間 | 1年未満 | 1年以上 5年未満 | 5年以上 10年未満 | 10年以上 20年未満 | 20年以上 |
---|---|---|---|---|---|
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | ― |
30~34歳 | 90日 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 |
35~44歳 | 90日 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 |
45~59歳 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
60~64歳 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。