解雇理由証明書を請求する方法は?解雇について争うのに重要な証明書

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監修者:みんなのユニオン 執行委員
岡野武志

休日出勤

2020年10月1日以降の自己都合退職者は、失業手当の給付制限期間が短縮される変更があります。

理由もよくわからずに、ある日突然会社から解雇を言い渡されたら、どうすればいいのでしょうか?

解雇の理由を説明するように要求しても、会社があいまいなことしか言わなければ、なぜ解雇されるのかが把握できません。

そんなときに役立つのが、解雇理由証明書です。

解雇理由証明書の発行を会社に請求すれば、解雇された理由を客観的に把握できるだけでなく、不当な解雇だと主張して争いやすくなります

そこで今回は、解雇理由証明書の概要や請求方法などを解説していきます。

解雇理由証明書はどんな書類?

解雇の妥当性について会社と争いたい場合は、客観的な証拠として解雇理由証明書を入手することが重要です。

しかし、そもそも解雇理由証明書が何なのかよくわからない場合も少なくないでしょう。

そこで、解雇理由証明書がどのような書類なのか、どんなことに役立つのかを解説していきます。

解雇理由証明書とは

解雇理由証明書とは、会社がなぜ労働者を解雇するのか、解雇の理由が具体的に記載されている書類です。

解雇理由証明書があることで、従業員がなぜ解雇されるのかを客観的に証明することができます。

解雇理由証明書に記載される項目

解雇理由証明書に厳密な書式はありませんが、一般に記載すべき項目として以下のものがあります。

  • 解雇する従業員の氏名
  • 解雇を予告した日付
  • 証明書を発行した日付
  • 事業主や使用者の氏名・名称

厚生労働省や労働局などでダウンロードできる雛形には、以下の6つの項目が解雇の理由として記載されています。

これらは労働者が解雇される際のよくある理由をまとめたものです。

  • 天災その他やむを得ない理由
  • 事業縮小等当社の都合
  • 職務命令に対する重大な違反行為
  • 業務について不正な行為
  • 勤務態度又は勤務成績が不良であること
  • その他

従業員を解雇しようとする会社は、6つの項目の中から該当する理由を選んでマルをつけ(理由が複数ある場合は複数を選択)、具体的な内容を記述します。

たとえば、無断欠勤を繰り返したことを理由に解雇する場合は、「勤務態度又は勤務成績が不良であること」にマルをつけます。

次に具体的な内容として、「令和2年8月1日から同年10月31日までの間に、合理的な理由なく計40日の無断欠勤をしたため」と記載します(あくまでわかりやすくするための例であり、実際に解雇が認められるかは別です)。

就業規則がある場合

会社に就業規則があり、就業規則違反を理由に解雇する場合は、先ほどの6つの項目に関わらず、就業規則に記載された解雇事由のうち該当するものを記載します。

たとえば、「勤務状況が著しく不良で改善の見込みがなく、従業員としての職責を果たし得ないと認められた場合は解雇できる」という規定が就業規則に規定されており、その事由に基づいて解雇するなどです。

就業規則はその会社のルールを定めたものです。

就業規則には賃金、労働時間、休日などの労働条件や、労働者が守るべき職場のルールを定めた服務規律などが規定されています。

就業規則を作成する場合、必ず解雇事由を記載しなければなりません(労働基準法89条)。解雇事由とは、会社が従業員を解雇できる理由を規定したものです。

また、常時10人以上の従業員を雇用する使用者(会社)は、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署に届出なければなりません(労働基準法89条)。

解雇理由証明書は何に役立つ?

解雇理由証明書があれば、自分がどのような理由で解雇されたのかを知ることができます。

また、解雇理由証明書には解雇された理由が記載されているので、解雇の不当性を争う場合の有力な手がかりになります。

たとえば、解雇理由証明書に解雇事由として職務違反行為があったと記載されている場合、以下のような主張が可能です。

  • 証明書に記載されている職務違反行為はそもそも存在しなかった
  • 職務違反行為があったとしても、解雇が認められる程度のものではない

逆にいえば、解雇理由証明書が手元になければ、自分がどのような理由で解雇されたかを把握するのが難しくなってしまいます。

次に、解雇の無効を主張して裁判を起こした場合、会社は解雇理由証明書に記載した解雇事由に事実上拘束されます。

別の解雇事由を主張すること自体は可能ですが、なぜ最初から解雇事由証明書に記載しなかったのか、後からでっち上げたのではないか、と裁判官の心証を悪くする可能性があります。

まとめると、解雇理由証明書があれば、解雇の無効を主張して争いやすくなるということです。

解雇理由証明書を請求するために知っておくべきこと

会社に解雇理由証明書を請求するために知っておくべき知識として、以下の3点を解説します。

  • 解雇理由証明書を請求できる期間
  • 解雇理由証明書の請求期間を過ぎたらどうするか
  • 解雇理由証明書の再発行を請求できるか

いずれも解雇理由証明書に関連する重要な知識なので、ぜひ押さえておいてください。

解雇理由証明書はいつまで請求できる?

解雇理由請求書は請求できる期間が決まっており、解雇の予告をされた日から退職の日までです(労働基準法22条2項)

なお、労働者としては退職の日までに解雇理由証明書を請求すればよく、会社が証明書を交付する前に退職日が到来したとしても、再度会社に証明書の発行を請求する必要はありません。

解雇理由証明書を請求できる期間を過ぎてしまったら

退職日を過ぎてしまって解雇理由証明書を請求できない場合は、退職証明書という書類を発行することを会社に請求できます(労働基準法22条1項)

退職証明書は会社を退職したことを証明するための書類で、主に国民健康保険への切り替え、転職先の会社への提出、失業保険の給付手続きなどに使います。

退職証明書には一般に以下の情報が記載されています。

  • 使用期間(会社に雇用されていた期間)
  • 業務の種類
  • 事業における地位
  • 賃金
  • 退職の事由(解雇の場合はその理由)

なお、退職証明書には労働者が請求しない事項を記載してはならないことが規定されています(労働基準法22条3項)。

退職証明書に解雇の理由のみを記載してもらえば、解雇理由証明書の代わりとして役立ちます

注意点として、退職証明書を請求できるのは2年までなので、必要であれば早めに請求しておきましょう。

解雇理由証明書は再発行してもらえる?

紛失してしまったり、再就職先に提出してしまったりなどで、解雇理由証明書が手元にない場合は、解雇理由証明書の再発行を請求できます。

解雇理由証明書の再発行を請求された場合、すでに発行したことを理由に会社が拒否することはできません。

解雇理由証明書による証明を求める回数に制限がないことが、行政通達で認められているからです(平成11年3月31日基発169号)。

解雇理由証明書を会社に請求する方法は?

会社に解雇されてしまうと、労働者としてはどうすればいいか途方に暮れてしまいがちです。

それによって、

「解雇理由証明書の発行を請求しても、会社に拒否されるかもしれない」

「解雇理由証明書の重要性はわかったけど、会社に請求する方法がわからない」

という心配がでてくるかもしれません。

しかし、会社は解雇理由証明書の発行を拒否することができないので、その点はご安心ください。

解雇理由証明書を会社に請求するための方法もしっかり解説していきます。

会社は解雇理由証明書の発行を拒否できない

あやふやな理由で従業員を解雇したい場合、会社は解雇理由証明書を発行しないことがあります。

解雇理由証明書を発行してしまうと、どのような理由で従業員を解雇するのかを客観的に証明しなければならないからです。

それでは、会社が解雇理由証明書を発行しない場合に、従業員は解雇理由証明書を発行するように請求できるのでしょうか?

労働者が請求した場合、会社は解雇理由証明書を遅滞なく交付しなければならないことが法律で定められています(労働基準法22条2項)。

つまり、労働者が解雇理由証明書を請求した場合、会社は拒否することはできません。

ただし、会社の側から率先して解雇理由証明書を発行することまでは要求されていないので、会社が発行しない場合は労働者の側から請求する必要があります。

解雇理由証明書を請求する方法

解雇理由証明書の発行を会社に請求するための方法は、特に法的な制限はありません。

会社が発行してくれるのであれば、口頭で請求するだけでも大丈夫です

会社が解雇理由証明書を発行してくれない場合は、労働基準法の規定によって、会社は解雇理由証明書を発行しなければならないことを説明してみましょう。

それでも会社が応じなければ、解雇理由証明書の発行を請求する書面を、内容証明郵便で会社に送る方法があります。

特に、弁護士に依頼して弁護士の名前で内容証明を送れば、会社が危機感を感じて応じやすくなることが期待できます。

不明瞭な解雇理由証明書が発行された場合

会社が解雇理由証明書を発行しても、理由などがきちんと書かれていない場合があります。

会社から発行された解雇理由証明書が不明瞭な場合は、理由などがきちんと記載された証明書を再度発行するように請求することができます

単に就業規則のどの規定に該当するかだけが記載されているなど、解雇に至った具体的な状況や理由が記載されていない解雇理由証明書が発行される場合があります。

理由がきちんと書かれていない理由は様々ですが、実は解雇するための十分な根拠がない場合などに、会社が不明瞭な解雇理由証明書を発行することがあるのです。

不明瞭な解雇理由証明書では、なぜ解雇されなければならなかったかを客観的に明らかにすることが困難になります。

解雇の不当性を争うには、解雇にいたった理由などができるだけ具体的に記載された解雇理由証明書があるほうが有利です

不明瞭な解雇理由証明書が発行された場合は、具体的な記載のある証明書を発行することを会社に請求しましょう。

まとめ

解雇理由証明書には労働者がなぜ解雇されるのか、その理由が記載されています。

解雇理由証明書があれば、自分がどんな理由で解雇されるのかを把握できるだけでなく、不当解雇として裁判などで争う場合に役立ちます

労働者が解雇理由証明書の発行を請求した場合、会社は発行しなければならないことが労働基準法に規定されています。

請求は口頭でも可能なので、退職する日までに請求しておくことをおすすめします。

監修者


みんなのユニオン

執行委員岡野武志

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みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。