有給休暇取得は労働者の権利?義務?―法律で確認する有給休暇

更新日:

監修者:みんなのユニオン 執行委員
岡野武志

happy stylish man casual clothes standing cliff mountain

2020年10月1日以降の自己都合退職者は、失業手当の給付制限期間が短縮される変更があります。

休んでいてもお給料がもらえる有給休暇は、魅力的な制度です。

国としても有給休暇取得を推奨しており、それを表すように、2019年に厚生労働省が発表したデータによると、有給休暇の取得率は52.4%で、4年連続で上昇しています。

しかし実際は、周りへの迷惑や職場の雰囲気等を考えてしまい、有給休暇を取得することにためらいがある方もまだまだ多く存在します。

そもそもこの有給休暇ですが、取得に関して法律でどこまで決められているのでしょうか?また、取得しないことでどういった影響があるのでしょうか?

この記事では、こういった有給休暇の取得に関する疑問を解決していきます。

有給休暇を取得する―法律との関係

上司から、「有給休暇を取得させないと面倒だから取得してくれ」、なんて言われたことがある方もいるかもしれません。

「面倒」ということは、労働者側の有給休暇取得に関して、会社側で何かしら義務が発生していると考えられます。

実はこの義務は、法律上で課されているものです。

それでは、有給休暇の意味の確認から、法律上どういった権利・義務が発生しているのかを、確認していきましょう。

有給休暇とは?

会社は、労働者に対し、労働対価として賃金を支払います。

そのため、出勤日に仕事を休んだ場合、労働をしていませんので、賃金は発生しないことになります。

しかし、有給休暇を利用して仕事を休んだ場合、その休んだ日も賃金が発生します。

つまり有給休暇とは、賃金が支払われる休日のことをいいます。

この休日は原則として労働者側で指定ができますが、その理由は、有給休暇が「労働者の」心身のリフレッシュを図ることを目的に設けられたものだからです。

法律上の有給休暇について

有給休暇とは、正式には年次有給休暇といい、法律で定められた労働者に与えられた「権利」です。

法律で定められた労働者とは、正社員だけでなく、パートタイマーやアルバイト等も含めて、以下の条件を満たした全ての労働者を指します。

有給休暇を取得することができる労働者の条件とは、以下の2点です。

  1. 半年間継続して雇われている
  2. 全労働日(働く義務のある日)の8割以上を出勤している

一方で、この条件を満たしたとき、会社は必ず10日間の有給休暇を付与しなければならない「義務」とされています。(労働基準法第39条)

パートタイマーやアルバイトであっても、週の所定労働日数が5日以上または週の所定労働時間が30時間以上の場合は、上記の通り10日間が付与されますが、それ未満である場合、有給休暇の付与日数は少なくなる点に注意してください。

有給休暇の時季を指定されるのは違法?

有給休暇は、私たち労働者側が取得できる「権利」である一方、会社側では与えなければいけない「義務」であることは前述のとおりです。

この会社側の義務ですが、法改正があり、2019年4月1日から、年10日以上の有給休暇が付与されている労働者に対しては、年5日の有給休暇を確実に取得させなければいけないという義務になりました。

以前は、条件を満たした労働者が有給休暇を取得できる状態であればよかったのですが、周囲への気兼ね等で有給休暇取得状況が低調のまま改善されず、それを打破するために導入されたものが、この年5日の有給休暇取得義務です。

労働者側が有給休暇を取得しやすい環境をつくることを目的としています。

有給休暇取得日は、原則として労働者が指定します。

ですが年5日に関しては、確実な取得をさせなければならないため、時季の指定義務も会社に課されています。

時季指定義務とは、労働者に有給休暇が発生した日から1年以内に、確実に取得させなければいけない5日については、取得する時季を会社が指定して取得させる義務をいいます。

この指定は、会社が労働者の意見を聴いたうえで、できる限り労働者の希望に沿った時季になるように設定します。

会社側に指定義務があるとしても、会社側の都合の良い日を一方的に指定するやり方は原則認められていないので、労働者側の意思が排除されるわけではありません

しかし、過去の年休取得率が非常に悪い場合などは、計画年休として、会社側で計画的に休暇取得日を割り振ることも認められています。

なお、この時季指定は、会社がするよりも前に、既に5日以上有給休暇を請求・取得している労働者に対しては、不要になります。

時季指定の対象や方法等については、会社の就業規則に記載することが法律上義務付けられているので(労働基準法第89条)、就業規則を確認してみましょう。

有休取得義務を果たせないと法律違反?

有給休暇取得義務は、会社側に課せられた義務なので、年5日取得させなかった場合、「会社側が」30万円以下の罰金に処せられる可能性があります。(労働基準法第120条)

しかし、あくまでも労働者側としては、有給休暇取得については権利なので、年5日取得できなかったとしても法的制裁はありません。

有給休暇に関するトラブル―法律との関係・対応策

魅力的な有給休暇ですが、取得しにくい環境ではトラブルも多いものです。

ここでは、有給休暇に関して生じたトラブルに対し、法律上どこまでが決められている事柄で、労働者としてはどういった対応ができるのかを確認していきます。

有給休暇取得希望日を変更・拒否された

この記事でも何度か言及していますが、有給休暇は原則労働者側で指定が可能です。

しかし、会社側で変更できる例外もあります。

労働者側で指定した日が、会社の「事業の正常な運営を妨げる場合」、会社は有給休暇の時季変更権によって、労働者側が希望した指定日から変更が可能です。(労働基準法第39条5項ただし書き)

具体例としては、多くの労働者が同じ日に有給休暇を希望し、全員に有給休暇として付与することが難しい場合等が挙げられます。

もし、会社側の理由が「事業の正常な運営を妨げる場合」に該当しないのにも関わらず変更・拒否された場合は、法律違反となり、会社側は罰則を受ける可能性もあります。

有給休暇申請をして、取得希望日を変更・拒否された場合は、まず理由を確認して、他の日なら取得できるのかどうか、会社側と相談してみましょう

繰り返し有給休暇申請を拒否される等、自力解決が難しい場合は、労働基準監督署や労働局に設置されている総合労働相談コーナーに相談することもできます。

相談することで調査が行われ、その過程で法令違反が発覚すると、労働基準監督署から会社に対して是正するよう勧告をしてもらえます。

有給休暇の買い取りは法律上可能?

有給休暇が思ったように取得できない場合、買い取りを検討されることもあるかもしれませんが、これは原則禁止となっています。

なぜなら、有給休暇を会社が買い取ることを認めてしまうと、「買い取るから休まず働け」という考えが蔓延り、さらに有給休暇を取得しにくい環境になってしまう可能性があるためです。

しかし、買い取りが認められる例外も存在します。

具体的には、以下の通りです。

  • 退職前に、消化しきれなかった場合
  • 法律で定められた日数(最大年20日)を上回る有給休暇が発生している場合
  • 有効期限を過ぎてしまった場合

このような場合は、労働者側が不利にならないため、例外として買い取りが認められています

ただし、これは任意的な措置なので、会社側が必ず全て買い取らなければならないものではありません。

上記の例外に該当する場合で、買い取ってほしいのであれば、会社とよく相談しましょう。

有給休暇が有効期限を過ぎ消滅していた

有給休暇には有効期限があり、有給休暇が付与されてから2年以内に行使しないと消滅します。(労働基準法第115条)

なお、この有効期限となる2年は法律で決まっており、会社側で勝手に短縮すると労働者側にとって不利になるため、認められません。

しかし、会社側で有効期限を2年以上に延長することは、労働者にとって不利にならないため、可能です。

2年以上に設定された有効期限を過ぎて消滅してしまった場合は、労働者は、消滅した有給休暇を行使することはできません

可能な対応としては、前述したように、有効期限を過ぎてしまった分の買い取りができるかどうか、会社に相談してみることが挙げられます。

最後に

国が有給休暇取得を推奨しているといっても、なかなか取得しにくいのが現実です。

しかし、この記事でもお伝えした通り、有給休暇は労働者の心身のリフレッシュを図るために設けられたものです。

しっかり休んで、次出勤した時に精力的・効率的に仕事に取り組めたら、労働生産性を上げることにも繋がります。

そういった面を肯定的に受け取り、多くの労働者にとって有給休暇が取得しやすい環境に今後変化していくかもしれません。

今はまだ取得しにくい環境かもしれませんが、法律で決まっている労働者側の権利だと考えれば、取得することに対して少しはポジティブに考えられると思います。

まずは会社に義務が課されている年5日の有給休暇について、前向きに取得検討してみてはいかがでしょうか

監修者


みんなのユニオン

執行委員岡野武志

詳しくはこちら

みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。