仕事上のミスで減給された!これって違法?

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監修者:みんなのユニオン 執行委員
岡野武志

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2020年10月1日以降の自己都合退職者は、失業手当の給付制限期間が短縮される変更があります。

雇用主から「仕事でミスした分は減給しとくからね」と言われると、やる気が半減してしまいますよね。

でも、自分に非があるので何も言い返すことができない気がしてしまいます。

しかし、仕事上のミスの減給には、明らかに労働基準法に違反するものと、会社の懲戒処分として有効なものが存在しています。

あなたの仕事上のミスによる減給は、どちらの性質をもつ減給でしょうか?

この記事では、仕事上のミスによる減給について詳しく解説していきます。

仕事上のミスによる損害賠償を理由とした減給は無効

仕事上のミスは、だれもが一度は経験したことがありますよね。

軽いミスであれば笑って済ませることができるかもしれません。

でもケースによっては、会社に大きな損害を与えるようなミスもあります。

では仕事上のミスで会社に損害を与えてしまった場合、その損害費用が給与から天引きされる、つまり減給されることは認められているのでしょうか?

軽過失のミスは損害賠償請求されることはない

ミスをしない人はひとりもいません。

人間であれば、仕事をする上で必ずミスをします。

したがって、仕事上の軽いミスで損害賠償請求されることはまずありません。

軽いミスとは、通常、その業務をしていれば生じうるかもしれないミスのことです

つまり、一般的なミスと言えるでしょう。

例えば、ウェイターがコップを割ってしまうことや、レジ店員がお釣りの金額を間違えて多く渡してしまうこなどが挙げられます。

このように仕事の性質上避けられないミスは、たとえ労働者の不注意で生じたミスだとしても、雇用主には、労働者の給与から減給する権利はありません。

なぜなら、会社側は労働者のおかげで利益を得ているからです。

そのため、起きるかもしれないミスで生じた損害は会社側が負担すべきものであり、労働者の給料から天引きされるものではありません

重過失のミスは損害賠償請求されることもある

労働者が重大なミスをした場合は、損害賠償請求されることがあります。

民法第145条には、債務不履行による損害賠償として「債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする」。

また、民法第709条には、不法行為による損害賠償として「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」と定めています。

軽過失と重過失の線引きが難しいのが事実ですが、故意的にしたと判断されるミスであれば重過失として扱われ、損害賠償請求される可能性があります。

通常の仕事上のミスのほとんどは軽過失と判断されますが、軽過失なミスであったとしても、雇用主の解釈で重過失と判断し、損害賠償や弁償として減給する悪質なブラック企業もあるので注意が必要です。

なお、損害賠償請求されるとしても、全額賠償することはほぼなく、2~3割の賠償で済むことが多いと言えるでしょう。

損害賠償を理由とした減給は違法

労働基準法第24条1項には、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」と規定されています。

つまり、損害賠償金と賃金を相殺することは許されていません。

よって、損害賠償を理由とした減給は違法です。

また、労働基準法第17条には、「使用者は、前借金その他労働することを条件とする前借の債権と賃金を相殺してはならない」とあり、前借金と賃金の相殺が禁止されているのと同様に、賃金と損害賠償金との相殺も許されていないと一般的に考えられています。

ただし、双方の合意があれば可能ですが、それには労働者が自由な意思に基づき相殺に同意したという要件を満たしていなければいけません。

つまり、「自由意思」と認められる「合理的な理由」が存在している必要があります。

懲戒処分の減給には制限がある

企業によっては、仕事上のミスが懲戒事由に該当するとして、減給処分することがあります。

職場の秩序を維持するための制裁とはいえ、人間誰もがミスをするので、過度な減給処分はヒドイと感じますよね。

そのため、懲戒処分の減給は、労働者を保護するために労働基準法で制限されています

では、あなたの仕事上のミスによる懲戒処分としての減給は、適法なのか、それとも違法なのか確認していきましょう。

就業規則に減給の制裁が定められている

就業規則に減給の制裁について定めていなければ、仕事でミスをしたことを理由に制裁として減給することは違法行為になります。

多くの企業では就業規則があることでしょう。

ただし、常時使用する労働者の数が10人未満の事業所に関しては就業規則の作成は義務ではなく、任意です。

したがって、就業規則を作成していなければ、減給の制裁は行えません。

また、就業規則があったとしても、減給となる理由(懲戒事由)・減給の制裁(懲戒処分)の2つを定めていなければ、減給は違法です。

ですから、まず自社の就業規則に減給の制裁が明記されているかどうかを確認してみましょう。

懲戒処分の減給には上限がある

労働基準法第91条には、「就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。」と制裁規定が制限されています。

要するに、

  1. 1回の額は平均賃金の1日分の半額を超えてはいけないこと
  2. 減給の総額が、賃金支払期における賃金総額の10%を越えてはいけないこと

ということです。

就業規則に減給の制裁についてあらかじめ定められているとしても、労働基準法で定められている上限を超える減給は違法となります。

違法な減給をされた場合の対処法とは?

減給に関する就業規則の有無や、制裁の減給に関する上限も確認し、それが適法の場合は、減給という処分は嬉しいものではありませんが、その現実を素直に受け止めましょう。

では、仕事上のミスによる減給が労働基準法に違反している場合は、どのように対応すればよいのでしょうか?

労働基準監督署に相談・申告を行う

就業規則に減給の制裁に関する規定が明記されていない、又は上限を超えた金額が給料から差し引かれた場合は、労働基準法第91条に違反する違法行為として、労働基準監督署に会社の違法行為を相談・申告することができます。

労働基準法第101条には、「労働基準監督署は、事業場、寄宿舎その他の附属建設物に臨検し、帳簿及び書類の提出を求め、又は使用者若しくは労働者に対して尋問を行うことができる。」

また、労働基準法第104条には、「事業場に、この法律又はこの法律に基づいて発する命令に違反する事実がある場合においては、労働者は、その事実を行政官庁又は労働基準監督署に申告することができる。」と規定されています。

つまり、労働者から相談・申告を受けた後、労働基準監督署は事案に応じて、申告された会社を臨検や調査、尋問などを行います。そして、必要であれば、警察のように逮捕や検察への送検なども可能です。

労働局に紛争解決手段の申立てをする

仕事上のミスで減給された行為が、雇用主の違法行為であれば、労働者と雇用主の間で「紛争」が生じているということになります。

当事者の一方の申立てがあれば、その紛争を解決するために労働局による助言や指導などのサポートを受けることが可能です。

労働局は労働者の味方になり、減給したお金を労働者に支払うよう、雇用主に指導することでしょう。

労働局の紛争解決援助の申立は、裁判所の調停とは異なり無料で利用できるので、違法行為をされた労働者にとっては心強い味方と言えます。

解決しない場合は専門家に相談を!

労働基準監督署に行っても問題が解決しないのであれば、労働問題を専門とする弁護士や司法書士、社会保険労務士などに相談してみましょう。

労働者ひとりの力で問題を解決することは容易ではないので、早めに相談されることをおすすめします。

監修者


みんなのユニオン

執行委員岡野武志

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みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。