懲戒解雇が納得できない!不当解雇で損害賠償請求できるか解説

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監修者:みんなのユニオン 執行委員
岡野武志

懲戒解雇|損害賠償請求できる?

「懲戒解雇処分を受けたけど納得できないから会社に損害賠償請求したい!」と考えていませんか。クビを言い渡されると受ける精神的苦痛は甚大ですし、懲戒解雇は再就職にも影響を与えますから、会社に慰謝料等を請求したいと考えるのは当然です。

結論から言うと、違法性を有する懲戒解雇であれば損害賠償請求が認められる場合があります。この記事では、どうすれば懲戒解雇で損害賠償を請求できるか、得られる金額はどれくらいなのか等解説します。

横領すると懲戒解雇?どのような処分が下されるのか

懲戒解雇とは、企業秩序を著しく乱す行為をした従業員に対してペナルティとして行われる解雇です。

主に、以下のような行為を行った場合に懲戒解雇をなされることがあります。

  • 業務上横領などの犯罪行為
  • 2週間以上の無断欠勤
  • 重大な経歴詐称
  • 重大なハラスメント行為

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懲戒解雇された旨は選考の過程で企業に伝える必要がありますから、再就職に不利に働くでしょう。また、就業規則の内容によっては退職金が受け取れないケースがあります。つまり、懲戒解雇は労働者にとって著しい不利益が生じる行為なのです。

特に横領に関しては信頼を裏切る行為かつ企業に対して直接的な損害を与えているため、企業側から重い処分を下されるケースも多いです。

この章では、横領の定義や横領が発覚した際の処分などについて説明していきます。

横領とは?横領の定義を解説

横領は単純横領罪、業務上横領罪、遺失物等横領罪の3種類に分けられます。
それぞれの刑法の条文と具体例を解説していきます。

(1)単純横領罪(刑法第252条1項)

自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の懲役に処する。

刑法第252条1項

他人から預かっている物を自分の物のように処分すると、単純横領罪に該当します。
たとえば、友人から借りた物を勝手に売却した場合はこれにあたります。

(2)業務上横領罪(刑法第253条)

業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の懲役に処する。

刑法第253条

たとえば、会社から集金業務を任されている者が集金額の一部を自分のものとしてしまったり、経理担当者が会社のお金を自分の口座に移した場合は業務上横領罪に該当します。

なお、会社をだます意図を持って実際よりも高額な経費(通勤費用や出張費用等)を請求し、差額を自分のものとした場合は、業務上横領罪ではなく詐欺罪に該当します。

業務上横領と詐欺はいずれも懲戒処分の対象になりうる行為で、詐取した金額が少額であったとしても、著しく悪質であるとみなされて懲戒解雇がなされることもありえます。

(3)遺失物等横領罪(刑法第254条)

遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する。

刑法第254条

たとえば、路上の落とし物を拾ってそのまま自分のものにしてしまった場合、遺失物等横領罪に該当します。

業務上横領は懲戒処分・返還請求・刑事告訴で責任を追及される

企業における主な横領は業務上横領となりますが、従業員が業務上横領をした場合、企業から以下の対応をされる可能性があります。

  • 懲戒処分(懲戒解雇や停職、減給など)
  • 横領した金銭の返還請求
  • 刑事告訴

(1)懲戒処分(懲戒解雇や停職、減給など)

業務上横領を行うと、就業規則の懲戒事由に基づき、懲戒解雇や停職、減給といった処分をなされることがあります。
最も重い懲戒処分は懲戒解雇です。

業務上横領をしたことを裏付ける証拠があり、客観的に合理的な理由を備えていて社会通念上相当であると認められるケースであれば懲戒解雇がなされます。

過去の裁判例では、集金の一部(1万円)を着服した信用金庫従業員の懲戒解雇は「その原因(着服した事実)があり、かつ信用に立脚する金融機関の性格上やむを得ないもので、もとより有効といわなければならない。」として認められています(「前橋信用金庫事件」東京高裁平成元年3月16日判決)。

(2)横領した金銭の返還請求

業務上横領の事実が発覚した場合、企業から金額の返還を求められるでしょう。
当然ながら実際に横領してしまった分は返還しなければなりません。

返還を無視したとしても、給与を差し押さえられて回収されることになるでしょうから、素直に返還に応じることをおすすめします。

ただし、もしも就業規則に「就業規則に違反する行為を行った場合は○○万円を罰金として支払う」という賠償予定の規定があったとしても、その規定に応じる必要はありません。
労働基準法第16条で賠償予定の禁止が定められているため、実際の損害額以上を支払うような事態にはなりません。

(3)刑事告訴

企業が捜査機関に告訴状を提出した場合、逮捕・起訴される可能性があります。

横領した金額を返還して和解していれば告訴される可能性は低くなるでしょうが、横領した金額を全額返還できなかったり、返還することを拒否した場合は、告訴される可能性は高まるでしょう。

横領の懲戒解雇が無効になるケース

実際に業務上横領をして懲戒解雇が言い渡されたとしても、必ずしもその解雇が有効になるとは限りません。

たとえば、悪質性が同程度の横領を過去に行った従業員は厳重注意程度で済まされたにも関わらず、あなただけ懲戒解雇がなされた場合は「平等取扱いの原則」に違反しているとして懲戒解雇の無効を主張することができます。

また、懲戒解雇の理由や根拠となる就業規則の規定を説明される場が設けられず、弁明の機会も与えられなかった場合は「適正手続の原則」に違反しているとして懲戒解雇の無効を主張することができます。

懲戒解雇で損害賠償は可能?

懲戒解雇をされた場合、従業員側から企業側に対する損害賠償が認められる場合があるので、詳しく解説します。

懲戒解雇の損害賠償請求が認められるのは不法行為のケース

懲戒解雇による損害賠償請求が認められるには、その行為が不法行為だったと証明しなければいけません。

民法709条には、故意または過失によって他人の利益を侵害した者は、不法行為による損害賠償責任を負うとあります。
この規定に従えば、不法行為に該当する、違法な懲戒解雇だと立証できれば、損害賠償請求は認められます

注意すべきは不当解雇だからといって、必ずしも違法な解雇に該当するとは限らない点です。
不当解雇の違法性が著しい場合にのみ、損害賠償請求は可能とされています。

慰謝料以外に受け取れる可能性がある金銭

損害賠償請求というと、慰謝料を頭に思い浮かべる人も多いでしょう。慰謝料とは、精神的苦痛に対する損害賠償を言います。
懲戒解雇により受ける精神的苦痛は相当なものですから、慰謝料を受け取れる可能性は少なくありません。

懲戒解雇の場合、慰謝料以外にも「解雇予告手当」や「未払い賃金」を受け取れる可能性もあります。

解雇予告手当とは

解雇予告手当とは、退職日の30日以上前に解雇の予告が通知されなかった場合に受け取れる手当のことです。
解雇は原則、30日前には予告されていなければならず、それ以降の通知では使用者は30日分以上の平均賃金を支払わなくてはいけないと労働基準法20条に定められています。

懲戒解雇は、即日解雇であるケースが多く解雇予告手当を請求できる可能性があります。もっとも、懲戒解雇の場合、会社が労基署の認定を受ければ解雇予告手当の支払いは不要になります。

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また、解雇によって退職金が無くなったり減額されている場合、退職金との差額も受け取れることもあります。

さらに、雇用関係の継続を主張して、解雇以後の賃金を未払い賃金として請求するパターンもあります。実際には働いていなくても、その期間の賃金の請求は可能です。

解雇予告手当や退職金との差額を請求する場合、解雇が有効であることが前提となります。つまり、解雇の事実自体は覆せません。
一方、未払い賃金を請求する場合、解雇は無効であり依然として社員のままだと主張することになります。

慰謝料の相場は50~100万円

不当解雇の慰謝料は、不法行為の違法性が高いほど高額になる傾向があります。過去の裁判例から導き出された不当解雇による慰謝料の相場は、50~100万円です。

例えば、パワハラを受け、それに抗議したら懲戒解雇となったケースでは会社側とパワハラをした上司にそれぞれ100万円の支払いが命じられました。

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会社から逆に損害賠償を請求される可能性はある?

会社に損害を与えた場合に懲戒解雇をなされることが多いので、逆に、会社から損害賠償請求を受ける可能性があります。

上述したように、業務上の地位を利用して会社の利益を横領していたケースでは損害賠償請求されても仕方ありません

ただ、損害賠償の必要があるのは、実際に生じた損害額のみです。会社は実害とは認められない金額まで請求してくる危険もあるため、金額の精査は必要です。

懲戒解雇で損害賠償を得る2つの方法

懲戒解雇の際の損害賠償請求手続きとしては、まずは内容証明郵便を会社に送付し、任意交渉が難しいのであれば、裁判手続きに移行するという流れです。

訴訟では「不当解雇を主張して慰謝料を請求する」「解雇無効を主張して未払い賃金を請求する」の2パターンがあります。それぞれの方法について詳しく見ていきましょう。

不当解雇を主張して慰謝料を請求する

退職を前提に、不当解雇により精神的な損害を被ったとして、慰謝料を請求する方法です。

上述した通り、解雇の違法性を主張・立証する必要があります。解雇時に考えられる違法行為としては「度重なるパワハラやセクハラ」「しつこい退職強要」などが該当します。

従業員を辞めさせるために会社が圧力をかけていたならば、不法行為に当たる可能性があると言えるでしょう。

解雇無効を主張して未払い賃金を請求する

解雇無効では「この解雇は不当であり無効だから、まだ雇用関係は継続中である。だから、今までの未払い賃金(バックペイ)を支払え」という主張を行います。突然解雇を言い渡されたなど理不尽なケースでは、解雇無効を主張するのが一般的です。

もし、不当解雇のみならず違法性も存在するなら、別途慰謝料の請求を行うことも可能です。

懲戒解雇で不当解雇を争う際の疑問点を解決

懲戒解雇で慰謝料を得たければ、違法性を主張する必要があると紹介しました。しかし、違法性があると認められるには、過度なパワハラ・セクハラがあったなど会社側の行き過ぎた言動がなくては厳しいです。

このため、実際には違法性を主張するより、解雇無効を争う方が一般的だと言えます。といってもどのようなケースが不当解雇に当たるのか、立証のためにはどんな証拠を用意すれば良いのか等、疑問を抱くでしょう。最後にこれらの疑問に対してお答えします。

懲戒解雇が不当解雇に当たるのはどんな場合?

懲戒解雇が不当解雇だと主張したければ、懲戒解雇特有の不当解雇事情に該当するか、社会通念上相当な処分だったかといった点が重要です。

就業規則に懲戒事由が記載されていなければ懲戒解雇は無効

懲戒解雇が認められるためには、必ず就業規則に懲戒事由が記載されていなければなりません。

そのため、就業規則に懲戒事由に関する記載が無ければ、その懲戒解雇は違法です。また、就業規則に記載があったとしても解雇理由が懲戒事由に該当しなければ、違法になります。

原則として懲戒解雇は、重大な経歴詐称があった場合や、業務上の地位を利用して横領などの犯罪をした等、従業員がかなり悪質な行為をしていなければ認められません

社会通念上相当でなければ解雇は認められない

また、社会通念上相当な解雇とは、処分の原因となる事実に対し解雇処分がふさわしいのかという点を指します。

懲戒処分に客観的に合理的な理由が存在する場合でも、解雇処分が重すぎると判断できる場合は、社会通念上相当な処分とは言えません。

例えば、同じ行為をした他の労働者が降格処分で済んだのに、自分は解雇処分を受けたというケースでは、相当性が否定される可能性が高いです。

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不当解雇を立証するための証拠は何を用意すれば良い?

懲戒処分の違法性や不当解雇を立証する証拠として考えられるのが、以下のような書類です。

  • 雇用契約書
  • 就業規則
  • 解雇通知書
  • 解雇理由証明書
  • 人事評価書

雇用契約書や就業規則にはどのような場合に懲戒解雇できるのか明記されている場合が多いので、懲戒解雇に該当する行為があったのか確認する際の証拠になります。

また、実際のケースでは会社側は「解雇の事実など存在しない」と主張する可能性があります。そのため、書面で解雇の事実を明確にさせておく必要があります。

解雇理由証明書は解雇の理由まで詳しく記載する書類ですから、交付を事前に申請しておきましょう。労働者の能力不足や業務怠慢が理由の解雇の場合、人事評価書の記録が、解雇の客観的合理性や社会通念上の相当性を立証する証拠となる場合もあります。

会社を去った後は証拠集めが難しくなってしまうので、早めに上記の書類は入手しておきましょう

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