懲戒処分されると退職金はもらえないの?

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監修者:みんなのユニオン 執行委員
岡野武志

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2020年10月1日以降の自己都合退職者は、失業手当の給付制限期間が短縮される変更があります。

「懲戒解雇に伴い、退職金は全額不支給になります」と告げられると、かなりショックですよね。

懲戒解雇される問題行動を起こした自分に非があるとしても、退職金が全額不支給とまで言われると、今までの努力をすべて否定され、やるせない気持ちになるでしょう。

確かに、「懲戒処分として解雇する場合は、退職金を支払わない」という就業規則や退職金規定を明記している企業はたくさんあります。

しかし、ケースによっては、退職金をもらえる可能性があります

ですから、懲戒処分として解雇を言い渡された場合は、辞める前に、まず退職金がもらえるかどうかを確認することは大切です

法律的観点からみる退職金 | 退職金の仕組みとは?

懲戒処分として解雇された場合、「退職金がもらえなかった」というケースはよくあります。

しかし、懲戒解雇を言い渡されたとしても、必ずしも退職金をもらう権利がない、というわけではありません

なぜでしょうか?

それを理解するためには、まず退職金の仕組みについて理解する必要があります。

では、さっそく確認していきましょう。

退職金に関する法律の定めはない

退職金は、労働者が退職時に企業から支給される一時金のことで、退職手当、または退職慰労金などとも呼ばれています。

多くの企業では退職金制度を導入していますが、法律によって支給が義務付けられている制度ではありません

そのため企業は、退職金制度を設けていなくても違法にはなりません。

しかし、就業規則や退職金規定などに「○○の場合、退職金を支払う」とあらかじめ明記されている場合は賃金の一部とみなされ、雇用主には支払義務が発生します(労基法89条3号の2)。

そして、労働者は、明記されている条件を満たしていれば、退職金を受け取ることが可能です。

ところが、多くの企業は、就業規則や退職金規定に条文として「就業規則に定める懲戒規定に基づき懲戒解雇された者には、退職金を支給しない」などの旨が明記された「退職金の不支給要件」を置いています。

このような旨の条文がある場合、労働者と雇用主は、「懲戒解雇した場合は、退職金を支払わない」という契約を結んだことになるため、雇用主には退職金を支払う義務がないため、労働者は雇用主に退職金の請求をする権利はありません

しかし、ケースよっては、退職金をもらえる可能性があります。

懲戒処分の解雇は退職金をもらえない?

懲戒処分とは、何かしらの違反行為を起こした労働者を対象に、雇用主が与える制裁です。

懲戒処分には、戒告、譴責、減給、降格、出勤停止、諭旨解雇、懲戒解雇といった種類があり、問題行動の内容に応じた制裁が下されます。

この処分の中でも一番重い処分が、制裁として強制的に解雇する懲戒解雇です。

しかし、前述したように、ケースによっては懲戒処分として解雇になったとしても、退職金をもらえる可能性があります。

実際、過去の判例では、就業規則に「懲戒解雇の場合は、退職金を支払わない」という旨が明記されているとしても、規定の退職金の3割ほどの支払が認められた事案もあります。

つまり、労働者が違反行為をし懲戒処分を受けたとしても、今までの功労がすべて帳消しになってしまう理由がない限り、雇用主は退職金を支払う義務があるのです。

懲戒処分として解雇することで退職金が減額、もしくは全額不支給になるかについての基準は、違反行為の重大性、損害の大きさ、その労働者の今までの功労、過去の処分との比較などで判断します。

そのため、余程の理由でない限り、多少減額されたとしても、全額不支給になる可能性は低いです。

懲戒処分として解雇されても退職金がもらえる条件とは?

懲戒解雇されたとしても、退職金をもらえる可能性があることがわかりました。

ですから、「懲戒解雇だから退職金はもらえない」と決めつけず、まずは退職金が本当にもらえないのかどうか確認してください。

では、退職金がもらえるかどうかは、どのように確認できるのでしょうか?

確認すべきポイントをみていきましょう。

まずは退職金に関する規定内容をチェック

就業規則や退職金規定に「懲戒解雇の場合には退職金を支払わない、もしくは減額する」という旨が明記されていないのであれば、懲戒処分だとしても退職金を受け取ることが可能です。

なぜなら、前述したように、就業規則や退職金規定に退職金についても規定が置いてあるのであれば、雇用主と労働者の間で「退職金を支払う」という契約を交わしているからです。

したがって、退職金を全額不支給にしたり、減額したりする場合は、雇用主の一方的な契約違反となります。

あらかじめ就業規則に退職金の減給や支給条件など記載していなければ、雇用主には退職金を全額支払義務があるのです。

ですから、まずは退職金を支払わない、もしくは減額する条件について、就業規則や退職金規定に定めがあるかどうかを確認しましょう。

懲戒解雇となった理由は?

「懲戒解雇の場合は、退職金を支払わない」と規定されているとしても、必ずしも退職金がもらえなくなるというわけではありません。

たとえ懲戒処分として解雇された場合でも、その問題となる違反行為が、「今までの功労を打ち消すほどの悪質なもの」でなければ、退職金をもらう権利があることを裁判所は認めています

そもそも退職金には、長期勤務に対しての報酬などの「功労報償的」性質と、一部を後払いする「賃金の後払い的」性質の二面性を持ち合わせています。

そのため、懲戒処分としての解雇と退職金の支給は別問題である、と言われています。

ただし、労働者が今までの功労を打ち消すほどの著しい違反行為であった場合は、退職金の全額不支給の措置が認められます

過去の事例と退職金を請求できる場合の対処法

懲戒処分の解雇に伴う退職金の支払いについては、裁判でよく争いになります。

つまり、雇用主から退職金の全額不支給や減給を言い渡されたとしても、その判断が不適当である可能性があります。

では、退職金の支払いが妥当と認められやすい具体的な例には、どのようなものがあるのでしょうか?

退職金の支払いが妥当と認められやすい具体例

過去の判例から、退職金の支払いが妥当と認められやすい具体例には、以下のような理由で懲戒処分されたものがあります。

  • 上司への暴言やトラブルなどを起こした場合
  • 交通費などのわずか金額の不正受給をした場合
  • 同業他社への転職が禁じられているにも関わらず、退職後に同業他社へ転職した場合  など

このように企業側への損害が小さいケースや企業秩序への影響が小さいなどのケースは、退職金の減額や全額不支給は無効と判断される可能性があります。

退職金の支払いを減額が妥当と認められやすい具体例

過去の判例から、退職金の支払いを減額が妥当と認められやすい具体例には、以下のような理由で懲戒処分されたものがあります。

  • 企業の財産を横領した場合
  • 重大な企業秘密を漏洩した場合
  • 重大な業務命令違反をした場合
  • 上司や同僚に暴行した場合

このように刑法犯罪が成立するケースや企業側への損害が大きいケースは、退職金の支払いが減額、もしくは全額不支給が妥当であると判断される可能性があります。

退職金を請求するための対処法

下された懲戒処分の理由が、退職金がもらえた過去の判例と類似している方もいることでしょう。

しかし、実際のところ、本当に退職金がもらえるかどうかは、弁護士でないと正確な判断は難しいと言われています。

退職金をもらうことができないというのは、労働者にとっては大きな不利益です。

ですから、自分に下された処分に疑問や不満を感じるなら、まずは雇用主に確認し、退職金を支払ってもらえないか交渉してみましょう。

もしそれでも雇用主が交渉に応じてくれない場合は、信頼できる弁護士へ相談されることをおすすめします。

監修者


みんなのユニオン

執行委員岡野武志

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みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。