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「懲戒処分」と聞くと、何か悪いことをした罰というイメージがありますよね。
実際、雇用主は、会社の秩序を乱した労働者に対して罰、つまり懲戒処分を行うことで、社内の秩序を維持することができます。
ただし、懲戒処分には種類や法律上のルールが存在しています。
そのため、雇用主から懲戒処分を言い渡されたとしても、ルール違反であれば違法とみなされます。
このようなトラブルを回避できるよう、懲戒処分の意味や種類、基準など基礎的なことを把握しておきましょう。
目次
懲戒処分という言葉は、あまりいい響きがしないですよね。
「クビ」などの厳しい処分をイメージする方もいることでしょう。
そもそも「懲戒処分」には、どのような意味があるのでしょうか?
懲戒処分の意味や目的、種類についてみていきましょう。
懲戒処分とは、労働者が果たすべき業務命令や規律に違反したことに対する制裁として行う不利益措置のことです。
懲戒処分には軽いものから重いものまで種類があり、どの懲戒処分を下すかの判断基準は、雇用主の裁量に任されています。
ただし、懲戒処分はあくまで労働契約に基づくものであるため、あらかじめ就業規則に、どのような場合にどのような種類の懲戒処分を行うかを明記しておかなければなりません。
そもそも企業側はなぜ懲戒処分を下すのでしょうか?
それは問題行為を行った労働者を放置すれば、社内の秩序が乱れるからです。
また、他の労働者の士気を下げる可能性もあります。
そのため、
を目的として懲戒処分を下します。
懲戒処分は、一般的に軽いものから「戒告」「譴責」「減給」「出勤停止」「降格」「諭旨解雇」「懲戒解雇」の7種類あります。
このように懲戒処分には種類があり、問題行動の重さに応じて、就業規則などと照らし合わせながら処分が決定されます。
懲戒処分は雇用主の判断で行われているのではないか?と思われる方もいるかもしれません。
しかし、懲戒処分は雇用主の一方的な判断で下せるものではありません。
懲戒処分を行う際には、法的根拠に基づいて行われる必要があります。
では、法律では何が定められているのでしょうか?
法的根拠について確認していきましょう。
懲戒処分を行う際の法的根拠となる法律は、以下の通りです。
第15条 使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。
労働契約法15条
この法律から満たさなければならない3つの要件が分かります。
まず1つ目の法的要件は、「使用者が労働者を懲戒することができる場合」に関連するものでなければいけません。
つまり、あらかじめ就業規則において、懲戒処分の種類と懲戒事由が定められている必要があります。
では、2つ目の要件は何でしょうか?
2つ目の法的要件は、対象の労働者の行為が「客観的に合理的な理由」に関連するものと定められています(労働契約法第15条)。
客観的な合理的な理由、つまり労働者の行為が、就業規則に定められている懲戒事由に該当していなければいけません。
したがって、就業規則で規定されている懲戒事由に該当した場合のみ、懲戒処分を下すことができます。
もし就業規則に規定されていない事由で懲戒処分を下すのであれば、その権利を濫用したものとみなされ無効と判断されます。
3つ目の法的要件は、「社会通念上相当である」ことです(労働契約法第15条)。
つまり、社会的相当性がなければいけません。
懲戒処分を下すまでに他の手段の検討や実践をしたり、懲戒処分を下すまで適正な手続きが行ったり、などがされている必要があります。
雇用主の中には、懲戒処分のルールを守らないで、労働者に不当な処分を下すことがあります。
ですから、懲戒処分のルールを知っておくなら、自分に下された処分が適当か不当かを判断することが可能です。
では、懲戒処分のルールを確認してみましょう。
二重処罰の禁止とは、1回の問題行動に対して2回の懲戒処分を行うことはできないというルールです。
別名、一事不再理のルールとも呼ばれています。
つまり、過去に懲戒処分を受けたことのある労働者に対して再び懲戒処分を下す場合は、前回の懲戒処分と同じ問題行為を対象とすることはできない、ということです。
懲戒処分の相当性とは、懲戒処分の内容と問題行動を比較し、バランスに相当性がなければならないというルールです。
つまり、重すぎる懲戒処分は無効になります。
例えば、ある企業が、慰安旅行先の宴席でセクハラを理由に支店長を懲戒解雇したという事件がありました。
裁判所はセクハラ自体は事実と認めましたが、懲戒解雇は懲戒処分としては重すぎとし、懲戒解雇処分に無効を言い渡しました。
処分が軽すぎるなら、懲戒処分の目的を果たしませんが、このように重すぎる懲戒処分は不当な処分とみなされます。
ですから、もしも懲戒処分を言い渡された場合は、自分の問題行為に対する懲戒処分のバランスに相当性があるかどうかを確認しましょう。
前述したように、あらかじめ就業規則に明記する懲戒処分の規定は、各企業で作成するもの、つまり雇用主の裁量に任されています。
そのため、懲戒処分を受ける具体的場面と懲戒処分の種類には企業によって異なります。
それを踏まえたうえで、一般的な判断基準の目安と具体的な場面をみていきましょう。
1日の無断欠勤
業務上のミスについて、はじめて懲戒処分する場合 など
すでに戒告・譴責・訓戒などの処分や、始末書の提出をしているにもかかわらず、その行動に改善がみられない場合 など
職場内での暴力
重要な業務命令の拒否
職務放棄により、会社に損害を与えた など
セクハラやパワハラ
管理職による社内のルール違反
保険金の不正受給 など
業務上の横領や着服
14日以上の無断欠勤
強制わいせつに該当するような重大なセクハラ など
これらはあくまでも該当する規律の一例です。
自社の就業規則には、懲戒処分の種類や事由について何が明記されているのかをこの機会に確認してみましょう。
みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。