解雇予告手当の支払日はいつ?計算方法、払われないときの対処法

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監修者:みんなのユニオン 執行委員
岡野武志

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2020年10月1日以降の自己都合退職者は、失業手当の給付制限期間が短縮される変更があります。

企業が従業員を解雇するとき、30日前に解雇通知を送れなければ不足日数分の「解雇予告手当」を払わねばなりません。

ただ実際には、すぐに解雇予告手当を払ってもらえないケースが多々あります。

「次の給料日にまとめて支払う」などといわれたとき、受け入れなければならないのでしょうか?

実は解雇予告手当は、「解雇通知を行うと同時に払わねばならない」ルールになっています。

今回は、解雇予告手当の支払日や会社が支払わないときの対処方法を解説します。

解雇予告手当を解雇日に払ってもらえなかった方は、ぜひ参考にしてみてください。

解雇予告手当とは

解雇予告手当とは、雇用者が従業員を解雇するときに支払わねばならないお金です。

労働基準法では、雇用者が従業員を解雇するときには「30日前」に解雇予告をしなければならないと規定されています(労働基準法20条)。

ただ、どうしても30日前に解雇予告が間に合わないケースもあるでしょう。そこで法律では「30日前に解雇予告できなかった場合には、不足日数分の平均賃金を払わねばならない」と規定しているのです。

この「不足日数分の平均賃金」が、いわゆる解雇予告手当となります。

解雇予告手当は、「30日前に解雇予告を受けられなかった場合に雇用者が労働者へ払うべき手当金」といえるでしょう。

解雇予告手当の支払日

解雇予告手当の支払日はいつになるのでしょうか?

労働基準法では解雇予告手当をいつ支払うべきか、時期まで明確にされていません。

ただ行政通達により、解雇予告手当の支払日が明らかにされています。

解雇予告手当は、「解雇の申し渡しと同時」すなわち「解雇通知を行ったとき(解雇日)」に払わねばなりません。

支払日に関する具体例

解雇予告手当をいつ払うべきか、具体例でみてみましょう。

即時解雇する場合

解雇予告をせず即時解雇する場合、30日分の解雇予告手当を払わねばなりません。「即時解雇を申し渡した時点」で支払う必要があります。

20日後に解雇する場合

「20日後に解雇する」場合には、10日分の解雇予告手当を払う必要があります。

解雇予告手当の支払日は「20日後に解雇する」という解雇通知を送ったときです。

すなわち解雇の効果が発生する20日前に、先に解雇手当を払わねばなりません。

解雇通知と同時に10日分の解雇予告手当を支給しないと違法となります。

10日後に解雇する場合

「10日後に解雇する」場合には、雇用者は被用者に対し20日分の解雇予告手当を払う必要があります。解雇予告手当の支払日は「10日後に解雇する」という解雇通知を送った時点です。解雇の効果が発生する20日前に、先に解雇予告手当を払わねばなりません。

解雇通知と同時に20日分の解雇予告手当を払わなければ違法です。

このように、即時解雇以外のケースでは「解雇の効果が発生する前」に不足日数分の解雇予告手当を払わねばなりません。

企業側が先に解雇通知だけを行い「解雇予告手当は後で支払う」といった場合には違法となります。受け入れる必要はないので、早期に解雇予告手当の支払いを求めましょう

解雇予告手当の計算方法

実際に解雇予告手当を請求するには、解雇予告手当を正しく計算しなければなりません。

解雇予告手当の計算方法をみてみましょう。

解雇前3ヶ月分の賃金総額を求める

まずは解雇前3ヶ月分の賃金総額を計算します。

賃金総額は「源泉所得税」や「社会保険料」を控除する前の額面上の賃金合計額です。

ただし以下の金額は除外します。

  • 3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賞与
  • 結婚手当
  • 私傷病手当
  • 産休、育休、介護休業中の給与
  • 労災で休業中に支払われた給与
  • 試用期間の給与

解雇前3ヶ月の総日数を計算する

次に、解雇前3ヶ月の「総日数」を計算しましょう。

たとえば8月1日から10月31日であれば、31+30+31=92日となります。

ただし総日数からは、以下の日数を除外して計算しましょう。

  • 労災によって休業中の日数
  • 産休、育休、介護休暇で休業中の日数
  • 会社都合によって休業中の日数
  • 試用期間中の日数

賃金総額を総日数で割り算する

前の過程で計算された「賃金総額」を「総日数」で割り算します。これで1日あたりの平均賃金を算定できます。

たとえば3ヶ月分の賃金総額が120万円、総日数が92日であれば、1日あたりの平均賃金は13,043円となります。

最低賃金との比較

1日あたりの平均賃金を算定するとき、「最低賃金」を下回らないよう注意が必要です。

法律上、以下の金額が「最低賃金」とされるので、1日あたりの平均賃金がこれを下回ることは許されません。

最低賃金額=賃金総額÷解雇前の3ヶ月間の出勤日数×0.6

たとえば3ヶ月分の給与が120万円、3ヶ月の出勤日数が62日の方の場合、120万÷62日×0.6=11,612円を下回ってはなりません。

上記の具体例では1日あたりの平均賃金が13,043円だったので、最低賃金を下回らないといえます。よってこのケースでは、1日あたりの平均賃金を13,043円として算定します。

端数の処理

1日あたりの平均賃金を計算するとき、端数が発生するケースもあります。たとえば上記のケースでも120万円÷92日=13,043.4782…と計算されます。

この場合、小数点以下の端数は「切り捨て」で計算するルールとなっています。

よって1日あたりの平均賃金額は13,043円となります。

不足日数をかけ算する

1日あたりの平均賃金を算定できたら、不足日数をかけ算しましょう。

即時解雇なら30日分となるので、13,043円×30日=391,290円

10日前の解雇なら20日分となるので、13,043円×20日=260,860円

20日前の解雇なら10日分となるので、13,043円×10日=130,430円

解雇時期に応じて計算してみてください。

解雇予告手当と源泉徴収について

解雇予告手当にも所得税がかかります。「退職所得」扱いとなるので、支給の際には「源泉徴収」として20.42%の金額が差し引かれます。

ただし「社会保険料」の控除対象にはならないので、解雇予告手当から健康保険や厚生年金の控除は行われません。

また、企業側は解雇予告手当を払ったら、退職後1ヶ月以内に「退職所得の源泉徴収票」を作成して解雇した従業員へ交付しなければなりません。退職後、源泉徴収票が送られてこなかったら会社に問合せをしてみてください。

解雇予告手当を払ってもらえないときの請求方法

30日前に解雇予告してもらえなかったにもかかわらず、すぐに解雇予告手当が払われないなら、以下のように対応してみてください。

解雇予告手当を計算する

まずは解雇予告手当の金額を計算しましょう。直近3ヶ月分の給与明細書を用意し、上記で紹介した手順に従って正確に算定してみてください。

解雇予告手当の請求書を送付する

解雇予告手当の計算ができたら、会社宛に解雇予告手当の請求書を送りましょう。

請求書には以下の内容を記載します。

  • 会社が30日前に解雇予告しなかったにもかかわらず解雇予告手当を支給しなかったこと
  • 支払うべき解雇予告手当の金額
  • 解雇予告手当は解雇時に支給する必要があること
  • 解雇予告手当を即時に支給するよう求めること
  • 振込先の口座

会社が真摯に対応しないようであれば、内容証明郵便を使って請求書を送り、プレッシャーをかけてみてください。

交渉する

会社へ解雇予告手当の請求書を送ったら、交渉をしましょう。会社側がすんなり即時の支払いに応じるようなら問題はありません。

先延ばしにしようとしたり減額しようとしたりするなら、粘り強く対応してなるべく早めに全額払ってもらうよう要求してみてください。

労働基準監督署へ相談する

会社が解雇予告手当の請求を無視したり、支払を拒絶したりする場合も考えられます。

そういったケースでは、労働基準監督署へ相談してみましょう。労働基準法により、雇用者が被用者を解雇するときには不足日数分の解雇予告手当を払わねばなりません。違反すると罰則も適用されます。

労働基準監督署は、管轄域内の企業が労働基準法を守って運営しているかどうかを監督する機関です。労働基準法違反があれば、企業側へ勧告を行ったり調査に入ったり、場合によっては刑事事件として立件したりする可能性もあります。

労働基準監督署からの連絡があると企業側も真剣に対応する可能性があるので、有効な対処方法となるでしょう。

払われなければ労働審判を申し立てる

それでも解雇予告手当を払ってもらえない場合には、労働審判を申し立てる方法を検討してみてください。労働審判を利用すると、裁判所で会社側と話し合い、調整できない場合には裁判所が解雇予告手当についての審判を下してくれます。

会社側へ解雇予告手当の支払い命令が出たら、支払ってもらえるケースが多いでしょう。

(会社が審判に異議を申し立てると、裁判をしなければ支払われない可能性もあります)

労働組合に相談する

自分で対応するのに限界を感じたら、労働組合に相談してみてください。労働組合は、労働者の味方となって企業側へさまざまな申し入れをしたり交渉したりする組織です。

自社の労働組合が頼りにならない場合、会社を超えて活動する「ユニオン」を頼る方法があります。

「みんなのユニオン」では、全国の労働者の方から労働相談を受けて、企業側へ解雇の撤回や解雇予告手当不払いへの対応などを求めて団体交渉を行っています。

困ったときには、ぜひご相談ください。

弁護士に相談する

労働トラブルは弁護士に相談する方法も有効です。弁護士は法律の専門家なので解雇予告手当を正確に計算できますし、会社との交渉や労働審判、訴訟も任せられます。

困ったときにあなたの強い味方となってくれるので、1人で悩まずに早めに相談してみてください。

まとめ

解雇予告手当の支払日は「解雇通知を行った日」です。

  • 解雇予告手当を支給してもらえない
  • 除外認定を受けていないのに解雇予告手当が払われない
  • 解雇理由に納得できない

困ったときには泣き寝入りをせず、労働組合や弁護士の力を頼りましょう。

監修者


みんなのユニオン

執行委員岡野武志

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みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。