これってマタハラ?マタハラの慰謝料相場とは?

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監修者:みんなのユニオン 執行委員
岡野武志

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2020年10月1日以降の自己都合退職者は、失業手当の給付制限期間が短縮される変更があります。

マタハラとは、マタニティハラスメントのことで、職場における妊娠・出産、育児休業等に関するハラスメントのことをいいます。

事業主には、マタハラが行われないように防止措置をとることが義務づけられております。

万が一、マタハラを受けた場合は、使用者に対して、慰謝料請求等をすることが考えられます。

以下解説をします。

マタハラの基礎知識

まずは、マタハラについての法的規制等、基礎知識から説明します。

マタハラの法的規制について

マタハラの法的規制につきましては、労働法だけにはとどまりません。

男女雇用機会均等法9条3項、育児・介護休業法10条等では、妊娠・出産、産休・育休の取得等を「理由として」解雇等の不利益な取り扱いをすることを禁止しております。

また、男女雇用機会均等法11条の3、育児・介護休業法25条では、事業者に対してマタハラを防止するための防止措置が義務付けられています。

マタハラにつきましては、近時になり、法制度が整備されました。

【参考】:https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000611025.pdf

マタハラをされた場合について

男女雇用機会均等法や育児・介護休業法法に違反した会社の行為は、違法であり無効になります。

また、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法に違反したことにより直ちに不法行為が成立するものではありませんが、故意・過失等の検討をして、不法行為に該当する余地があります。その際は、慰謝料を請求することができます。

マタハラに対する慰謝料請求について

前述したとおり、マタハラを受けた場合は、そのことのみで慰謝料が発生するものではありません。

マタハラでは、職場の雰囲気や日々のちょっとしたやりとり等から起こりうるものです。そういった中では、言った言わない等のやりとりになる事も多々あります。

裁判になった場合は、不法行為の事実を立証しなければならないのは、労働者の側になりますので、マタハラの被害にあったことを証明する証拠を集めなければなりません。

マタハラの証拠としては、

  • 音声データ
  • メール等の画面
  • 周りの証言

などが考えられます。

また、マタハラの事実を特定するために、日時や場所、どのように言われたかなどはしっかりとメモをしておくようにして下さい。

マタハラの慰謝料相場について

次にマタハラについての慰謝料相場について解説をします。

前述のとおり、マタハラには、様々な態様があり、それにより、被った損害も異なってきます。

そのため、慰謝料の額を断定することはできませんが、慰謝料が認められた裁判例として次のようなものがあります。

高額な慰謝料請求が認められた事案

この事案では、慰謝料として、250万円の額が認められました。

以下に説明するように、原告の精神的損害はとても大きかったものといえます。

1 事案の紹介

平成14年3月13日の大阪地判の裁判例を紹介します。

この事例の原告(マタハラを受けた被害者)は、幼稚園の教諭でした。

原告は、妊娠をした後、内縁の夫と一緒に住むことになったため、本来であれば住所変更を届けなければなりませんでしたが、その届出を幼稚園にしておらず、通勤手当を余計にもらっていました。

そのことが、後に被告である幼稚園の理事にばれたのですが、その際に被告から軽率であると非難されると共に、中絶を勧められました。

それに加え、被告は原告に対して、産前休暇等の取得が困難である旨伝え、退職をするよう勧めました。

また、原告は、その後、流産をしたため、職場復帰を求めたところ、被告からは退職を強要されました。

この事案では、解雇の有効性等も問題になりましたが、ここでは慰謝料に限定して説明をします。

2 慰謝料について

裁判所は、被告による中絶勧告、退職強要等は、男女雇用機会均等法8条の趣旨に反するとして、不法行為責任を認め、慰謝料として250万円、弁護士費用として30万円が認められました。

この事案では、被告の行為の悪質性、原告の損害の被った大きさに着目し、多額の慰謝料が認められました。

成果報酬額の減額を目安にして慰謝料が定められた事案

この事案でも不法行為が認められましたが、その金額は、実際に被った損害をベースに判断されました。

1 事案の紹介

東京高判平成23年12月27日は、原告が、育児休業後に復職した際に、担当職務を変更された上、減給された事案です。

原告は、会社の人事措置等が妊娠・出産をして育児休業等を取得した女性に対する差別ないし偏見に基づくと主張し、慰謝料等の請求をしました。

2 慰謝料について

この裁判例でも慰謝料だけを求めているものではありませんが、裁判所は、被告に対し、慰謝料30万円弁護士費用30万円の合計60万円の支払いを命じました。

この裁判例では、原告の成果報酬金額が担当職務を変更されたことにより、約30万円低下していたことから、慰謝料額としても30万円が妥当であると判断をしました。

なお、この裁判例では、減給された差額の請求も認容されています。

この2つの裁判例のように、慰謝料額というのは、その事案によって全く異なってきます

マタハラに該当する具体例について

最後に、マタハラの具体例について説明をします。

マタハラをされた場合、最初から慰謝料を求めていくのでは無く、不利益な取り扱いを辞めるよう訴えていくのが直接的であるかと思います。

ここでは、マタハラの具体例を挙げます。

制度利用を理由とする昇給・昇格等における不利益取り扱い

まず、賃金については、ノーワーク・ノーペイの原則があり、労働時間の短縮に応じて賃金を減額すること自体は問題ありません。

しかしながら、労働時間の短縮に相当する日数を超えて働かなかったものとして扱うことは、不利益取り扱いに該当しますので違法・無効になります。

裁判例では、時短制度を利用していた者に対する昇給抑制について、時短制度を利用していることを考慮することは、不当ではないものの、一律の昇給抑制について合理性は乏しく、時短制度の利用を躊躇させ育児・介護休業法23条の2の趣旨を実質的に失わせるおそれがあるとして、不利益取り扱いに該当するとされたことがあります(H東京地判平成27年10月2日参照)。

制度利用等に伴う退職勧奨等

妊娠判明後に合意退職をしたかどうかが争いになった裁判例では、女性労働者につき、妊娠中の退職の合意があったか否かについては、特に当該労働者につき自由な意思に基づいてこれを合意したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか慎重に判断する必要があると判断しました(東京地判平成29年1月31日)。

このように、マタハラが原因では無いと考えられる場合でも、真に退職合意があったかは慎重に検討をされています

制度利用等に伴う嫌がらせ

制度利用等に伴い嫌がらせをされることも考えられます。

裁判例では、介護施設を経営する会社で介護職員として勤務した女性従業員が妊娠を報告したにもかかわらず、営業所長が業務軽減等の措置をとらなかったことについて、慰謝料として35万円が認められたものがあります(福岡地判平成28年4月19日)。

最後に

以上、マタハラについて説明をしてきました。

マタハラによる不利益に対しては、慰謝料請求以外にも様々な方法が考えられるところですので、マタハラを受けていると感じている方は、一度専門家にご相談をすることをおすすめします。

監修者


みんなのユニオン

執行委員岡野武志

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みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。