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マタハラとは、マタニティハラスメントのことで、職場における妊娠・出産、育児休業等に関するハラスメント、または妊娠・出産・育児休業を理由とする不利益取り扱いのことを指します。
もしも職場でマタハラを受けた場合、行為の程度によっては慰謝料を請求することが可能です。
さらにマタハラの直接の加害者だけではなく、会社相手にも慰謝料を請求することができます。
この記事ではマタハラによる慰謝料請求について、その条件と慰謝料の金額相場について解説していきます。
目次
マタハラで慰謝料を請求するには、マタハラ行為がなんらかの法律で禁じられた違法行為(不法行為)であることが必要です。
マタハラには以下の2種類があります。
ではそれぞれ、どのようなマタハラが違法行為となるのか、確認していきましょう。
妊娠・出産・育児休業に関するハラスメントとは、具体的には以下のような行為を指します。
おおよその類型として、産休や育休など制度利用をすることに対する嫌がらせ・妊娠や出産している状態への嫌がらせ・妊娠や出産を理由とする不利益取り扱いの示唆などが含まれます。
妊娠・出産・育児休業を理由とする不利益取り扱いとは、具体的には以下のような行為を指します。
いわゆる「不利益な取り扱い」の典型例とは、解雇や契約更新をしないこと、派遣切りすること、労働契約の内容を不利に変更すること、人事考課で不利益な評価を行うこと、賃金が著しく下がる配置転換を行うことなどが挙げられます。
さらに実際の裁判例では、時短制度を利用していた者に対する昇給抑制(東京地判平成27年10月2日)、妊娠したのにもかかわらず業務軽減等の措置がとられなかったこと(福岡地判平成28年4月19日)について、「不利益取り扱い」であると認めた事例があります。
マタハラの2つの類型は、それぞれ以下の法律に違反します。
妊娠・出産・育児休業 に関するハラスメント | 会社がハラスメントの防止措置をとらないことが 育児・介護休業法25条、 男女雇用機会均等法11条の2に違反 |
妊娠・出産・育児休業 を理由とする不利益取り扱い | 不利益取り扱いを行うことが 育児・介護休業法10条、 男女雇用機会均等法9条3項に違反 |
注意が必要なのは、ハラスメント行為の防止措置を会社がとらないことは違法ですが、ハラスメント行為そのものが違法となるとは限らないことです。
ハラスメント行為が暴力や侮辱的な言動を伴い、それによって労働者が身体・精神的苦痛を受けたといえるような場合は、慰謝料の請求が可能です。
実際のところ、マタハラで常に慰謝料を請求できるとは限りません。
ですが慰謝料請求のほかにも、マタハラ被害者が救済されるいくつかの方法があります。
まず、マタハラとなる不利益な取り扱いは原則として違法・無効となります。
そこで違法であることを主張して、解雇や減給といった不利益な取り扱いを無効とし、もとの労働条件で働き続けることが考えられます。
さらに慰謝料請求が難しくとも、会社との交渉次第では謝罪やマタハラ行為をやめるよう要求できたり、和解金や解決金という名目で金銭を受け取ることも可能です。
より有利な解決を目指すのであれば、弁護士やユニオンなどの力を借りて解決策を相談するのがよいでしょう。
それでは、実際の裁判例を参考に、マタハラの慰謝料相場がいくらか検討していきましょう。
一般的に、マタハラの慰謝料相場は数十万円程度であると言われています。
少ないように感じられるかもしれませんが、未払い賃金などの請求が認められると慰謝料は低くなる傾向があることが原因の一つです。
また、行為態様が悪質である場合・被害者が精神疾患に罹患する、退職に追い込まれるなど被害が甚大な場合、より高額な慰謝料が認められやすくなります。
この事例は、幼稚園教諭である労働者が妊娠をしたことを批難され、中絶するよう要求され、結果的に流産したうえにその後も退職を強要されて解雇された、というものです(大阪地判平成14年3月13日)。
そのような中絶勧告、退職強要等は、男女雇用機会均等法の趣旨に反するとして、解雇を無効とすると共に慰謝料250万円の請求を認容しました。
マタハラ加害者の行為が中絶をするよう要求するなど極めて悪質であること、被害者が結果的に流産するなど被害が甚大であることから、相場からすれば非常に高額な慰謝料が認容されました。
この事例は、医療施設で働く労働者が妊娠中の軽易業務への転換を契機として降格され、育休からの復帰後も元の役職に戻ることができなかった、というものです(最判平成26年10月23日)。
降格について労働者の自由意思に基づく承諾や十分な検討があったとは言えないこと、労働者の不安を払拭するような説明が無かったこと、労働者が職業人としての誇りを傷つけられ、裁判期間中に退職していることなどから、慰謝料100万円の請求を認容しました。
ポイントは、妊娠や出産を直接の理由とする不利益取り扱いでなくとも、それら事象を「契機として」行われた不利益取り扱いについては、違法となる余地があるということです。
厚生労働省の指針として、妊娠・出産・育児休業終了から1年以内の不利益取り扱いについては、妊娠・出産・育児休業を「契機として」いると判断されることが示されています。
この事例は、育休明けに職場復帰を申し入れた労働者が、インド転勤か大幅に賃金の下がる職務への配置転換を提示され、それを断ったところ解雇されたというものです(東京地裁平成29年7月3日)。
特段の予告もないまま、到底受け入れがたい職務を提示され、解雇を敢行されたことにより労働者の被った精神的苦痛は大きいとして、慰謝料50万円の請求が認められました。
また、解雇理由として「職務命令違反や勤務態度、協調性」などが挙げられていましたが、それまで大きな問題点として注意されたことが無かったことなどから、客観的に合理的な解雇理由が認められないとして、解雇も無効と判断しました。
この事例は、妊娠したことで業務軽減を申し出た労働者に対し、「妊婦として扱うつもりはない」「万が一何かあっても働く覚悟があるのか」などの言動があったというものです(福岡地判平成28年4月19日)。
この発言について嫌がらせの意図があったとは認められないとしたものの、業務の軽減を許さない、流産しても構わない覚悟を持って働くべきと受け取ることもできるとして、慰謝料35万円の請求が認められました。
この事例は、産休ならびに育休を取得した労働者に対して嫌がらせがあり、当該労働者は精神疾患で休業し、最終的に懲戒解雇されてしまったという事案です(名古屋高判平成30年12月17日)。
この事案においては有給休暇取得の拒否、朝礼でたとえ話を用いて吊し上げを行い労働者を孤立させようとしたことなどから、慰謝料50万円の請求が認められました。
みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。