会社都合の減給は認められてるの?違法な減給とは?

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監修者:みんなのユニオン 執行委員
岡野武志

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2020年10月1日以降の自己都合退職者は、失業手当の給付制限期間が短縮される変更があります。

ある日突然、「業績不振だから今月から給与が減給されてるからね」とか、「あなたは能力が低いから、来月から減給ね」などと、雇用主から会社都合の減給を一方的に言われることがあります。

労働者としては、仕事のやる気を損なう通知ですよね。

実際、新型コロナウイルス感染症の影響で多くの企業が経営不振の煽りを受け、リストラやボーナスカットをしています。

そのため、会社都合の減給は正当なものだと考えがちですが、それは違法行為にあたる可能性があります。

では、減給の定義をはじめとし、違法でない減給ケースと違法性の高い減給ケースをみていきましょう。

減給の基礎知識|減給の基本原則

雇用主から一方的に減給を通知されると、「会社の業績不振による減給は、会社側のマネジメント能力の問題なのに、どうして減給されるのだろう」「自分は無遅刻無欠席でしっかり働いているのに、なぜ減給されるのか?」など、疑問や怒り、不安を感じますよね。

一方的な減給は違法の可能性が高いですが、雇用主から通知された減給の違法性を問うためには、減給に関する正しい基礎知識が必要です。

そもそも労働基準法では、減給についてどのように定義しているのでしょうか?

減給とは?

減給とは、懲戒処分のひとつです。

懲戒処分とは、労働者が会社に不利益を生じさせたり、就業規則を違反したりなどの行為をしたときに科される制裁のことで、以下のような場合に減給処分をされる可能性があります。

  • 機密情報を漏洩したとき
  • 会社の名誉や信用を傷つける行動をしたとき
  • 業務命令や業務指示に従わないとき
  • 無断欠勤や遅刻を繰り返したとき

このような行為を繰り返さないための罰のひとつとして、懲戒処分による減給が行われます。

減給には上限がある

労働基準法第91条では、減給の上限について以下のように明記しています。

「就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。」

要するに懲戒処分による減給処分の上限は、

  • 1回の制裁で減給できる金額は、日給の半分まで
  • 減給金額の合計は、給与の1割が上限

ということです。

つまり、雇用主が過剰な罰を下さないよう、法律が労働者を保護しているのです。

ですから、不当な理由による大幅な減給処分は、違法行為とみなされます。

就業規則に「懲戒処分」が規定されている

懲戒処分による減給は、就業規則の懲戒の項目に、あらかじめその理由が記載されている場合のみ有効となります。

これも労働者を守るためのルールです。

ですから、雇用主から減給処分を通知されたなら、以下の点を確認してください。

  • 就業規則に懲戒処分としての減給が規定されているかどうか
  • 懲戒処分事由が明記されているかどうか 
  • 減給を通知された理由が、懲戒処分事由に該当するかどうか

就業規則に懲戒処分による減給が規定されていない場合の減給は、違法行為です。

つまり、雇用主の気分や会社の業績による一方的な減給は、雇用主による不当行為と言えます。

就業規則の変更は双方の合意が必要

「うちの雇用主は、減給を言い渡すために就業規則を変更するかもしれない」と不安を感じる方もいるかもしれませんが、安心してください。

雇用主が一方的に就業規則を変更できないよう、法律が労働者を保護しています。

労働契約法第9条には、「使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。」と定めています。

例外もありますが、原則的に、雇用主の一方的な自己判断で就業規則を変更することは禁止されており、変更する場合は労働者と合意しなければいけません。

違法ではない減給の代表的な5つのケース

減給の通知を受けて嬉しい人はいないですよね。

むしろ、疑問や不安などで落ち込んでしまいます。

でも、法的に問題のない減給であれば、その現実を受け止めなければいけません。

では、違法ではない減給とはどのようなものなのでしょうか?

具体的なケースを5つみてみましょう。

歩合制の労働契約で給与が減った場合

給与形態が、成功報酬などの歩合制が採用されている場合は、毎月の給与額に変動があります。

つまり、成果次第で給与が増減する給与形態を合意の上契約しているはずです。

ですから、給与が減ったとしても減給とは言いません。

降格による役職手当の減額処分の場合

懲戒処分にはいくつかの種類があり、降格による減額という措置もそのひとつです。

役職が引き下げになれば、それに伴い役職手当の金額も変わる、つまり減ります。

あらかじめ役職ごとの手当金額が明示されているなら、役職手当の分の給与が減ることは正当なことであり、法的な問題は一切ありません。

部署移動や配属替えによる減給の場合

部署の移動や配属替えのため、減給されることがあります。

就業規則などに「職務や勤務地によって、基準となる賃金が異なる」などの旨が規定されている場合は、基本給が変更されたとしても、違法性のある減給にはなりません。

人事評価に基づき減給された場合

人事評価制度に基づき、人事評価の結果として減給された場合も、違法性のない減給です。

能力や成績などが至らないと判断されたとしても、人事評価制度に基づいた正当な結果であれば、労働者はその事実を受け止めなければいけません。

双方合意の上で減給した場合

雇用主と労働者の双方が納得した上での減給であれば、違法性ありません。

例えば、自ら役職や責任の立場を手放したり、事情により転勤できなくなったりなど双方で話し合った結果、減給となったのであれば、労働者も納得していることでしょう。

違法の可能性の高い減給ケースと対処法

正当な減給があるのに対し、違法な減給もあります。

違法な減給であれば、労働者には全く非がありません。

雇用主に減給された分を請求することも可能です。

では、違法性のある減給の具体的なケースをみていきましょう。

就業規則に規定されていない減給

雇用主は、就業規則に基づいて懲戒処分を実施することが可能です。

その逆を言えば、就業規則に懲戒処分の旨が記載されていない場合は、雇用主には懲戒処分の権利はありません。

ですから、減給処分に納得できないなら、まずは就業規則に懲戒処分の性質のある減給の規定が記載されているかどうかを確認してみましょう。

また、就業規則には、減給する根拠や理由など懲戒処分事由も記載することが求められています。

自分の行為は懲戒処分事由に該当するかどうかも確認してください。

就業規則には減給処分の旨が記載されていない、もしくは懲戒処分事由に該当しない場合は、違法の減給と言えます。

会社の業績不振による一方的な減給

会社の収益は、景気や時世の影響を受けて悪化することも珍しくありません。

しかし、会社の経営難を理由に、一方的に減給を通知された場合は違法です。

なぜなら、雇用主と労働者は、労働契約を結んでいるからです。

そして、雇用主は、労働者の同意なしに、一方的に契約内容を変更することはできません。

労働契約法第9条には、「使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。」と定められています。

つまり、雇用主と労働者双方の合意がなければ、賃金に関する規定が含まれる就業規則を変更することはできません。

したがって、業績不振などによる会社都合の一方的な減給は違法とみなされます。

不当な配置転換による減給

業務を遂行する上で、会社は労働者に配置転換を命ずることが原則として認められています。

しかし、業務上必要のない配置転換、業務上必要であったとしても不当な目的のための配置転換、労働者に不利益を被る配置転換は認められていません。

つまり、減給を目的とした配置転換命令は、違法行為にあたります。

減給を通知されたときにすべきこと

雇用主から減給を通知されたなら、まず就業規則に懲戒処分として減給が規定されているか、また、懲戒処分事由が明記されているかどうかを確認しましょう。

そして、自分の減給が正当なものか、それとも違法性の高いものか検討してください。

もし会社の一方的な都合による減給であれば、それは不当な減給であり無効です。

不当な減給だと感じた場合は、弁護士などの専門家に相談してみましょう。

監修者


みんなのユニオン

執行委員岡野武志

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みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。