不当解雇・退職勧奨の
お悩みお聞かせください
※受付のみの時間帯がございます
会社が労働者を解雇する場合、30日以上前に予告する必要があります。30日以内にやむを得ず解雇しなければならない場合、会社は労働者に解雇予告手当を支払う必要があります。
この記事では、解雇予告手当の前提となる平均賃金と解雇予告手当、それぞれの計算方法を解説します。
目次
解雇予告手当の計算方法は次のとおりです。
平均賃金×解雇予告期間(30日より前)に足りなかった日数
この項では、上記の式の構成要素である「平均賃金」の算出方法を解説します。
平均賃金は労働基準法でこのように定義されています。
第十一条 この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。
第十二条 この法律で平均賃金とは、これを算定すべき事由の発生した日以前三箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいう。
労働基準法
とはいえ、「これを算定すべき事由の発生した日以前三箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額」と言われてもイメージしづらいと思います。次項で解説します。
「これを算定すべき事由の発生した日」とは、解雇予告手当の計算をする場合、労働者が解雇通告を受けた日です。
「三箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額」とは、平たく言うと過去3ヶ月分のお給料のことです。源泉徴収税などが引かれる前の支給額のことを指します。
最後に「賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額」ですが、これは過去三ヶ月間の賃金をその期間の総出勤日数で割った金額のことです。
ここまでをまとめると、解雇通告を受けた日の直前から過去3ヶ月のお給料を、過去3ヶ月間の総出勤日数で割った金額が平均賃金なのです。
平均賃金には「原則」と「最低額保障」の2つがあり、両方計算して高かったほうが最低賃金となります。
具体的な計算方法を見ていきましょう。
この項では、実際に平均賃金を計算してみましょう。例として、次の条件を想定します。
9月(09/01~09/30) | ¥250,000 |
8月(08/01~08/31) | ¥250,000 |
7月(07/01~07/31) | ¥250,000 |
まずは直近3ヶ月の賃金の合計を出します。
¥250,000+¥250,000+¥250,000=¥750,000(①)
次に、直近3ヶ月の総日数を足します。この場合は、07月01日~09月30日のことですね。
30日+31日+31日=92日(②)
最後に、直近3ヶ月の賃金の合計(①)を直近3ヶ月の総日数(②)で割ります。その解が平均賃金です。
¥750,000÷92日=¥8,152.173…
上記のように端数が出た場合は、銭以下は切り捨てます。原則の計算結果は8,152円17銭(A)となりました。
続いて、最低保障の計算をしてみましょう。
最低保障の計算は、賃金の一部または全部が、時間給・日給・出来高の場合はこの計算を行います。
直近3ヶ月の賃金の合計を出すところまでは、原則の計算と同じです。
最低保障を計算する場合は、次に直近3ヶ月の労働日数の合計を出します。
例えば、
という場合、22日+18日+20日=60日(③)となりますね。
最後に、直近3ヶ月の賃金の合計(①)を直近3ヶ月の労働日数の合計(③)で割った金額の60%が最低賃金となります。つまり、以下のような計算式になります。
¥750,000÷60日x0.6=¥7,500
最低保障の計算結果は¥7,500(B)となりました。
原則(A)と最低保障(B)を比べ高いほうが最低賃金です。
この場合なら、原則(A)の8,152円17銭が最低賃金となるわけです。
これを元に、解雇予告手当を算出してみましょう。
最低賃金の計算ができてしまえば、解雇予告手当の計算は簡単です。
冒頭で紹介しましたが、解雇手当の計算式をおさらいしましょう。
平均賃金×解雇予告期間(30日より前)に足りなかった日数
前項の設定を元に、実際にに早速計算してみましょう。
今回の設定は「10月30日付の解雇」と10月20日に通達されたというものでしたね。
つまり、本来30日前に通知しなければいけないところ、10日前の通知だったわけです。この場合、30日-10日=20日が「解雇予告期間(30日より前)に足りなかった日数」の部分にあたります。
この記事で算出した数字を、解雇予告手当の計算式にするとこうなります。
平均賃金8,152円17銭×解雇予告期間(30日より前)に足りなかった日数20日
=165,043円2銭
※銭単位は現実には支払いできませんので、50銭未満は切り捨て、50銭以上は繰り上げとなります。
つまり、この場合の解雇手当は165,043円となります。
気になるのは、解雇予告手当が支払われるタイミングだと思います。
厚生労働省は【リーフレットシリーズ労基法20条】の「解雇する際の手続き」中で、解雇の予告を行わない場合は、解雇と同時に30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払うとしています。
【参考】https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/dl/140811-1.pdf
つまり法律上は、即日解雇であれば当日、30日以下の解雇通知であれば予告日に解雇予告手当を支払う必要があるのです。
突然の解雇通達をされると、パニックに陥ってしまうことも考えられます。
とはいえ、前述した支払のタイミングが守られない場合は違法性が高いため、すぐに所轄の都道府県労働局賃金室または労働基準監督署に相談しましょう。
また、解雇の際は解雇予告手当だけではなく解雇理由証明書の交付も合わせて求めておくと、後々のトラブルの際に役立ちますので、合わせて請求しましょう。
(突然の解雇でお困りの方に向けた記事はこちらです。ぜひご覧ください)
なお、万が一会社が解雇予告手当を支払わない場合、労働者は労働基準法第114条に基づき、解雇予告手当の2倍の金額を請求することができます。
参考:https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=322AC0000000049
非常に限定的なケースですが、解雇予告手当の支給が不要とされている場合もあります。具体的には、以下の4ケースがそれにあたります。
上記は解雇予告手当の対象ではない旨が労働基準法第21条に明記されているからです。
参考:https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=322AC0000000049
正しい知識を身につけておけば、万が一の際にも冷静に正しく対応できるようになります。
突然の解雇にあってしまった場合にも、セーフティネットを活用すれば生活が困窮することを防ぐことができます。労働者の生活を守るためにいくつもの制度が用意されており、その1つが解雇予告手当です。困ったときは適切な手続きをとり、自分の生活を守りましょう。
なお、解雇自体に納得していない(それを望んでいない)場合は手当の申請など退職を前提とした手続きを進めてしまうと不利になることも。安易に手続きに進むのではなく、納得と冷静な判断のうえで申請を行いましょう。
みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。