不当解雇・退職勧奨の
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会社から強引な退職勧奨を受けて納得いかないまま退職届を書いてしまった場合、会社に慰謝料請求ができるのでしょうか。
今回の記事では、会社に対して退職強要で慰謝料を請求できる要件と請求方法、注意すべき点について解説します。
目次
会社が従業員に辞めてもらうために行う行為は、解雇、退職勧告、退職強要などです。解雇については、法律に定める要件を満たせば有効ですが、法律に違反すれば不法行為として損害賠償請求の対象になる可能性があります。
では、退職強要や退職勧告についてはどうでしょう。これらが不法行為や損害賠償請求の対象になるのか、について解説します。
退職強要とは、会社が従業員の意思を無視して辞職を強く迫る行為です。会社が何回も退職面談を繰り返したり、従業員に精神的な苦痛を与えるような暴言を吐いたりするケースなどが該当します。
会社が辞めてほしい従業員に対して退職を促す行為、すなわち退職勧奨を行うことは法律上禁止されているわけではありません。また、会社の退職勧奨によって従業員が納得して退職した場合、損害賠償請求をすることはできません。
しかし、退職勧奨が行き過ぎて、従業員の意思に反した退職を無理やり押し付けようとすると退職強要と判断され、不法行為になる可能性もあります。
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不法行為については民法に定めがあり、下記要件に該当するケースをいいます。
(※1)故意:結果に対する認識があること
(※2)過失:一般的に行うべき注意を欠いたため結果に対する認識がないこと
(※3)損害は財産的なものだけでなく精神的なものを含む
民法では、不法行為があれば損害賠償(慰謝料)責任が生じると定められています。
民法第709条【不法行為による損害賠償】
「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」
つまり、退職強要が不法行為に該当すれば、従業員は会社に対して慰謝料を請求できるということです。
従業員が会社に対して慰謝料を請求するためには、会社の行った行為(退職強要)が不法行為に該当することを証明しなければなりません。
注意してほしい点は、退職強要があったというだけでは必ずしも不法行為とはいえないということです。それでは、不法行為だと証明する基準はなんでしょうか。
退職強要が不法行為であると判断するには、会社が行った行為が「故意や過失」であること、「従業員の権利や利益の侵害」があったことを証明しなければなりません。
下記ケースでは、会社の行為が「故意や過失」であると判断できるでしょう。
もし、会社の行為が強迫や詐欺、錯誤に陥らせる欺罔行為に該当する場合は、違法性がより明確で、退職の取り消しや無効も可能となります。
また、「従業員の権利や利益の侵害」に該当するのは下記のケースです。
退職強要の判例として有名な下関商業高校事件(昭和55年7月10日最高裁判決)では退職強要が不法行為とされ、不法行為を行った市などに対し損害賠償命令が出されました。
男性教諭2人は、退職勧奨の基準年齢(57歳)になったことを理由に、初回の勧奨以来一貫して応じないと表明しているにもかかわらず、市の職員から執拗に退職を勧奨された。退職勧奨を行った市などに対し、違法な退職勧奨により被った精神的な損害として各50万円を賠償。
この事件では、下記のような退職勧奨が行われていました。
昭和40年度末から毎年、学校長等から2~3回にわたり退職勧奨
昭和44年度末には、勧奨に応じない旨を表明しているにもかかわらず、計10回以上、職務命令として市の教育委員会への出頭を命じられた
市の教育委員会では、1人~4人から20~90分にわたって勧奨されたり、優遇措置もないまま退職するまで勧奨を続けると言われた
教諭らの要求する代理人の立会いも認められなかった
市などの退職勧奨は、下記の点を総合的に判断し「労働者の自由な意思決定を妨げ」「精神的な損害を与えた」として不法行為と認定されました。
会社に不法行為があったと主張するためには、会社関係者の取った行動や発言の記録が重要になります。裁判でも直接交渉する場合でも、会社が不法行為を行ったことの証拠になるからです。具体的には下記のようなものが考えられます。
客観的な証拠として録音データや会社の文章、メールの方が有効ですが、ない場合は、会社関係者の発言や行動をできるだけ詳細にメモするようにしましょう。
また、就業規則や雇用契約書、離職票なども証拠として使える場合があります。
慰謝料の相場は数十万から100万円くらいと言われますが、状況によって様々です。また、パワハラ行為やセクハラ行為が認められた場合、慰謝料は高額になる傾向があります。
それでは、会社に対してどのようにして慰謝料を請求するのでしょうか。主な請求方法は下記の通りです。
不法行為を理由に、従業員が会社に直接、慰謝料を請求する方法があります。第三者を介さないことで、費用や時間をかけずに交渉できるのがメリットです。
ただし、従業員側は専門知識がない点を突かれたり、大人数の会社関係者を相手にする場合は人数で圧倒されるリスクも考えられます。
どの方法でもメリット・デメリットはありますが、会社と直接交渉する場合は立会人に参加してもらうことをおすすめします。交渉が難航したり、裁判に切り替わったりした場合に、交渉経緯などを客観的に証明してもらえるメリットがあります。
労務問題に詳しい弁護士に依頼して交渉してもらうという方法もあります。会社・従業員の権利・義務をよく理解している専門家に任せるので安心です。しかし、費用や弁護士選びが必要であるため、弁護士への依頼をためらうケースもあるでしょう。
会社の労働組合に相談するのが有効な場合もありますが、中小企業の場合は、組合がなかったり、あまり機能していないケースも考えられます。
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労働審判は、裁判官と労使の代表により3回以内の話し合いで問題解決を図る制度です。裁判と比較して、費用や手続きの面で負担が少ないことがメリットです。
ただし、労働審判には強制力がないため双方の同意が得られなければ、結局は裁判になってしまいます。また、労働審判は3回しか行わないため、不法行為を立証するに至らないケースも考えられます。
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時間と費用はかかりますが、会社の行った行為が不法行為に該当するかどうかを裁判官が詳しく検証し、公正な立場で判断してもらうことができます。判決には強制力があるので、不満があっても会社は判決に従わざるをえません。
また、直接交渉をしたが物別れになるなど、ほかの方法では解決できない場合、裁判が最終的な解決手段となります。
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みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。