残業は法律上何時間まで?|36協定と長時間残業の対処法

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監修者:みんなのユニオン 執行委員
岡野武志

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2020年10月1日以降の自己都合退職者は、失業手当の給付制限期間が短縮される変更があります。

残業や休日出勤など本来の勤務時間以上に超過勤務を多くしていると、会社はそもそもこんなに残業をさせていいものなのか?と思いませんか?

労働者の健康を守るためにも残業をさせる時間には上限があり、これは法律等で規定されています。

このページでは何時間まで残業の指示に従わなければならないか、上限を超えている場合の処理などについてお伝えします。

残業の上限に関する法規制

まず、残業に関する法規制を確認しましょう。

残業は時間外労働として早出・休日出勤と併せて規制されている

まず「残業」という言葉はあくまで一般的な用語にすぎず、法律上は1日または1週の法定労働時間以上の労働のことを「時間外労働」と呼んでいます。

ですので、本来の労働時間を過ぎても働く残業のみならず、早く出てきて働く早出も時間外労働に含まれ、休日も働く休日出勤の時間も併せて上限が設定されています。

【労働基準法】労働時間は何時間まで?

まず大前提として、労働基準法においては以下のように労働時間が制限されています(労働基準法32条)。

  • 労働時間は1日8時間、及び1週間あたり40時間まで
  • 最低でも週1日の法定休日

この制限に従うのであれば、1日8時間労働を平日5日間行ってしまうと、労働時間の上限に達してしまうこととなります。

しかし実際は、ほとんどの企業が1日8時間以上、または1週間あたり40時間以上、労働者を働かせています。

このようなことが可能なのは、使用者と労働者の間で、労使協定という個別の合意が結ばれているためです。

残業に必要な「36協定」とは?

36協定(読み:さぶろくきょうてい)とは、労働基準法上の制限を超えて時間外労働や休日出勤をさせるのに必要な労使協定です。

時間外労働・休日労働についての規定が労働基準法36条にあるため、こう呼ばれています。

具体的な内容としては、時間外労働の対象となる仕事内容・対象となる労働者数・1日/1ヶ月/1年あたりの延長できる労働時間などを具体的に定めなければなりません。

36協定を結んで労働基準監督署に届け出をせずに残業をさせることは、労働基準法違反となります。

【36協定】残業は何時間まで?

36協定があっても無制限に残業させられるというわけではありません。

2019年の労働基準法改正により、36協定を結んでいる場合の残業について、以下の上限が設けられました。

  • 残業は原則月45時間まで・年間360時間まで
    (1年単位の変形労働時間制の場合、月42時間まで・年間320時間まで)

この制限を超えることができるのは、予見できない業務の増加など「臨時的な特別の事情がある場合」に限られます。

その場合であっても、以下の限界を超えて残業させることは認められていません(労働基準法36条5項、6項)。

  • 時間外労働(休日労働含む)が年間720時間を超えてはならない
  • 時間外労働(休日労働含む)が月間100時間を超えてはならない
  • 2~6ヶ月の平均時間外労働が80時間を超えてはならない
  • 月45時間を超える時間外労働をさせられるのは、年間6ヶ月まで

月100時間以内・2~6ヶ月の平均時間外労働80時間以内の制限については、一般的に過労死ラインと呼ばれています。

これらを超える残業を行わせることは、労働基準法の重大な違反行為となります。

労働時間の上限を超えて働かせた場合のペナルティ

では労働時間の上限を超えて働かせた場合、会社側にはどのようなペナルティがくだされるのでしょうか。

会社は行政指導の対象になる

労働時間の上限は労働基準法に規定があるものですので、その違反に対しては行政指導の対象になります。

労働基準法違反については労働基準監督署が取り扱っており、注意や指導、是正勧告、立ち入り検査などが行われる場合があります。

残業させることで刑事罰を受ける

上限を超える残業をさせる労働基準法36条6項の違反については、労働基準法119条1号において刑事罰が規定されています。

具体的には懲役6ヶ月以下又は罰金30万円以下の刑が科せられることになっています。

長時間の残業で慰謝料請求ができることも

もしも長時間労働が原因で病気を発症したような場合には、会社に対して慰謝料請求ができる場合もあります。

なぜなら、会社には労働者が健康に働けるよう環境を整える義務があり(安全配慮義務)、長時間残業させることはその義務を怠ったとして不法行為となるためです(民法1条2項、709条)。

さらに病気にとどまらず、過労死・自殺などの結果をもたらした場合には、数百万円単位の慰謝料請求が認められることが多くなっています。

さらに長時間の残業については、心身に不調を来していないような場合でも損害賠償を認める判決が下級審でいくつか出されています。

2019年9月26日長崎地裁大村支部で下された判決では、2年間月90時間以上、多い月には160時間を超える長時間残業をしていたケースで、体調不良を認めていなくても30万円の慰謝料の支払いを命じました。

また、2020年6月10日東京地裁で下された判決では、約1年半30時間~50時間の残業をさせたことに対して10万円の慰謝料の支払いを命じています。

違法な長時間残業にはどのような手段を講じれば良いか

では違法な長時間残業を会社に強いられている場合にはどのように対抗すれば良いでしょうか。

社内の人事や内部通報の担当者に連絡をする

まず、会社の人事の担当をしている人や、社内でコンプライアンスなどの一環として内部通報などを取り扱っている部署の方がいれば、その担当者に連絡をしてみましょう。

社内の特定の部署や本社から離れた営業所においてタイムカードを切った後に残業をするように指示しているなどして、人事やコンプライアンス担当が残業時間の上限を超えていることを把握していないような場合があります。

人事やコンプライアンス担当がこの事実を把握して対応をしてくれる可能性があります。

労働基準監督署への相談・通告

会社ぐるみで違法な長時間残業を指示しているような場合には、人事やコンプライアンス担当による対応が期待できないため、労働基準監督署への通告を検討します。

違法な長時間残業については労働基準法違反案件なので、労働基準監督署が自ら取締に動いてくれることが期待できます。

よりスピーディーな解決を求めるならば、違反の事実に関する客観的な証拠と一緒に通告することも考えられます。

退職をした上で民事訴訟を提起する

改善の見込みが見えないような場合には、自分を守るためにも退職をして新しい転職先を探すことが望ましいかもしれません。

退職をする際に知っておいて欲しいのが、長時間残業を理由とする退職は、失業手当をもらう上で「特定受給資格者」として取り扱われる可能性があります。

具体的には、

  • 直近3ヶ月45時間以上の残業をしていた
  • 2~6ヶ月平均80時間以上の残業をしていた
  • 1ヶ月100時間以上の残業をしていた

と認定できれば、特定受給資格者として、待機の3ヶ月間が無くなる・受給できる日数が多くなる場合があることを知っておきましょう。

その上で、自分はじっくり新しい仕事を探しつつ、従来の会社については民事訴訟を検討しましょう。

民事訴訟のコツとしては、現実にどのくらいの残業をしていたかを立証するための資料を在職中から集めておくことです。

タイムカードはコピーしておいたり、タイムカードがない・タイムカードを切ってから仕事をしているような場合にはパソコンのアクセスログ・メールなどの送受信履歴・業務日報などをコピーするなどしておくことが必要です。

同時に、心身に不調を来しているような場合には、診断書を書いてもらうために病院にかかっておくことも必要です。

労働時間を改ざんしているような場合には未払いの残業代請求も同時に行うことが可能ですので、弁護士に相談するようにしてみましょう。

監修者


みんなのユニオン

執行委員岡野武志

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みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。