遅刻を理由に懲戒解雇された!これって適法?それとも違法?

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監修者:みんなのユニオン 執行委員
岡野武志

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うっかり寝過ごして遅刻した、という経験は誰もが一度はしたことがありますよね。

そのような遅刻を繰り返したことを理由に、会社から解雇されることも考えられます。

しかし、遅刻したことを理由とする解雇は、違法・無効となる可能性があります。

今の記事では遅刻による解雇の法律上の定義と、労働者の遅刻を理由とした適法な解雇と違法な解雇の違いについて確認していきます。

普通解雇と懲戒解雇|法律上の定義

雇用主が労働者をクビにする、いわゆる解雇という処分には、「普通解雇」「懲戒解雇」という2種類があります。

労働者にとっては、強制的に会社を辞めさせられることに変わりはないので、どちらの解雇でも関係ないように感じるかもしれません。

ですがこれら2つの解雇は、解雇が可能となる条件も、退職後の影響も大きく異なります。

それぞれ、どのようなものか見てみましょう。

普通解雇と懲戒解雇の見分け方は?

解雇通知書・解雇予告通知書・解雇理由証明書に記載してある解雇理由などから、普通解雇と懲戒解雇を見分けることができます。

普通解雇の文面・就業規則●条に基づき~
(以下の各号に該当するときは社員を解雇する、としているもの)
懲戒解雇の文面・書面タイトルが「懲戒解雇通知書」「懲戒処分通知書」
・~懲戒解雇いたします。
・就業規則〇条に基づき~
(以下の各号に該当するときは社員を懲戒解雇する、としているもの)

なお実際には、そもそも会社側が「解雇」ともはっきり言ったり書面を渡したりせず、形式上の自主的な退職を促してくるような場合も多くあります。

そのような場合は、上記の各種書面の発行を請求したり、または担当者に確認をとることが有効です。

特に解雇理由については、労働者が証明書を請求した場合は、会社は交付義務を負います(労働基準法22条2項)。

普通解雇とは?

普通解雇とは、後述する懲戒解雇と整理解雇を除く解雇一般を広く指します。

会社は労働契約法第16条において、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と制限が課せられています。

つまり、①解雇理由に客観的合理性がなかったり、②解雇することに社会的相当性がない普通解雇は違法・無効ということです。

さらに、労働基準法第20条には、「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。」とあります。

したがって、③雇用主は原則として、30日以上前に解雇予告する必要があります。

遅刻で普通解雇になる?

例えば1回だけ遅刻をしたからと解雇することは、解雇に客観的に合理的な理由が無いため、そのような解雇は違法となります。

一方で遅刻を何度も繰り返し、ずっと態度が改まらなかったような場合には、解雇に客観的に合理的な理由があると判断されやすくなります。

また勤務時間に裁量性のある職務であったり、会社からそれまでなんら注意や警告が無かったにも関わず解雇されたような場合は、解雇の社会的相当性が無いと認定されやすくなります。

一方で開店時間の決まっている接客業など遅刻による業務の支障が大きかったり、複数回注意されたにも関わらず遅刻を続けているなどの事情があれば、解雇について社会的相当性が認められやすくなります

懲戒解雇とは?

懲戒解雇とは、労働者が規律違反行為をしたことに対する制裁としての解雇です。

こちらも普通解雇と同様に、①客観的に合理的な解雇理由、②解雇することに社会的相当性がある、という2つの条件を満たしていなければなりません。

さらに③就業規則で懲戒解雇に関するルールが定められている(懲戒することができる)ことも必要です(労働契約法15条)。

加えて、普通解雇は原則30日前に解雇予告をしなければなりませんが、懲戒解雇の場合は、即時解雇できる場合がある点に違いがあります。

遅刻で懲戒解雇になる?

懲戒解雇の場合は、就業規則に以下のような「遅刻が理由で懲戒解雇となりうる」ということがわかる規定があることが必要です。

第●条 労働者が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。

〇号  正当な理由なく無断でしばしば遅刻、早退又は欠勤を繰り返し、〇回にわたって注意を受けても改めなかったとき。

客観的に合理的な解雇理由、解雇することの社会的相当性については、普通解雇のときと同様に判断されます。

一般的には遅刻のみで懲戒解雇となることは少ないですが、無断欠勤や業務命令違反、社内秩序を乱すような行為が相まって懲戒解雇が言い渡される可能性はあります。

遅刻による解雇が適法か不当かを見分けるポイント

普通解雇と懲戒解雇の法律上の定義からも、1回の遅刻を理由に解雇されることは違法・無効となりやすい事例であると言えます。

では、遅刻による解雇が適法か不当かを見分ける5つのチェックポイントをみていきましょう。

①就業規則に解雇事由が明記されているか

まず一つ目の判断基準として、就業規則に解雇事由が明記されているかどうか確認してみましょう。

就業規則や雇用契約に、解雇事由が明記されていない場合は、その事由に基づいた解雇処分をすることができません。

さらに就業規則は事業所に置いておく・社員への交付などの形で、社員に周知されていなければなりません(労働基準法106条1項)。

②解雇に遅刻以外の事情があるか

一般的には、遅刻をすることも適格性の欠如・職場規律違反行為として評価されます。

ですが遅刻だけでは、「解雇するのに客観的で合理的な理由」と言えるほどの違法性や悪質性が無いと考えられるのが一般的です。

よって単に遅刻したというだけでは足らず、以下のような事情があって初めて遅刻による解雇が有効となりうる、と考えられます。

  • 遅刻が相当回数繰り返されていた
  • 複数回けん責や戒告を受けても態度が改まらなかった
  • 遅刻以外にも、無断欠勤や業務命令違反行為行為があった
  • 遅刻によって業務に具体的な支障がおきた

③遅刻により解雇された例があるか?

解雇の社会的相当性を考えるうえで、実際に「遅刻による解雇」が行われているか、ということも考慮要素となります。

例えばご自身以外にも遅刻を繰り返している方がいらっしゃるのに、その方はまったく懲戒処分を受けていないような場合は、「遅刻による解雇」という処分が平等になされていない可能性があります。

そのように平等な取り扱いがなされていない場合は、社会的相当性が無い、と判断されやすくなります。

④解雇以外の処分が検討されたか

解雇は労働契約を一方的に打ち切る最終手段であるため、事前に解雇以外の処分が検討されていなければなりません。

一般的に雇用主は、遅刻を繰り返す労働者に対し「戒告・譴責(けん責)」をします。

会社によっては、始末書の提出を求めることもあるでしょう。

あるいは遅刻による支障が少ない部署への配置転換や、所定労働時間の変更などの手段がとられる場合もあります。

そのような解雇処分以外の手段を一切とっていない、検討していないにも関わらず、突如として解雇を言い渡すようなことは社会的相当性が無いため違法、と判断される可能性があります。

⑤遅刻したことの弁明の機会が与えられたか

解雇に至るまでの手続きのなかで最も重要なのは、遅刻をした労働者に対し弁明の機会が与えられたか、ということです。

解雇の手続きは適正かつ公正でなくてはいけません。

例えば、やむを得ない理由のある遅刻であったのにその事情を説明する機会を与えられず解雇を告げられた、十分な討議の時間が無かったなどの場合は、手続き上の違法行為があったと考えられます。

不当な懲戒解雇だった場合の対処法

就業規則に懲戒解雇が明記されていない、一度も注意をされないまま突然解雇を言い渡された…など、自分に言い渡された懲戒解雇が不当だと考えられる場合は、どうすればよいのでしょうか?

不当な懲戒解雇だと判断したときの対処法についてみていきましょう。

雇用主に確認してみる

雇用主の中には、感情的になり「明日から会社に来なくていい」と一方的に𠮟責することもあります。

ですから、まず雇用主に本当に解雇する気があるのか、もしそうならば通知された解雇が懲戒解雇なのか、それとも普通解雇なのか確認してみましょう。

感情的によるものであれば、謝罪や弁解で話は済みますが、雇用契約を打ち切る解雇の意志表示であれば、普通解雇であるか懲戒解雇であるかによって扱い方が変わってきます。

ですから、どのような解雇なのかを確認し、書面で通知するよう求めましょう。

弁護士に相談してみる

懲戒解雇は、懲戒処分の中で最も重い罰です。

懲戒解雇となるような問題を起こした労働者にも非がありますが、会社の解雇も常に適法とは限りません。

ですから、一方的に懲戒解雇を言い渡されたなら、労働問題を専門とする弁護士に相談してみましょう。

監修者


みんなのユニオン

執行委員岡野武志

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みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。

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