遅刻を理由に懲戒解雇された!これって適法?それとも違法?

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監修者:みんなのユニオン 執行委員
岡野武志

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2020年10月1日以降の自己都合退職者は、失業手当の給付制限期間が短縮される変更があります。

うっかり寝過ごして遅刻したり、遅刻しそうになった、という経験は誰もが一度はしたことがありますよね。

でも、遅刻をしたことを理由に「明日からもう会社に来なくていいよ」と、雇用主から突然解雇を言い渡されると、「どうして?」「なぜ?」と疑問と不安の気持ちでいっぱいになります。

確かに会社に遅刻するという行為は、会社の業務に損失を与える恐れのある行為です。

しかし、労働者が遅刻したことを理由とする解雇が、すべて適法な解雇というわけではなく、違法な解雇となることもあります。

今回は解雇の法律上の定義と、労働者の遅刻を理由とした適法な解雇と違法な解雇についてみていきましょう。

普通解雇と懲戒解雇|法律上の定義

遅刻を理由に雇用主から解雇を言い渡されるとショックですよね。

実は、雇用主が労働者をクビにする、つまり解雇という処分には、「普通解雇」「懲戒解雇」の異なる性質を持つ解雇が存在しています。

労働者にとっては、強制的に会社を辞めさせられることに変わりはないので、どちらの解雇でも関係ないように感じるかもしれません。

でも、雇用主がどの種類の解雇を言い渡すかによって、自分が不利益を受ける可能性があります。

そのためには、それぞれの解雇の意味や違いについて理解しておくことが大切です。

普通解雇とは?

普通解雇とは、会社が一方的に労働者との労働契約を解除する解雇一般のことを指します。

通常、会社は自由に解雇をすることができますが、労働契約法第16条において、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と制限が課せられています。

つまり、解雇理由に客観的合理性がなかったり、解雇することに社会的相当性がない解雇は違法・無効ということです。

さらに、労働基準法第20条には、「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。」とあります。

したがって、雇用主は、30日以上前に解雇予告しなければ労働者を解雇することはできません。

ですから、1回の遅刻を理由に「明日から来なくていいよ」と雇用主から通知された予告なしの解雇通知は「不当解雇」、つまり違法となる可能性があります。

その場合、労働者には30日以上の賃金を解雇予告手当として雇用主に請求する権利があります。

懲戒解雇とは?

一方、懲戒解雇とは、制裁罰としての解雇です。

つまり、雇用主から労働者に対するペナルティとしての解雇と言えます。

普通解雇は30日前に解雇予告をしなければなりませんが、懲戒解雇の場合は、即時解雇できる点に違いがあります。

ただし、解雇権濫用にあたらない条件、①客観的に合理的な解雇理由、②解雇することに社会的相当性がある、の2つを満たしていることが必要です。(労働契約法16条)

したがって、何度も遅刻をして注意されているにも関わらず、全く改善の余地が見られない場合は、解雇通知される可能性があります。

また、会社側は、懲戒解雇に関する明確なルールを就業規則に明記しておかなければ、懲戒解雇をすることはできません。

ですから、まずは就業規則を確認してみましょう。

遅刻による懲戒解雇が適法か不当かを見分けるポイント

普通解雇と懲戒解雇の法律上の定義からも、1回の遅刻を理由に解雇されることは違法・無効となりやすい事例であると言えます。

ですから、突然の解雇通知に理不尽を感じるなら、あなたに通知された懲戒解雇が適法な解雇か、それとも違法な解雇なのかを判断しましょう。

では、遅刻による懲戒解雇が適法か不当かを見分ける3つのチェックポイントをみていきましょう。

①就業規則に懲戒解雇事由が明記されているか

まず一つ目の判断基準として、就業規則に懲戒解雇事由が明記されているかどうか確認してみましょう。

就業規則や雇用契約に、懲戒解雇事由が明記されていない場合は、その事由に基づいた懲戒処分をすることができません。

よって、もしも懲戒事由として、遅刻により懲戒解雇となりうることが記載されていなければ、遅刻による懲戒解雇はそもそも不可能となります。

②解雇の客観的な合理的な理由があるか

労働契約法第15条には「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。」と規定されています。

したがって、遅刻という行為が会社に損失や迷惑を与えたとしても、客観的に合理的な解雇理由と、解雇することに社会的相当性がない場合は、雇用主は労働者を解雇することはできない、ということです。

ここでの合理的な理由とは、労働者の行為が会社の秩序を著しく乱す行為であることです。

遅刻すること自体は、決められた時間に労働するという会社秩序を害する行為であり、その程度にもよっては遅刻での解雇には客観的に合理的な理由があると考えられます。

③解雇することに社会的相当性があるか

解雇することに社会的相当性があるかは、解雇に至る手続きが適正であったか、解雇することが不当に重い処分といえないか、などの点が考慮されます。

懲戒処分は、労働者に対するペナルティです。

そのため懲戒解雇の手続きとして、雇用主には解雇をする前に、対象となる労働者に弁解の機会を与えることが求められています。

懲戒処分にはいくつかの種類がありますが、懲戒解雇はその中でも一番重い処罰です。

そのため、解雇に至るまで、厳格な手続きをすることが雇用主には求められています。

まず雇用主は、遅刻をしないように「戒告・譴責(けん責)」をします。

会社によっては、始末書の提出を求めることもあるでしょう。

それでも労働者が戒告を無視して遅刻をするなら、「減給」処分、役職・職位・職能資格などを引き下げる「降格」処分、労働契約を継続しつつ「出勤停止」という制裁罰を段階的に行います。

そして、ここまでペナルティを科しても改善の余地がないと判断された場合は、最終手段として労働者にとって一番重い「解雇」処分です。

ですから、「明日からもう会社に来なくてもいい」と突然言われたとしても、すでに会社側からの指導、段階的な処分という適正な手続きがされているなら適法な解雇と認められやすくなります。

不当な懲戒解雇だった場合の対処法

就業規則に懲戒解雇が明記されていない、一度も注意をされないまま突然解雇を言い渡された…など、自分に言い渡された懲戒解雇が不当だと考えられる場合は、どうすればよいのでしょうか?

不当な懲戒解雇だと判断したときの対処法についてみていきましょう。

雇用主に確認してみる

雇用主の中には、感情的になり「明日から会社に来なくていい」と一方的に𠮟責することもあります。

ですから、まず雇用主に本当に解雇する気があるのか、もしそうならば通知された解雇が懲戒解雇なのか、それとも普通解雇なのか確認してみましょう。

感情的によるものであれば、謝罪や弁解で話は済みますが、雇用契約を打ち切る解雇の意志表示であれば、普通解雇であるか懲戒解雇であるかによって扱い方が変わってきます。

ですから、どのような解雇なのかを確認し、書面で通知するよう求めましょう。

弁護士に相談してみる

懲戒解雇は、懲戒処分の中で最も重い罰です。

懲戒解雇となるような問題を起こした労働者にも非がありますが、会社の解雇も常に適法とは限りません。

ですから、一方的に懲戒解雇を言い渡されたなら、労働問題を専門とする弁護士に相談してみましょう。

監修者


みんなのユニオン

執行委員岡野武志

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みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。