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在宅勤務中にけがをしたり病気になっても、原則として労災と認められます。ただし、労災と認められるためには、けがや病気をした人が労働者であり、業務遂行性と業務起因性の両方が認められるけがや病気であることが必要です。
この記事では、労災とはどのようなものなのか、在宅勤務中のけがや病気が労災と認められる条件はなにか、労災と認められないケースはどんな場合なのかについて解説します。
目次
労働者が業務中あるいは通勤中にけがや病気、死亡した場合は、原則として労災になります。ただし、労災と認められるためには、けがや病気をしたのが労働者であり、業務遂行性と業務起因性の両方が認められるけがや病気であることが必要です。
労災は、大きく分けると業務災害と通勤災害の2種類になります。業務災害は業務中のけがや病気などで、通勤災害は通勤中のけがや病気です。病気やケガが労災と認定されると、労災保険の休業補償が給付されます。
業務中のけがや病気が労災と認定されるためには、以下の3点を満たしている必要があります。
業務中のけがや病気が労災と認定されるためには、大前提として会社に雇用された労働者である必要があります。労働者は、正社員だけではなく契約社員や日雇い、パートタイマー、アルバイトなど会社と正式に雇用関係を結んでいる人になります。
個人で仕事を請け負っているフリーランスや自宅で副業をしている主婦は労災の対象にはなりません。
業務遂行性とは、「労働者が労働契約に基づいて事業主の支配下にある状態」にあることです。分かりやすく言えば、会社からの指示のもとに仕事をおこなっている状態になります。
在宅勤務で業務遂行性が認められるためには、決められた勤務時間に自宅で業務をおこなっている必要があります。
ただし、業務遂行性は具体的に業務をおこなっている時間だけではなく、業務に付随する行為、食事やトイレ、水分補給なども含まれます。
業務起因性とは、「業務または業務行為を含めて、労働者が労働契約に基づいて事業主の支配下にある状態に伴って危険が現実化したものと経験則上認められること」です。分かりやすく言えば、けがをした原因が仕事をしていたことにあることになります。
けがや病気になったのが在宅勤務の場合でも会社で業務をおこなう場合でも、労災と認められる条件が変わるわけではありません。
ただし、在宅勤務中のけがや病気の場合は、労災認定において以下のような違いがあります。
似たような状況であっても、労災と認定されないケースがあります。具体的にどのような違いがあるのか確認しておきましょう。
在宅勤務中は、会社の中ではなく自宅で業務をおこないます。働く場所も業務をおこなうために使用する機材も違います。
会社で働く場合は、会社が管理する施設の中で、会社が管理する機材や用具を使用して業務をおこないます。つまり、会社の施設内にいる間は会社の管理下にあるということです。
在宅勤務の場合は、働く場所は自宅で使用する機材や用具は基本的に自分のものです。場所も機材も会社の管理下にないということになります。
会社の施設や機材に不備があり、不備があることが原因でけがをした場合は労災と認められますが、在宅勤務の場合は施設や機材に不備があっても労災とは認められず自己責任になる場合もあります。
具体的に言えば、会社の休憩室で食事中に椅子が壊れていたせいでけがをしたら労災になりますが、自宅で食事しているときに椅子が壊れていたせいでけがをしても労災として認められない可能性があるということです。
会社で働く場合は、出勤・退勤はタイムカードで管理されていたり、働いている姿を会社の同僚がみていたりします。すなわち業務遂行性・業務起因性を客観的に判断できる要素がたくさんあるということです。
一方で、在宅勤務の場合は業務遂行性・業務起因性を証明してくれる人はいません。本当に仕事をしていたのか、仕事が原因でけがをしたのかを証明することは難しいといえます。
たとえば、本が落ちて足の指をけがした場合は、仕事のための資料を取ろうとしていたのか、私用で本を読もうとしていたのかは当人にしか分からないことです。
在宅勤務中のけがや病気が労災と認められないケースを理由とともに解説します。
在宅勤務中の勤務時間が会社で働く場合と同じである場合に、勝手に残業をしている時間については業務遂行性が認められない可能性があります。在宅勤務は通勤がないので、業務遂行性が認められるのは勤務時間中だけです。
けがの原因が業務によるもので業務起因性が認められたとしても、近所のネットカフェなどの自宅以外の場所で業務をおこなっていた場合は、業務遂行性が認められない可能性があります。
ただし、在宅勤務だけではなくモバイルワークやサテライトオフィス勤務も会社から許可されている場合は、業務遂行性が認められます。
会社から指定されている勤務時間中のけがであっても、けがの原因が洗濯物の取り込みや子供の世話であれば私用によるけがとみなされるので、業務起因性は認められません。
自宅で勤務時間中に業務をおこなっており業務遂行性が認められても、けがの原因が地震や台風などの自然災害であれば、けがや病気は会社の責任ではないので労災と認められません。
長時間椅子に座って業務をおこなっていたことが原因で腰痛になった場合は、労災と認められない可能性があります。
厚生労働省の定めた業務上腰痛の認定基準によると、腰痛を以下の2点で分類しています。
上記のケースであれば、「災害性の原因によらない腰痛」に相当します。
「災害性の原因によらない腰痛」が労災と認められるための基準は以下の通りです。
この基準に照らし合わせると、「長時間椅子に座って業務をおこなっていたら腰痛が悪化した」というケースは労災に該当しないといえるでしょう。
みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。