1分の遅刻の減給は認められているの?それとも違法?

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監修者:みんなのユニオン 執行委員
岡野武志

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2020年10月1日以降の自己都合退職者は、失業手当の給付制限期間が短縮される変更があります。

ほんの1、2分の遅刻なのに減給されてしまうとショックですよね。

おもいっきり遅刻したのであれば、減給されても諦めがつきますが、たった1分の遅刻で減給されると「違法なのでは?」と感じるのではないでしょうか?

では、実際のところどうなのでしょうか?

たった1分の遅刻での減給は認められているのでしょうか?それとも違法なのでしょうか?

適法か違法かを自分で判断できるチェックポイントをご紹介しましょう。

1分の遅刻の減給は違法?|ノーワークノーペイの原則とは?

「たった1分の遅刻なら減給されないだろう」「1分の遅刻なら雇用主も大目にみてくれるだろう」と思っている方は少なくないでしょう。

でも、給与明細書を見ると、1分遅刻した分がしっかり減給されており、その厳しさや現実にがっかりしてしまいますよね。

では、1分の遅刻の減給は、法律上認められているのでしょうか?

1分の遅刻は適法?それとも違法?

結論から述べるなら、1分の遅刻による減給は法律上認められています。

つまり、違法ではありません。

遅刻や早退など仕事をしていない時間がある場合、その時間の賃金は、原則として支払わなくてもよい、と定められています。

労働者は、雇用主と労働契約を結んでいます。

これにより労働者が労働をした場合、労働の対価として、雇用主は賃金を支払う義務があります。

つまり、逆を言えば、労働者が労働をしない場合は、対応する賃金の支払いの義務が生じません。

これを「ノーワークノーペイの原則」といいます。

ノーワークノーペイの原則の根拠は?

労働基準法第24条には、「賃金は、通貨で直接労働者に、その全額を支払わなければならない」と定められています。

したがって、雇用主は、労働の対価として労働者に賃金を支払わなければいけません。

また、民法第624条には、「労働者は、その約した労働を終わった後でなければ、報酬を請求することができない。」と明記されています。

そのため、労働者は労働していない時間の賃金を雇用主に請求することはできません。

つまり、1分の遅刻だとしても、労働をしていないことに変わりはないため、雇用主には支払義務がないということです。

ですから、遅刻による減給は違法ではありません。

罰金扱いは違法

遅刻による減給は、ノーワークノーペイの原則に基づき違法ではありません。

しかし、企業によっては、「1分でも遅刻をしたら、○○円の罰金を給与から天引きする」という規定を設けたり、労働者に通知する雇用主もいるようです。

労働基準法第16条には、「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。」と明記されています。

つまり、遅刻を理由に違約金、つまり罰金を科すことは違法です。

また、労働基準法第24条1項には、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」とあり、賃金は全額支払わなければいけません。

ですから、遅刻による罰金としての減給は、違法行為となります。

減給の制裁として行う場合はルールがある

このように所定労働時間に労働を提供しなかった分は、ノーワークノーペイの原則に基づき、減給することが認められています。

しかし、それとは異なる性質の減給もあります。

それは、遅刻をしたペナルティ、つまり制裁の性質を持つ減給です。

ただし、この場合はルールが設けられており、それに反する減給は違法とみなされます。

では、制裁として行われる減給のルールについてみていきましょう。

就業規則への明記が必須

就業規則には、労働者が守るべきルールが明記されており、遅刻や無断欠勤などを禁じているのが一般的です。

そして、それらの規定を守らずに秩序を乱した場合は、労働しなかった時間分の賃金を支払わないことに加え、懲戒処分のひとつとして減給する企業も珍しくありません。

例えば、「遅刻をした場合は、1回に付き○○円を賃金から差し引く」などと就業規則に明記し、減給の制裁を行います。

このように就業規則にあらかじめ懲戒処分のひとつとして減給する旨が明記されている場合の減給は、法律上認められています。

一方、就業規則に減給の制裁が明記されていない場合は、減給することが認められていません。

したがって、その場合の減給は違法とみなされます。

ですから、遅刻を理由に減給された場合は、まず懲戒処分の性質を持つ減給なのかを上司などに確かめたうえで、懲戒処分だと言われたら就業規則を確認してください。

そして、遅刻による制裁がしっかり明記されているかどうか確かめてみましょう。

減給額は上限額が決まっている

減給の制裁には、上限額が決まっています。

労働基準法第91条には、「就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。」と規定されています。

つまり、①1回の制裁で、平均賃金1日分の半額を越えてはいけない②制裁が複数回にわたって下される場合は、支払われる総賃金の10分の1を超えて減給することはできない、ということです。

なお、平均賃金とは、算定事由発生日以前3ヶ月に支払われた賃金の総額をその期間の総日数で割った金額のことです。

例えば、1日の平均賃金が1万円の場合は、1回の制裁で減給できる上限額は5,000円となり、その月に支払われる賃金の総額が20万円であれば、複数回にわたる制裁の上限額は2万円となり、それを超える額の減給をすることはできません。

1分の遅刻で30分ぶんの減給は違法?

企業で定めている就業規則は、遅刻の取り扱いや制裁について独自のルールが設けられています。

業種によっては、遅刻が絶対に許されません。

したがって、特に遅刻の取り扱いに関しては、企業によって温度差があると言えるでしょう。

では、数分の遅刻で30分間の給与がカットされるのは当たり前のことなのでしょうか?

不可抗力による遅刻もノーワークノーペイの原則が適用されるのでしょうか?

数分の遅刻で30分間分減給される理由とは?

1、2分の遅刻なのに30分間の給与がカット、つまり減給されるというケースもあります。

「30分ほぼただ働きだから違法でしょ!」と思われる方もいることでしょう。

原則、給与は1分単位で計算しなければいけません。

したがって、1分の遅刻の場合、1分を超えるぶんの減給をすることは違法です。

ただし、その減給が「懲戒処分」としての性質があるなら、あらかじめ就業規則に書かれていれば違法でない可能性があります。

つまり、懲戒処分の規定として「1分の遅刻があったら、30分ぶんの給与を控除する」などと定められているのであれば、必ずしも違法ではありません。

この場合は、遅刻した分の賃金減額はノーワークノーペイの原則に基づく減給、残りの分は制裁による減給処分、という扱いになります。

遅刻の理由によっては免除されることもある

遅刻といっても、その理由は様々です。

寝坊や二日酔いなど自分の不注意による遅刻もあれば、電車の遅れや人身事故など自分に落ち度がない不可抗力による遅刻があります。

自分の不注意による遅刻は、本人に非があるため、減給されても仕方がないことです。

一方、自分に落ち度がない場合でも、一般的には、ノーワークノーペイの原則が適用されるため、遅刻した分の賃金は支払われません。

しかし、企業によっては、電車遅延や運休などを証明する「遅延証明書」の提出を条件に、遅刻を免除してくれる規則を設けているところもあります。

遅刻の取り扱いに関しては、各企業によって異なります。

ですから、1分の遅刻による減給は適法なのか、それとも違法なのか、就業規則を確認してみましょう。

監修者


みんなのユニオン

執行委員岡野武志

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みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。