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たくさん働いているのに賃金が安いと感じたことはありませんか?
給与の中に残業代が含まれている「みなし残業代制」は、企業では時折見られる給与形態です。
一定の残業代をあらかじめ給与に組み込むことは、雇用主と従業員双方にメリットがあります。
しかし、違法なみなし残業によるトラブルも後を絶ちません。
今回は、みなし残業の違法性の確認方法や、違法であることに気づいた場合の対処方法を解説します。
目次
給与がみなし残業代制となっている会社員は少なくないでしょう。
それでは、みなし残業の制度について正確に理解できているでしょうか?
理解が曖昧なまま、本来もらえるはずの残業代をもらえずに働いている事例はたくさんあります。
みなし残業により不利益を受けないためには、基本的な知識が不可欠です。
通常、給与は給料や各種手当から構成されており、時間外勤務手当は別枠で取り扱われます。
それに対して、みなし残業代制は、一定の残業代を毎月の給与に含めて支払うシステムです。
何時間分の残業代が給与の一部になっているかは企業によって様々なので、就業規則などで確認してみましょう。
みなし残業代制の会社にとっての利点は、経理業務のコスト削減に繋がることです。
従業員にとっては、一定の残業代が確実に支払われる安心感があるでしょう。
また、残業時間が短い月は実際の労働よりも多くの残業代をもらえることになります。
企業の立場からは、固定の残業代を社員に毎月支払わなければなりません。
そのため、賃金に見合う仕事をさせようと、会社から残業を強制されるリスクがあります。
また、長時間の残業を行っても、残業代は既に給与に含んでいるという理由で充分な残業代がもらえないトラブルが少なくありません。
みなし残業代制が適正と判断されるには、4つの条件を満たす必要があります。
当然ながら、ルールに反するみなし残業代制は認められません。
給与の内のいくらが残業代なのか分からない方は要注意です。
勤め先でみなし残業が導入されている方は、以下の条件に当てはまっているか確認してみましょう。
みなし残業の時間の上限は、法律で明確に決まってはいません。
しかし、通常の残業と同様に、長すぎる残業は違法とみなされます。
たとえ36協定を結んでも、原則として従業員に命令できる残業時間は月に45時間までです。
会社のみなし残業が月45時間を超えていれば、違法となる可能性が高いと認識しておきましょう。
また、そもそも時間が明示されていない場合もルール違反です。
みなし残業代制を適用する場合、会社は就業規則または雇用契約書などに残業代を明示しなければなりません。
例えば、月給と併せて「うち月◯◯時間の固定残業代◯◯万円」のように記載されている必要があります。
就業規則などに載っている給与体系に具体的な金額が書かれていない場合、その会社のみなし残業代制は違法と言えるでしょう。
基本給の額が安すぎれば、正当なみなし残業代制とは言えません。
みなし残業代制の場合、給与から残業代や各種手当を除いた額が基本給です。
給与額から基本給を算出し、月の所定労働時間で割ると時間単価が出ます。
会社の時間単価が地域の最低賃金を下回っているケースが稀に見られるので、給料を時給に換算して確認してみましょう。
みなし残業代を別の手当から支払っているケースが見られますが、それは不適正なみなし残業代制です。
会社には住宅手当や通勤手当など様々な手当があります。
その内、残業の対価として社員に支給されるのが時間外勤務手当(残業代)です。
異なる名目の手当を混同せず、それぞれの金額がはっきりしているか確認することをおすすめします。
労働者には残業時間に対して相応の賃金をもらう権利があります。
支給されている残業代が適正かどうか、実際に計算して確認してみましょう。
まずは、残業時の本来の時給を確認しましょう。
基本給を所定の勤務時間で割った額(基礎時給)を1,800円とします。
時間外勤務の場合は25%割増で支給されるので、1時間あたり1,800(円)×1.25=2,250(円)が受け取る権利のある金額です。
みなし残業代が30時間分で6万円とすると、時給は60,000(円)÷30(時間)=2,000(円)と算出されます。
この場合、基礎時給の1.25倍未満なので違法と言えるでしょう。
みなし残業代(6万円)よりも、本来の時給(2,250円)に時間数を掛け合わせた金額の方が高ければ、差額を請求可能です。
深夜残業や休日出勤の場合、通常の残業よりも割増率が上がります。
ここでは、みなし残業が25時間で4万円(時給1,280円)の事例を考えてみましょう。
深夜残業を10時間行ったとします。
通常の残業よりも25%高い割増率が適用されるため、1,280(円)×0.25×10(時間)=3,200(円)の差額が追加で支払われるべき金額です。
適正なみなし残業代制では、何時間分の残業代が給与に含まれているかが示されています。
残業時間がそれを超えれば、社員に超過分の賃金を支払うのが会社の義務です。
「基本給や手当と一緒に残業代をもらっているのだから、それ以上の残業代は出ない」と思い込んでいる方が少なくありません。
実際には、従業員には残業した分だけ残業代をもらう権利があります。
会社のみなし残業代制が違法であれば、企業側は残業代を従業員に支払っていないということになります。
そのため、みなし残業代は基本給として受け取り、残業時間に応じた残業代の請求が可能です。
また、残業時間の超過や深夜残業があった場合、差額分を受け取れます。
不払いの残業代を獲得するには、自分から行動を起こしましょう。
そこで、支給されるべき賃金を受け取るにはどうすればよいか解説します。
まずは、残業代の支払いを申し立てるために必要な証拠資料を準備しましょう。
具体的には、以下の3点が分かる資料が必要です。
勤怠管理の方法は会社によって異なるので、残業時間の証明のために用意できるものは人それぞれでしょう。
業務で使用したメモなども充分有効な資料になる可能性があります。
多くの証拠を集めた方が有利なので、役に立つと思われるものを幅広く集めるのがおすすめです。
証拠資料が揃った後の行動として、会社宛てに請求書を送ることが考えられますが、会社側が請求に応じないこともあり得ます。
会社に直接申し立てて解決しなければ、労働基準監督署に相談するのがおすすめです。
行政からのアクションがあれば、会社側も重い腰を上げる可能性があります。
または、弁護士に相談することも検討してみましょう。
少額訴訟や労働審判は個人で起こせますが、労働訴訟が必要となれば弁護士への依頼が必須です。
なお、残業代の請求権には時効があるので注意しましょう。
2020年4月より残業代の請求権の時効は2年から5年に改正されましたが、当面の間の時効は3年として運用されます(労働基準法第115条、附則143条3項)。
残業代の請求が通ったとしても、その後に会社から嫌がらせや降格などの不利益を受ける可能性がないわけではありません。
残業代の請求という正当な行為に対しての報復は、違法と判断される可能性が高い行為です。
請求後に会社から不当な扱いを受けたら、労働基準監督署や労働問題に精通した弁護士に相談しましょう。
特に、弁護士に相談すれば、裁判や慰謝料請求など様々な支援を受けられます。
みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。