固定残業代の基本的な法律知識と残業代が支払われない場合の対応策

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2020年10月1日以降の自己都合退職者は、失業手当の給付制限期間が短縮される変更があります。

現在多くの会社で固定残業代の制度が採用されていますが、長時間働いているにも関わらず固定残業代以上の残業代が一切支給されないことに疑問を持っていませんか?

実は、固定残業代の支給がされてたとしても、それ以上の残業代の支払い義務があることがあり、その不払いは違法であることはご存知ですか?このページでは、固定残業代についてお伝えします。

固定残業代制度とは

まず固定残業代制度とはどのような制度なのでしょうか。

固定残業代制度とは

固定残業代とは、毎月払われる給与の中に、あらかじめ一定時間の残業代を含んで支給することをいいます。

固定残業代制度と呼ばれるほかに、「みなし残業」と呼ばれることもあります。

給与に関しては雇用契約を結ぶ際に明示されますが、給与に例えば「月30時間の残業代を含む」としているようなものです。

一律に支払われるので、たとえばAさんは残業を月10時間行った、Bさんは残業を月20時間行ったという場合に、AさんBさんいずれにも30時間分の残業代が支給されます。

どうして固定残業代制度(みなし残業)が採用されているのか

固定残業代制度が採用されている理由として次の3つが挙げられます。

一つは、支払う額が一律であることから、給与計算が楽である・人件費の見積もりを立てやすい、ということがあります。

次に、同じ仕事をしていても仕事が早いので定時までには終わらせることができる人と、20時間の残業が必要な人が居たとして、20時間の残業が必要な人のほうが残業代が発生して給与が高いという不公平を無くすことができます。

固定残業代の支払いを受けていても残業代の請求が可能

では、固定残業代の支払いを受けている場合には、どのような長時間残業をしたとしても残業代の支払いをうけることはできないのでしょうか。

固定残業代以上の残業代が発生していれば支払う義務がある

例えば、固定残業代として30時間分の残業代の支払いを受けていたとします。

しかし、現実には毎月50時間程度の残業をしていた場合には、20時間分の差額が発生しています。

いかに固定残業代の支払いをしていたとしても、現実に50時間の残業をした場合には50時間分の残業代の支払いが必要です。

固定残業代の支払いをしていれば、超過部分について支払いを免れるものではありません。

現実に、大阪地方裁判所昭和63年10月26日判決(関西ソニー販売事件)、東京地方裁判所昭和63年5月27日判決(三好屋商店事件)など、残業代の支払いをしなければならないという多数の裁判例があります。

残業代の支払いをしないことは法律違反

残業代の支払いをしないことは法律的にはどのような意味を持つのでしょうか。

一般的に残業代と呼ばれるものは、労働に関する法律である労働基準法では、時間外労働として取り扱われるものです。

残業代の支払いをしないことは、時間外労働に対応する部分の給与を支払わないことなので、労働基準法24条に違反することになります。

労働基準監督署からの行政指導の対象になりうるものである上に、労働基準法120条違反の罪で30万円以下の罰金という刑事罰に問われるものです。

固定残業代以上の残業代の支払いがない場合の対応策

では、固定残業代以上の残業代の支払いがない場合の対応策にはどのようなものがあるでしょうか。

会社に固定残業代以上の支払いをするように運用を改めるよう打診

個別の金銭請求とは別に、残業代の支払いをしていない現状の制度を改めるように打診をする方法が考えられます。

会社が事務処理のミスに気付いていないなどの場合には有効かもしれませんが、ほとんどのケースでは違法であることを認識しながら残業代の支給をしていないため、現実的な方法とはいえません。

労働基準監督署に申告をする

固定残業代以上の残業代の支払いをしないことは、労働基準法違反です。

労働基準法違反については、厚生労働省の出先機関である労働基準監督署が取り扱いをしています。

会社に対して立ち入り検査をすることができるなどの権限を持っているので、違反があることを直接調べてもらうのが理想です。

しかし、現実的には労働基準監督署は大量の案件を抱えている状態ですので、労働基準法違反の事実についての証拠を呈示して申告をする必要があります。

労働基準監督署による介入は、会社に労働基準法などの労働法規を守るようにさせることにありますので、個々の従業員の金銭請求(この場合は未払いの残業代の支給を求めて争う)はできません。

残業代請求をする・裁判を起こす

会社に対して、残業代の支払いを求めます。

最終的には裁判所に対して残業代の支払いを求めて訴えを起こすことになります。

次項で詳しくお伝えします。

固定残業代以上の残業代の支払いがない場合の請求・裁判のコツ

固定残業代以上の残業代の支払いを求めて請求・裁判を行う場合にはどのようなコツがあるのでしょうか。

固定残業代以上の残業代の支払いが発生していることの証拠を確保する

残業代の支払いがない場合で、会社が支払いを拒んでいる場合に、最終的に解決をするために裁判を起こして勝訴した上で強制執行を行うことになります。

この場合、裁判の制度として、残業代の支払いがないことを証拠によって証明しなければならないのは原告である労働者の側です。

そのため、労働者は何時間の残業が発生したのかの証拠をきちんと集めなければなりません。

この証拠の収集がうまくいかなければ残業代の支払いを求めて争っても、そもそも残業は発生していない・固定残業代の支払いで足りているはずだ、という反論を許すことになってしまいます。

一方、証拠の収集がうまくいっていれば、会社の側でも言い逃れはできない、という認識をすることになり、交渉・裁判が有利に進むことが考えられます。

固定残業代制度以外にも?使用者の反論を想定する

請求を受けた使用者は、「固定残業代の制度をとっているので支払い義務はない」という反論の他にも、様々な反論をすると予想されます。

「学ぶ立場なんだから残業代なんて出ない」というような容易に違法とわかるレベルのものから「残業の指示をしていないのに勝手に残業をしたものには払えない」というような法的な評価が必要なものまで様々です。

これらすべてに反論できるように入念に準備をしておく必要があります。

交渉をするのに感情的にならない

きちんとした証拠を揃えていれば、会社としても支払義務があることは認識できるはずです。

一方で会社としては、「働かせてあげていたのに…」「面倒みてやっていたのに裏切られた」と感情的になり、時には辛辣な言葉で労働者を責め立てる人もいるでしょう。

そのような相手と交渉をする際に、労働者の側も感情的に請求をしてしまうと、まとまるものもまとまらないということになりかねません。

その結果根負けしてしまって、安い金額で解決をしたり、請求をあきらめることもあります。

きちんと残業代の支払いを受けられなかったのが悔しい、などの思いはあっても、つられて感情的に交渉をしないことが早期解決のコツです。

弁護士に依頼するメリットは大きい

残業代請求を弁護士に依頼するには確かに弁護士費用がかかるものです。

しかし、弁護士に依頼をすれば、固定残業代などの法律知識についてサポートを受けられるのみならず、証拠の収集に関する請求・訴訟に関する技術の部分でもサポートを受けることができます。

また、交渉の代理をしてくれるため、相手方と面と向かって顔を合わせる必要もありませんので、感情的な交渉にならず淡々と相手に請求してもらえます。

少なくとも弁護士に相談をしておくことは重要であるといえるでしょう。

まとめ

このページでは、固定残業代制度の概要と、固定残業代を支給しているからといって残業代を支払わない場合の対応方法についてお伝えしてきました。

固定残業代は労務管理で便利な一方、残業代を適切に支払わないためによく使われます。

おかしいな?と思ったときには弁護士に相談するようにしましょう。

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