遅刻・早退で減給は違法?|実は2種類ある減給に注意

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監修者:みんなのユニオン 執行委員
岡野武志

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「遅刻をしたら、給料から一定金額が差し引かれていた」という経験をしたことはありますか?

遅刻をしたのであれば給料から天引きがあるのが当然のようにも思われますが、労働基準法には「賃金は全額支払われなければいけない」という規定もあります(労働基準法24条1項)。

それでは遅刻や早退による減給は、実際に違法になる可能性があるのでしょうか。

「遅刻や早退による減給」について、詳しく見ていきましょう。

遅刻・早退による減給は2種類ある

実は、給料を減らされるという結果は同じでも、遅刻・早退による減給には2つの種類があります。

  1. 遅刻や早退をしたため、労務提供がなかったことによる減給
  2. 遅刻や早退をしたこと自体への制裁としての減給

それぞれ、どのようなものか見ていきましょう。

(1)遅刻・早退で労務提供がなかったことによる減給

賃金は、労働者の労務提供したことへの対価として支払われます。

よって労働しなかった時間に対して、会社は賃金支払い義務を負うことはありません(ノーワーク・ノーペイの原則)。

遅刻・早退をすると当然その時間は働いていない、すなわち労務提供をしていなかったことになりますから、その対価としての賃金は支払われず、結果として減給となります。

この場合の減給は、遅刻・早退した時間ぶんの給料が時間単位で計算され、月給からカットされるのが一般的です。

(2)遅刻・早退したことへの懲戒処分としての減給

遅刻や早退を繰り返したことへの制裁としても、減給という措置がとられることがあります。

このような、従業員が会社の企業秩序に違反する行為をした場合に制裁を行うことを懲戒処分と呼びます。

懲戒処分には口頭での注意から解雇(懲戒解雇)まで様々なものがあり、そのうちの一つが減給です。

遅刻・早退で懲戒処分になりうる理由は?

実際のところ、遅刻や早退はどの労働者にとっても身近な出来事であり、それで懲戒処分(減給)になるということに違和感を持つ方もいらっしゃるかもしれません。

ですが、そもそも従業員には指定された時間に労働をする義務があり、遅刻や早退はそのような労務提供義務に違反する行為です。

そのような義務違反に加えて、以下のような事情から職場秩序を乱したと言えるような場合には、懲戒処分の対象となりうるのです。

  • 度重なる遅刻により、職場の士気に影響を与えている
  • 遅刻、早退により、実際の職務に支障が生じている
  • 遅刻、早退が慢性化しており、会社全体の秩序が乱れる恐れがある
  • 繰り返しの注意や警告にも関わらず、遅刻や早退が改善されない

以上のような事情がある場合、遅刻や早退による減給や懲戒解雇もありえるということを念頭に置いておきましょう。

遅刻・早退による減給が違法になる場合とは?

それでは、実際に起こりうる違法な減給について考えてみましょう。

(1)遅刻・早退した時間以上の減給

労務提供がなかったことに対する減給(賃金カット)の場合、遅刻・早退した時間ぶん以上の減給を行うことは違法となります。

なぜなら、賃金は原則として1分単位で計算されなければならないためです(労働基準法24条1項、昭63・3・14基発第150号通達)。

例えば10分の遅刻であったにも関わらず、30分ぶんの減給を行うようなことは、労働者を20分を無給で働かせるということになり、賃金の全額払いの原則に違反します。

よって、遅刻したぶん以上の分数の減給を行うことは違法となります。

なお、懲戒処分として減給を行う場合には、実際に遅刻・早退した時間ぶん以上の減給を行っても違法とはなりません。

(2)就業規則に遅刻・早退による減給規定がない

懲戒処分として減給を行う場合、①遅刻・早退が懲戒処分の原因になること②遅刻・早退により減給処分になりうること、すなわち懲戒事由と懲戒処分の種類就業規則に書かれていなければなりません。

懲戒処分を下すことは通常の労働契約の範囲内とまでは言えないため、事前に就業規則に定めておくことが必要とされています(労働契約法7条参照)。

よって、あらかじめ処分の対象となりうる行為と、その行為によりどの懲戒処分がくだされる可能性があるのかが、労働者に示されていなければならないためです。

(3)1回の減給が平均賃金1日ぶんの半額を超える

懲戒処分として減給を行う場合、その減給1回の額が平均賃金の1日ぶんの半額を超えてはいけません(労働基準法91条)。

これは1回の遅刻や早退に対する減給の総額が、平均賃金1日ぶんの半額まででなければならないということを指します。

例えば1日の平均賃金が1万2000円と計算される場合、遅刻により6000円を超える減給をされたのであれば違法となります。

また1回の遅刻や早退について、平均賃金1日ぶんの半額の減給を何日も繰り返すようなことも許されません。

(4)減給の総額が一賃金支払期の賃金総額の1/10を超える

懲戒処分として減給を行う場合、減給の総額が賃金支払いの基準となる期間における賃金総額の10分の1を超えてはなりません(労働基準法91条)。

例えば月給という形で給料を受け取っている場合、懲戒処分による減給が許されるのは月給の10分の1までということになります。

例えば月給20万円で1カ月の間に複数回遅刻や早退を繰り返した場合であっても、減給できる総額は20万円×1/10=2万円まで、となります。

なおそれ以上の減給を行うため、翌月にもさらに減給を行うことは違法ではありません。

具体的には遅刻や早退が繰り返してしまい、平均賃金1日ぶんの半額の減給が繰り返された結果賃金総額の20%に達してしまったような場合は、その月に10%、翌月に10%の減給をされても違法にはなりません。

遅刻・早退での減給が違法とならない場合とは?

なお実際の運用として、1時間の遅刻に対し3時間ぶんの減給がされても、それが違法とは言えない場合があります。

それは、「労務提供がなかったことによる減給」と「懲戒処分としての減給」が組み合わされている場合です。

上記の例では、「労務提供がなかったことによる1時間ぶんの減給」と「遅刻をしたことへの懲戒処分としての2時間ぶんの減給」が組み合わさっており、それぞれが違法とならなければ、合計3時間ぶんの減給も違法となりません。

なお、遅刻に対し断りなくこのような処分をする場合は、事前に就業規則に定めていることが条件となります。

ご自身の遅刻・早退への減給処分に疑問やご不安があるような場合は、就業規則の内容がわかるものを持って、弁護士などに相談するのがよいでしょう。

監修者


みんなのユニオン

執行委員岡野武志

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みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。

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