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副業を禁止する企業、意外と多いですよね。
しかしながら、職業はお金稼ぎの手段であると同時に、自分のスキルアップに繋がることができる重要な場でもあります。
企業に就業していない時間に他の職業をすることの何がいけないの?と思ったことがある人もいるかもしれません。
そんな疑問の多いであろう「副業」について、副業禁止規定が定められる理由とその対処法を簡単にまとめてみました。
※当記事は公務員の方を対象にするものではありません。
目次
中には社員のスキルアップのため、副業を積極的に推奨する企業などもありますが、副業を禁止したがる企業も現在はなおも多いです。
ここでは後者のような企業がなぜ副業を禁止したがるのかについて考えられる理由を何個か挙げたいと思います。
例えば企業で8時間働いている人を想定しましょう。その人が仮に朝9時から夜18時まで就業したとします(休憩1時間)。
この後副業をするとなると、副業の種類にもよりますが、副業終了時刻は夜遅くになってしまうこともあるでしょう。
そのように遅くまで毎日働いていると、多くの人は体力的精神的にも辛くなってきます。
企業にとって労働力となる社員は「財産」です。そのような財産を外で傷つけたくないですし、その人が休憩不足で倒れてしまったりすると、労災保険や異動、退職休職など様々な法律問題まで浮上してきます。
上記のような過重労働によって生じるリスクは企業が副業を禁止する理由の一つとなりえます。
社員がする副業の業態によっては企業のイメージに真っ向から反したり、企業のイメージを悪くしてしまう場合があります。
そのような事態を防ぎたいという企業も多いでしょう。
上述した(1)の副業禁止の理由は社員が夜遅くまで働く→本業の会社で職務効率が落ちるといった間接的な理由でしたが、より直接的に企業のノウハウなどを外部に流出させたくないと考える場合があります。
例えば、塾講師をしている社員Aさんがいたとします。その塾では教室での教え方や生徒に対する考え方など丁寧な研修を行っており、その他社員育成制度も充実していたとして、Aさんが他の場所時間で違う塾の講師を始めたらどうなるでしょうか。
その社員が本業の支障にならない程度で副業をしていたとしても、塾講師という性質上、教え方など本業企業のノウハウがにじみ出てしまうことも当然あるでしょうし、そもそもAさんが他の塾に在籍することにより、お客さんからは同じ講師ならば安い方に、との評価を受け、顧客流出にも繋がる可能性があります。
塾はあくまでも一例ですが、このようにノウハウや顧客流出を防ぎたいというのが副業禁止の主たる目的である企業は多いと思います。
労働者が副業をすることになった場合、企業は副業先の労働時間も把握しなくてはなりません。
なぜならば、労働基準法38条1項で「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。」と定められているためです。
上記の定めがあることによって、本業と副業を合わせた労働時間が法定労働時間を超えた場合、会社は労働者に対して割増賃金を支払う義務を負います。
(A企業で1日8時間就労後、B企業で3時間就労した場合、法定労働時間外である3時間分の割増賃金はB企業が負担することになります)
また、副業先の労働時間は基本的に労働者の自己申告によって把握されます。
しかし、副業をすることによって労働者にとっては所得が増える・副業先でスキルを伸ばせるといったメリットがある反面、企業にとっては副業先の労働時間も把握しなければならない・時間外労働の割増賃金の計算が煩雑になるといったデメリットがあります。
上記のような労務管理の手間が増えてしまうことを嫌って副業を禁止する企業もあります。
企業側にも上のような事情があったりして、副業禁止規定が設定されているのは分かりました。
しかしながら、そもそもそのような規定は合法なのでしょうか。
そもそもなぜ、就業規則の副業禁止規定は合法か否かという議論が生まれるのでしょうか。
その理由は、法律にも適用される優先順位が存在するためです。
憲法を最上位として、その次に労働基準法や労働安全衛生法といった各種法令、その次に都道府県が独自に定める条例、さらにその次に企業独自で定められている就業規則、という優先順位です。
就業規則で定められている内容が法令違反である場合、その規定に有効性は認められません。
では、副業禁止規定は実際に各種法令に違反しているのかどうか。これから解説していきます。
労働者である我々には憲法上職業選択の自由を保障されています(憲法22条1項)。この憲法上の自由は何でもしていい自由ではなく一定の制限をうけます。
例えば兼業禁止規定設定者である使用者も営業の自由や、財産権を有しています。このような他者と権利が衝突する可能性もあるので調整が必要です。
しかしながら、企業側がいくら財産権や営業の自由を有しているにしても、それは原則として契約によって労働者を拘束できる時間にしか及ばないと考えるのが自然です。
原則そのようになっているのですから、使用者が労働者に労働拘束時間外の副業禁止をすべての職種・すべての態様に一律に課すことは労働者の職業選択の自由を強く制限するもので正当化もしがたいため違法と考えられます。
確かに一律に副業禁止を課すことは違法の疑いが強いですが、上にあげたように企業側としては自己の財産や信用等を守るための事情があることも想定されているのが法律や判例です。
そこで副業を「一律禁止」ではなく「許可制」にすること自体は合法と解されています。
すなわち、本業と副業の業務態様や拘束時間などを本業企業に総合的に判断してもらい、一定の限度で副業を拒否してもらうことは違法とは言えないということになります。
副業許可制が合法となると、許可の判断は一時的に企業側に任されることになります。これだけでは企業が悪質な場合、許可制としながら殆どの副業を禁止するというようなことも考えられます。
このような場合、企業側が違法ということになるのですが、その判断も難しいですよね。
そこでここでは許可制であっても副業が許可されるべき場合と生じる問題とその対処法をまとめていきます。
上述した通り、企業が副業禁止規定を記載する理由としては、主に企業側の損害の発生を防ぎたいからでしたね。
対して業務時間の重ならない副業は原則としてしてもいいことを考慮すると、具体的損害が想定しがたい場合(もしくは具体的損害を算定すらしていない場合)は企業は副業を許可しなければならないことになります。
詳細に述べると、まず労働時間や本業の業務内容、副業の業務内容を考慮しても、副業の時間が本業と被っておらず、かつ副業の頻度も少ないので、本業に与える影響が少ないといえる場合です。
例えば会社で事務作業をしている人が、年に1, 2回程度その作業と関係のないアルバイトをすることは可能だと思われます。
さらに先程の塾講師Aさんの例でも、例えば塾の会社が塾講師個人に教育方針や教育テキストなどを裁量にゆだねていて、研修等も特に行っていないなど、企業のノウハウ流出がほとんど考えられないような場合であって、本業塾の方が料金が安いなど顧客流出が想定し難い場合であれば副業は可能でしょう。
このように企業が副業を許可しなければならないと言えるにはその企業特有の様々な事情を考慮する必要があります。
許可なく副業を行ったりした場合や違法な副業禁止規定であっても、それに従わなかった場合、企業から懲戒処分(解雇、減給、停職、戒告など)を受けたり他にも何らかの不利益を受ける可能性があります。
しかし、実際に行った副業の内容が、企業が副業を許可するのが客観的に見て妥当と判断されるようなものであった場合、上記のような不利益処分は違法であるとみなされる見込みがあります。
そのような場合は迷わず地域の労働基準監督署や弁護士に相談しましょう。
法的見地から見て副業禁止すべきでないと判断されるのならば、懲戒処分を実質的に無効にしたり損害賠償請求ができます。
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みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。