不当解雇・退職勧奨の
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不当解雇で仕事を辞めさせられたとき、会社を訴えたいけれど具体的に何をすればいいのかわからない人も多いと思います。
今回の記事では、不当解雇で会社を訴える場合、どんな補償を請求できるのか、どういう手順で請求するのかについて解説します。
目次
不当解雇とは、労働基準法などの労働法の規定や会社の就業規則などに違反して、従業員の意思に関係なく会社が一方的に労働者を解雇することです。
不当解雇の種類は、法律で禁止されている解雇を行う場合と、解雇権濫用にあたる場合とに分けることができます。
労働基準法などで解雇が制限または禁止されているにもかかわらず、会社が解雇を行った場合は不当解雇となります。主な制限・禁止は下記の通りです。
労働基準法第19条では、下記期間の解雇制限(解雇の禁止)を規定しています。
労働契約法第16条には「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とする」と規定されています。つまり、会社が解雇権を濫用した場合は、解雇は無効です。
裁判でも問題となるのが「客観的に合理的な理由」や「社会通念上相当」をどう判断するかです。解雇権の濫用とみられる事例をご紹介します。
新入社員が十分な教育・訓練を受けないまま業務に就き、うまく仕事ができなかった場合、「能力不足、成績不良」」は客観的合理的な理由にはなりません。これを理由に解雇すれば不当解雇になります。
就業規則にない事由で懲戒解雇することは、不当解雇にあたります。労働基準法第89条で、懲戒処分を行うには懲戒事由を就業規則に記載することを定めているからです。
たとえば、業務上横領など悪質な犯罪行為であっても、就業規則に定めがなければ懲戒解雇も退職金の支払い拒否もできないのです。
会社の売上や利益が減少していても、財務内容に余裕がある場合や黒字を確保している場合、業績不振を理由とした整理解雇は不当解雇になる可能性が高いです。
整理解雇は従業員に責任のない会社都合の解雇であるため、整理解雇が有効かどうかは下記事項を考慮して厳しく判断されます。
「不当解雇で訴える」というフレーズをよく耳にしますが、具体的には何を請求するのでしょう。慰謝料や損害賠償と答える人が多いと思いますが、訴訟の目的は主に下記3つの請求になります。
裁判などで解雇が不当であることを主張し会社に解雇の撤回を求めることを、「解雇無効の訴え」または「地位確認(※)の請求」といいます。
(※)解雇は無効なので現在も社員としての地位にあることの確認
解雇が無効と認められれば、「会社への復帰」や「解雇された日から現在までの賃金の請求」が可能となります。
ただし、実際には会社と従業員の関係が悪化していて復職を希望する人も少ないので、多くの場合、「解雇無効の訴え」は次で説明する「未払い賃金の請求」へのステップということもできます
解雇の無効が確定したら解雇日から現在までの賃金が発生するので、未払い賃金として請求することができます。懲戒解雇で退職金が支払われていないケースで、訴えにより普通解雇に切り替わったときは、退職金の請求も可能です。
実際の裁判では、解雇の無効が確定的になった段階で和解により和解金や解決金などの名称で金銭が支払われ決着するケースが多いようです。和解金の額は会社と従業員の話し合いで決まりますが、給与の数か月分から1年分くらいが相場です。
従業員が職場復帰を強く希望し会社が退職を望む場合、解雇日から現在までの未払い賃金相当額に、退職を前提として和解金が上乗せされるケースもあります。
慰謝料の請求(=損害賠償請求)は、解雇の無効ではなく不当解雇によって損害を受けたので慰謝料を請求するというものです。未払い賃金請求と比較すると、慰謝料請求は難易度が高くなるにもかかわらず見返りが少ない方法だといえます。
慰謝料を請求するには、会社が不法行為を行ったことを立証しなければなりません。不法行為とは「故意・過失により相手の権利を違法に侵害し損害を与えること(民法709条)」で、不法行為が認められるのは不当解雇の中でより違法性が高いケースに限られます。
未払い賃金は不当解雇が認められれば請求可能ですが、慰謝料の請求には、より難易度の高い不法行為の立証が必要となります。
また、慰謝料の金額は裁判事例では数十万円から100万円くらいが相場だといわれ、相場が給与の数か月から1年分くらいの未払い賃金請求と比べると見劣りします。ただし、金額の大小はケースバイケースで、セクハラ問題が絡む場合などでは慰謝料の方が高額になることもあります。
不当解雇を直接、または労働組合を通して会社に訴えたり、労働基準監督署に相談するという方法もありますが、裁判所に訴える場合の手順は下記の通りです。
解雇理由証明書は、会社が解雇した従業員に対して発行するもので解雇理由が記載されています。退職する従業員が請求すれば、会社は退職理由(解雇の場合は解雇理由)を証明する書類を発行することが法律で義務付けられています。
会社から証明書を取り付けて解雇理由を確認し、納得が出来なければ訴訟などを検討します。訴訟になった場合、訴訟を有利にするため会社が解雇理由を変更することもあるので、解雇されたらすぐに証明書を請求しましょう。
次に、訴訟などを前提として不当解雇を証明する証拠を収集します。解雇の内容によって証拠となる書類は異なりますが、下記のものが考えられます。
労働審判は、裁判官と労使の代表により3回以内の話し合いで問題解決を図る制度です。いきなり裁判で争うという方法もありますが、裁判にかかる費用と時間を考えれば、まずは労働裁判の選択をおすすめします。
労働審判の結果に不服があるときは、審判の日から2週間以内に裁判所に対し「異議の申立て」ができます。申立てがなければ労働審判は確定し,裁判上の和解と同一の効力を持つことになります。
労働審判で異議の申立てがあった場合や、直接訴訟を起こした場合は裁判になります。裁判をする場合は通常、事前に弁護士を選任してそのアドバイスに従って訴訟を進めることになります。
労働審判は和解を前提に裁判を大幅に簡素化したものといえるので、会社と従業員の主張が大きく異なる場合や、争点が複雑になる場合には、労働審判を経ずに最初から裁判所に訴えるという方法もあります。
また、請求内容によって請求可能な期間(時効)がありますので注意しましょう。
みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。