出張先への移動時間は労働時間に入る?判例や労働時間の定義から解説

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2020年10月1日以降の自己都合退職者は、失業手当の給付制限期間が短縮される変更があります。

「出張先への移動時間が長くて大変だけど、これって労働時間に入ってるのかなあ?」

「そもそも出張中のどこからどこまでが労働時間なんだろう?」

普段から仕事でよく出張されている方は、こんな疑問を抱えているのではないでしょうか。

移動時間が労働時間としてカウントされるなら給料の額も変わってくるはずですから、気になるポイントですよね。

今回は出張先への移動時間は労働時間に含まれるのか、含まれるとすればどのようなケースがあるのかについて解説します。

出張中の労働時間が正しくカウントされているか不安な方は、ぜひ最後まで確認してみてください。

出張時の移動時間は労働時間に含まれる?

出張先に行くために早朝、あるいは休日中から移動を始めるという方も多いのではないでしょうか。

果たして出張時の移動時間は労働時間に含まれるのか、労働時間の定義も含めて確認していきましょう。

移動時間は労働時間にならないのが原則

基本的に、出張先等への移動時間は労働時間としては認められません。

労働時間の定義というのは明確に示されていませんが、厚生労働省が発表したガイドラインでは「使用者の指揮命令下に置かれている時間」「使用者の明示または黙示の指示により労働者が業務に従事する時間」とされています(平成29年1月20日付基発0120第3号)。

そのうえで移動時間は車や電車に乗っている必要こそあるものの、何をするかは基本的に労働者の自由であるため、原則として労働時間には当てはまりません。

また実際に、「移動時間は労働拘束性の程度が低く、これが実勤務時間に当たると解するのは困難である」とした横河電機事件(東京地裁・平成6年9月27日判決)、「出張の際の往復に要する時間は労働者が日常の出勤に費やす時間と同一性質である」とした日本工業検査事件(横浜地裁・昭和49年1月26日決定)のような裁判例もあります。

移動時間は労働時間に含まれない、というのが共通認識であることは押さえておきましょう。

休日中に移動しても労働時間に入らない

遠方への出張だと、休日中に移動しなければならないケースも多くあります。

しかしこの場合も同様に、移動しているだけであれば拘束性は低いとみなされ、労働時間としては認められません。

したがって、休日に出張先に移動し始めたからという理由で手当や割増賃金を受け取るのは難しいといえます。

ただし、出張の多い会社であれば労働者の負担を考慮して何らかの手当を支給してくれる場合もありますから、事前に確認しておくのが良いでしょう。

所定労働時間にはカウントされる

「移動時間が労働時間に入らないなら、所定労働時間内に出張先へ移動した場合はどうなるの?」と疑問を持った方もいるかもしれません。

そもそも出張日は、いつからいつまでが移動時間で労働時間は何時間なのかを会社が正確に把握するのは困難です。

そのため多くの企業では、事業場外で業務を行って労働時間が計算しづらい場合は所定労働時間労働したものとみなす、というみなし労働時間制が適用されます(労働基準法第38条の2第1項)。

したがって、所定労働時間内に移動したため労働時間が減って給与が控除されてしまう、ということはありません。

また、みなし労働時間制は就業規則に規定されている必要があるため、こちらも先にチェックしておくのが良いでしょう。

出張時の移動時間が労働時間に入るのはどんな時?

原則として移動時間は労働時間に含まれないということを確認しました。

しかし、中には出張先への移動時間を労働時間として認めてもらえるケースもあります。

どんな場合があるのか見ていきましょう。

移動によって機材や物品を運搬した場合

一つ目は、会社からの指示を受けて物品や機材、書類などを運搬するような場合です。

この場合は移動時間中も会社の命令に沿って業務をこなしているということになるため、労働時間に含まれます。

ただし、出張先に自分で必要だと判断したものを携行するぐらいだと、このケースには当てはまりません。

運搬すること自体が出張の目的になっているような状況でなければ、業務として認められるのは難しいと考えておくべきでしょう。

上司に同行し、移動中に業務を行う場合

二つ目は、移動時間中に上司と仕事の打ち合わせ、資料作成などの業務を行う場合です。

この場合は上司が監督者となり、その指揮命令下にいる労働者が業務を行うことを強いられていると判断できるので、労働時間としてカウントされます。

ただし、上司とともに行動していても飲食したり談笑したりしているだけであれば当然労働時間としては認められません。

また、出張中でも上司が労働者の正確な労働時間を把握できるのであればみなし労働時間制は適用されないので、注意しましょう。

出張前後に会社に立ち寄った場合

三つめは、出張の前後で会社に立ち寄らなければならない場合です。

この場合、出張前後に会社に立ち寄ることを指示されているのであれば一定の労働拘束性があると判断できるため、移動時間であっても労働時間として認められます。

実際に、使用者が従業員に現場に向かう前に事務所にくるように指導したため、その移動時間は使用者の指揮監督下にあり、労働時間であると認められた総設事件(東京地裁・平成20年2月22日判決)のような裁判例もあります。

しかしたとえ会社に立ち寄るのがルールのようになっていても、指示されたと明確に判断出来ない場合は移動時間を労働時間に含めることはできません。

阿由葉工務店事件(東京地裁・平成14年11月15日判決)では、事務所への立ち寄りは労働者の間で任意に定められた事項であるため、移動時間は使用者の指揮命令下に置かれている時間には当たらない、という判断がなされました。

また、出張帰りに「やり残した仕事がある」「忘れ物をした」といった個人的な理由で会社に立ち寄る場合でも、拘束性がないため同様の判断になります。

後で会社とトラブルを起こさないためにも、どこから労働時間に含まれているのかを都度確認しておくようにしましょう。

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