不当解雇・退職勧奨の
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新型コロナウイルス感染症の影響で解雇される人が増えています。もしかしたら自分の会社でも、と不安を感じている人もいるかもしれません。
今回の記事では、法律上認められる正当な解雇と法律違反となる不当解雇、具体的事例や不当解雇への対応策について解説します。
目次
解雇とは、従業員の意思にかかわらず、会社(使用者)の一方的な通知によって労働契約を終了させることです。
解雇には、「普通解雇」「懲戒解雇」「整理解雇」の3種類があります。
普通解雇は、下記の従業員の個人的な状況を理由にした解雇です。
ただし、労働契約法第16条には「使用者は、客観的合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、労働者を解雇できない」という定めがあり、会社の勝手な判断で解雇されるわけではありません。
懲戒解雇は、会社の規律や秩序に反した従業員に対して懲戒として行なわれる解雇です。就業規則に定めがあれば、退職金が支払われないこともあります。懲戒解雇の理由としては下記が考えられます。
懲戒処分に関しても、労働契約法第15条で「使用者が労働者を懲戒できる場合、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は権利を濫用したものとして懲戒は無効」と定めがあり、一定の制約が課せられています。
整理解雇は、会社の経営不振などを理由に解雇せざるを得ない場合に、人員削減のために行う解雇です。
従業員に責任のない会社都合の解雇であるため、下記要件を満たさないと会社は解雇できません。
不況、経営不振など企業経営上やむを得ない人員削減措置であること
配置転換、希望退職者募集など解雇回避のために努力したこと
整理解雇の対象者を決める基準が客観的・合理的で運用も公正であること
労働者などに対し解雇の必要性・時期など、納得を得る説明を行うこと
会社が解雇を行うときの重要なルールが「解雇予告」です。労働者が突然の解雇で生活に困らないようにするため、労働基準法第20条で下記ルールを定めています。
予告を行わない場合に支払われる1か月分の賃金を、「解雇予告手当」といいます。解雇予告をされた日から15日間は仕事を継続し残り期間を自宅待機したときは、残り期間分に対する解雇予告手当が支払われます。
正当な解雇理由がある場合でも、解雇予告や解雇予告手当の支払いなしで即時解雇されたら、労働基準法第20条違反となります。
解雇は労働者とその家族の生活に大きな影響を与えるため、企業が好き勝手にできるものではなく、労働基準法などで厳しく制約を課しています。下記で解説する法律に違反する解雇は、明白な不当解雇といえます。
労働基準法第19条では、労働者保護の観点から下記期間の解雇制限(解雇の禁止)を規定しています。
この期間中は、たとえ労働者に懲戒解雇に該当する事由が発生しても、会社は解雇できません。ただし、下記ケースにおいては会社に解雇が認められます。
※労働基準監督署に申告して認定を受ける必要があります。
労働基準法による解雇制限のほか、下記理由による解雇を法律で禁止しています。
上記以外にも「労働者の国籍、信条、社会的身分を理由とした解雇」や「女性であることを理由とした解雇」などが、法律上禁止されています。
法律で明確に禁止されている解雇のほか、客観的に合理的な理由を欠く場合や社会通念上相当であると認められない場合の解雇は不当解雇にあたります。
「客観的に合理的な理由」や「社会通念上相当」に該当するかどうかの判断は難しいケースもあり裁判で争われることもあります。下記にて具体例を紹介します。
単に営業成績が悪い、仕事ができない、というだけでは解雇はできません。
新入社員や未経験者が十分な教育・訓練を受けないまま業務に就き、うまく仕事ができないから能力不足と判断するのは、客観的合理的な理由はなく社会通念上も相当と認められないでしょう。これを理由に解雇すれば不当解雇になります。
配置転換で不得手な部署に異動させられた場合も同様です。会社が最適な人材配置を怠った結果で、場合によっては配置転換による退職勧奨とみることもできます。
遅刻や早退を繰り返し会社がいくら指導しても効果がなく、今後も改善が見込めないと判断して解雇した場合は、裁判でも不当解雇に該当しないと認められる可能性が高いでしょう。
しかし、短時間の遅刻や数回の遅刻での解雇ならば、社会通念上は相当とはいえません。また、会社が指導することなく遅刻を放置していた場合も、不当解雇に該当すると思われます。
業務上の横領をした従業員を懲戒解雇した場合でも、不当解雇になるケースがあります。就業規則の懲戒規定に「横領すれば懲戒解雇」といった根拠規定がない場合です。
理由は、労働基準法第89条で「懲戒処分を行うには、就業規則にその種類・程度を記載しなければならない」と規定されているためです。懲戒解雇に限らず就業規則にない懲戒処分はすべて違法となります。
しかし、会社が横領した従業員を普通解雇することは妥当であり、従業員に対して損害賠償を請求することもできます。
前述の通り整理解雇は、従業員に責任のない会社都合の解雇であるため、4つの要件を満たさないと解雇できません。要件未達なら不当解雇になります。
たとえば、解雇を行う一方で新規採用をしていれば「人員削減の必要性」はなく要件未達と判断できます。また、希望退職者募集などの解雇回避のための努力をしなかった場合も同様です。
すべての要件を満たさなければ整理解雇には該当せず不当解雇になります。
不当解雇された場合、労働者には解雇の取り消しを請求したり損害賠償請求を行う権利があります。ケースに応じて下記対応を検討してみましょう。
不当解雇を理由に、労働者は会社に対して解雇の取り消しと職場への復帰を請求することができます。会社から納得できる対応がなければ、裁判で解雇の取り消しを請求する方法もあります。
しかし、会社が解雇を取り消した場合でも、会社との関係が気まずくなって会社を辞めるケースが多いのではないでしょうか。その場合は、不当解雇された日から辞職するまでの賃金を請求することも可能です。
不当解雇を訴えても会社が対応してくれない場合や、どう対応していいかわからない場合は、労働基準監督署に相談するのも1つの方法です。労働基準監督署で有効なアドバイスが受けられたり、明らかな違反がある場合は、会社に直接、指導・勧告してくれるケースもあります。
ただし、労働基準監督署には、「客観的に合理的な理由」や「社会通念上相当」に該当するかどうかを判断する権限はないので、判断が必要な場合は裁判によって判決を受ける必要があります。
解雇の取り消しや職場復帰ではなく、会社に対して不当解雇による損賠賠償を請求する方法もあります。会社に請求して認められなければ、訴訟を起こすことも選択肢の1つです。
みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。