労働条件が違う場合にどのような法律関係になるか・対処方法を確認

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2020年10月1日以降の自己都合退職者は、失業手当の給付制限期間が短縮される変更があります。

求人募集に書いている条件や、内定後に明示された労働条件について、実際に働いてみると違うということがあります。

入社後に言われていた労働条件と違う場合もあれば、仕事をしているうちに変わったということもあるでしょう。

このページでは、当初の労働条件と違う状態で働くことになった場合の対処法についてお伝えします。

労働条件の明示に関する法律の規制はどうなっているか

まず、労働条件の明示について法律の規制がどのようになっているかを確認しましょう。

求人募集に関する職業安定法65条の規定

求人募集に関して、職業安定法65条は次のように定めています。

次の各号のいずれかに該当する者は、これを六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

九 虚偽の条件を提示して、公共職業安定所又は職業紹介を行う者に求人の申込みを行つた者

つまり、求人募集の段階で実際の労働条件とは違う条件を明示することを禁止しています。

ただ、実際にはこの条文が適用されて使用者が罰則を受けることはないのが現状です。

なぜなら、求人の段階ではこのような労働条件だったけども、採用時には新しくなっていて、そのことは本採用の際に伝えて明示してある、というようなことで取り締まれないのです。

労働条件の明示(労働基準法15条1項)

労働契約の締結に関しては、労働基準法15条1項は次のように規定しています。

使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

労働基準法15条1項

この規定を受けた厚生労働省令である労働基準法施行規則5条1項で次の事項について明示を義務付けています(絶対的明示事項)

  • 労働契約の期間に関する事項
  • 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項
  • 就業の場所及び従事すべき業務
  • 始業及び終業の時刻
  • 所定労働時間を超える労働の有無
  • 休憩時間
  • 休日
  • 休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
  • 賃金
  • 退職に関する事項(解雇の事由含む)

また、以下の事項に関する定めをする場合にも明示が義務付けられます(相対的明示事項)。

  • 退職手当に関する事項
  • 臨時の賃金、賞与、最低賃金額に関する事項
  • 労働者に負担させるべき食費、作業用品などに関する事項
  • 安全及び衛生に関する事項
  • 職業訓練に関する事項
  • 災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
  • 表彰及び制裁に関する事項
  • 休職に関する事項

明示の方法は、昇給に関する事項を除く絶対的明示事項については労働基準法施行規則5条4項において、原則として書面ですることが義務付けられています。

また、法令上の義務ではありませんが、相対的明示事項についても、絶対的明示事項と合わせて書面で明示するよう強く行政指導が行われています(平成11年2月19日基発81号)。

実務的には、採用時に様々な手続きをしますが、その際に労働条件通知書を受け取ることが多いといえます。

この労働条件の明示をしない場合には、労働基準法120条で30万円以下の罰金刑に問われます。

入社後に労働条件が違った場合にはどのような対応ができるか

以上のような労働条件の明示があるものの、実際に働いてみると労働条件が違うということがあります。

この場合にはどのような対応が可能でしょうか。

求人票の内容と実際明示された労働条件が違う場合

たとえば、求人票には残業なしと明記されていたにも関わらず、労働条件通知書には残業あり、と書いている場合があります。

上記の場合、基本的には労働条件通知書に記載されている内容が契約内容となるので、残業をさせられることになる可能性が高いです。

どのような事情で求人票の記載と労働条件通知書の記載が違うのかを確認した上で、場合によっては内定を辞退することも検討しましょう。

実際に働いてみると労働条件通知書と違う場合

求人票でも労働条件通知書でも残業なしと記載があっても、実際に働いてみると残業があった、というように労働条件通知書に記載されていることと実際が違う状態であった場合にはどうなるのでしょうか。

この場合、について労働基準法15条2項・3項は次のように規定しています。

2項

前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。

3項

前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から14日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。

労働基準法15条2項・3項

つまり、労働者は即時に労働契約を解除することができ、もしこの就職にあたって引っ越しをしており、契約解除から14日以内に戻る場合には、会社がその旅費の負担をしなければならないとしています。

また、この条項によって契約を解除した場合には、失業保険の給付について、自己都合退職ではなく、「特定受給資格者」として会社都合の退職のように扱われます。

法律上とりうる対策としては、有利な条件で退職する、という内容になります。

ほとんどの方が、会社に明示された労働条件通知書の内容をまもらせる、ということを希望するかと思いますが、このようなことをさせる強制力は無いのが現状です。

使用者に課される刑事罰

帰郷費用を出さない使用者には、労働基準法120条において労働基準法15条違反には30万円以下の罰金が定められています。

入社後に労働条件が変わる場合について

会社の経営上の必要によって、労働条件を変更する必要性がある場合もあります。

労働条件の変更をすることはできないのでしょうか。

労働条件の変更の方法

一定の労働条件をもとに契約をしているのであって、使用者が一方的に労働条件を変更させることができるとすると、労働条件を明示させることに意味がないのでできません。

しかし、社会情勢や会社の経営状態などによって、労働契約の内容を変更させる必要性がある場合もあります。

その方法としては次の3種類があります。

  • 個別の労働契約を結びなおす
  • 就業規則の変更
  • 労働協約の変更

以下それぞれの方法について確認しましょう。

個別の労働契約を結びなおす

まず、個別の労働契約を結びなおして労働条件を変更すること自体は認められます(労働契約法3条は変更についても規定がある)。

労働基準法などの労働法規や就業規則に違反しないような変更である必要があります。

もし一方的に不利な条件を押し付けられるような場合には、労働契約の更新を拒否しても法律上は違法ではありません。

就業規則の変更

就業規則の変更に関する労働契約法10条は次のように規定されています。

変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする

文言としては長く複雑なのですが、労働者が受ける不利益や変更の必要性が合理的なものといえる場合には変更後の就業規則が労働条件になるとされています。

合理性があるといえるかどうかについては、個別具体的な判断になるので、自分の場合どうなのかは、専門家に相談するのが妥当でしょう。

労働協約の変更

労働協約がある場合には、就業規則に優先されます(労働契約法13条)。

この労働協約の変更をすることで、労働条件の変更をすることが可能です。

この労働協約を不利益に変更することは、朝日火災海上保険事件(最判平成8年3月26日)で、変更内容が不合理でなければ効力が生じるとしています。

労働協約の効果は、労働組合に加入している組合員にのみ生じるのが原則ですが、その組合が事業所の3/4以上の従業員を組織している場合には、非組合員にも効力が及びます。

加入している労働組合が不利益な労働協約に合意したような場合には、内容の合理性があるかどうかを相談してみることを検討しましょう。

まとめ

このページでは、労働条件が違う、という場合を、入ってから分かった場合と、入ってから不利益に変更された場合についてお伝えしてきました。

法律上の規定を中心にお伝えしてきましたが、自分がどのような状況におかれていて、どのように対処すべきかは人によって異なります。

解決を目指すためにはどのような行動を撮るのが適切かについて、まずは弁護士に相談してみるようにしてみましょう。

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