不当解雇・退職勧奨の
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解雇や雇止め、いじめや嫌がらせなど、仕事上起きる問題はさまざまです。
不当に解雇などをされた場合には、会社と争いたくもなりますし、いじめなどを受けている場合には、職場環境を改善してもらいたいと考えるのが通常です。
この記事では、労働紛争を解決する手段としての「あっせん」の意味や手続きの流れなどを解説します。
あっせんにまつわる実例も紹介していますので、自身のケースと照らし合わせて利用することを検討してみてください。
目次
労働紛争の当事者になってしまった場合、少しでも早く解決したいという思いから焦燥感に駆られることもあると思います。
労働紛争を解決する手段としてあっせん制度があるということを知っている方は、すぐに制度を利用しようと考えるかもしれません。
ですが、あっせん制度を利用するには、手順を踏む必要があり、また、あっせん制度を十分に理解しておくことが必要です。
まずは、あっせん制度の概要を押さえて、同制度を利用するための手続きについて見ていきましょう。
個別労働紛争解決制度とは、労働条件や職場環境など、労働に関する一定の紛争を解決する制度です。
同制度は、大別して、「労働相談」、「助言・指導」、そして、「あっせん」の3つに分かれています。
ここでいう「あっせん」とは、労働問題の専門家(弁護士など)が紛争当事者の間に入り、お互いの主張をまとめ、話し合いを進めていくことで紛争解決を図る方法です。
もっとも、すべての労働紛争において、あっせん制度を利用できるわけではありません。
あっせん制度は、労働に関する紛争のうち、以下の紛争を対象としています。
たとえば、労働者間の紛争や裁判で係争中の紛争などは、これらにあてはまらないため、あっせん制度を利用することはできません。
あっせん制度を利用するためには、その前提として踏まなければならない手続きがあります。
具体的には、労働紛争を抱えている労働者は、まず始めに、各都道府県の労働局に設置されている総合労働相談コーナーに労働相談を行い、助言・指導の申し出を行うことが必要です。
これを受けて、都道府県労働局は、紛争当事者に対し、紛争の問題点や解決の方向性を示すなどして、助言・指導を実施します。
この段階で、紛争が解決すると手続きは終了となりますが、解決しなかった場合には、あっせん制度を利用することが可能です。
あっせん制度には、以下のような特徴があります。
このように、あっせん制度を利用する場合、裁判とは異なり費用が一切かからないため、労働者が経済的な負担を負うことはありません。
また、いじめや嫌がらせなどの職場環境に関する紛争は、人によっては、知られたくない内容を含むものです。
この点、あっせん制度では、手続きが非公開であるため、プライバシーが十分に保護されています。
さらに、制度を利用したことを理由として、事業主が不利益な取扱いをすることは法律上禁止されているため(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第5条2項、同4条3項)、制度の利用に懸念を抱く必要もありません。
それでは、労働者によりあっせんの申請が行われた場合、事業主は必ずあっせんに参加しなければならないのでしょうか。
あっせん制度は、あくまで紛争当事者による話し合いを前提とした手続きであり、参加することが強制されるものではありません。
そのため、労働者があっせんを申請した場合であっても、事業主はこれに対し不参加とすることが可能です。
事業主が不参加を選択した場合には、手続きを行うことができず、不成立となるため、解決を図ることはできません。
あっせん手続きは、あっせんの申請とあっせんの実施という2つの場面に分けることができます。
労働紛争を抱える労働者は、各都道府県の労働局に設置されている総合労働相談コーナーにあっせん申請書を提出しなければなりません。
申請書を受理した都道府県労働局長は、必要に応じて申請人から聴取りを行うなどして、紛争の事実関係を明らかにしたうえで、紛争調整委員会にあっせんを委任するかどうかを決定します。
委任を受けた紛争調整委員会は、紛争当事者に対しあっせん開始を通知し、あっせんの手続きに参加するかどうかを確認します。 この時点で、事業主から不参加の意思表示があった場合には、あっせんは実施されずに打ち切りです。
事業主から参加の意思表示があった場合、あっせんが実施される期日が指定されます。
あっせん委員は、期日において、紛争当事者の主張を確認し、必要に応じて参考人から聴取りを行います。
また、あっせん委員は、紛争当事者間の調整や話合いの促進、紛争当事者双方が希望する場合には、両者に対して、具体的なあっせん案を提示します。
あっせん案について、紛争当事者の双方が合意すると紛争は解決しますが、合意が成立しなければ、あっせん手続きは打ち切りです。
紛争調整委員会によるあっせん手続きを利用して、実際に解決した2つの事例を以下でご紹介します。
正社員として勤務していた申請人は、某日、即日解雇を言い渡されるとともに、解雇予告手当の支払いを受けました。
退職証明書には、「職務中の携帯電話の不適切使用」などが解雇理由として挙げられていたのです。職務中に携帯電話を使用している社員は、申請人の他にもいたため、申請人はこの解雇理由に納得できませんでした。
そこで申請人は、解雇の撤回、もしくは経済的損失・精神的苦痛に対する補償として賃金10か月分に相当する200万円の支払いを会社に求めたいとしてあっせんを申請しました。
あっせん委員が双方の主張を確認したところ、被申請人(会社側)の主張は、申請人が職務中に頻繁に携帯メールのやりとりをしていたというものでした。
そのうえで、被申請人は、申請人の復職には応じられないものの、解決金として申請人の賃金3か月分に相当する50万円を支払う意向を示しました。
被申請人の意向を受けて、あっせん委員は、申請人に対し、解決金の金額について譲歩する意思があるか否かを確認したところ、申請人から80万円程度であれば譲歩できるという考えが示されました。
これを受けて、あっせん委員は、再度、被申請人に対し、解決金の金額について譲歩を促したところ、被申請人は同意したため、申請人が譲歩可能とした80万円を解決金として支払うことで合意が成立し、紛争は解決しました。
有期労働契約(1年間)を締結して勤務していた申請人は、リーダーから無視されたり、机を蹴られるなどの言動を受けていました。
リーダーによる嫌がらせはエスカレートし、通常の2倍以上にあたる仕事量を押しつけられるようになったため、申請人は、この職場環境で仕事を続けることは困難であると判断し、退職しました。
その後、会社側と数回の話し合いを持ちましたが解決には至りませんでした。
そこで申請人は、契約期間が満了する前に退職せざるを得なかったことに対し、30万円程度の補償を求めたいとしてあっせんを申請しました。
あっせん委員が双方の主張を確認したところ、被申請人(会社側)は、リーダーに程度を超える言動があったことは認めたものの、パワーハラスメントにあたるような言動はなかったと主張しました。
そのうえで、解決金として15万円を支払う意向を示しました。
申請人は、この解決金額に同意したため、解決金として賃金1か月分に相当する15万円を支払うことで合意が成立し、紛争は解決しました。
みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。