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歩合制は成果を出せば出すほど給与が上がるのがメリットです。
しかし、逆を言えば、成果を出せなければ給与が上がらないことを意味します。
特に、完全歩合制の場合「もし1件も契約を得られなければ、その月の給与は0なの?」と不安を抱くでしょう。
どちらかというと、歩合制という仕組みは、労働者にとっては厳しい制度といえるのではないでしょうか。
今回は、労働者の保護を目的とした法律「労働基準法」が歩合制について、どのように述べているのかまとめました。
歩合制の正しい知識が欲しいとお考えの方は、ぜひご一読ください。
目次
まずは、歩合制のメリット・デメリットを解説します。
歩合制という形態が自分に向いているか判断するには、メリットとデメリットを正しく把握することが大切です。
歩合制の大きなメリットは、収入が青天井であることと、働くモチベーションが維持しやすい点の2つです。
詳しく解説していきます。
歩合制は成果を挙げるほど給与もアップするため、固定給に比べて大きく稼ぎやすい点がメリットです。
例えば、売上の5%が歩合給として加算される車の営業職では、300万の車を1台売り上げれば、15万円が給与額にプラスされます。5台売り上げれば、75万円です。
一方、固定給の場合、これだけの大幅な上昇は見込めません。
固定給で給与を増やしたければ、残業を多くこなすか、年に数回の昇給の機会を待つ必要があります。
実力があり結果にコミットできる人にとって、歩合制はたくさん稼げる夢のあるシステムと言えるでしょう。
仕事の成果が収入に直結するため、「もっと結果を残そう」と仕事を頑張るモチベーションを得やすいです。
成果を出すために自ら創意工夫をするようになるので、生産性の向上も期待できます。
日本の企業では、同じ会社での勤続年数が長くなるにつれて徐々に給与が上がっていく、年功序列という慣習があります。
年功序列の下では、頑張っても頑張らなくても同期入社であればほとんど給与額が変わらないため、モチベーションが失われやすいです。
昨今は成果主義・実力主義の考えが台頭してきたことで、年功序列を採用する企業は減ってきています。
年功序列の企業では働きたくないという人に、歩合給はおすすめです。
次は、歩合制のデメリットを解説します。
歩合制は、成果を挙げられない人にとっては、収入面・労働時間双方において、厳しい働き方を強いられるといえます。
歩合制で働くなら、業務内容に見合うスキル・経験を備えているか、よく確認することが大切です。
歩合制は、良くも悪くも毎月の収入の変動幅が大きくなりがちです。
先に紹介した例では、車を5台契約した月と1台しか契約できなかった月では、60万円も月額給与に変動が生じています。
さらに、個人事業主やフリーランスが完全歩合制で働く場合、最悪、月の収入が0になるケースも考えられます。
収入の変動幅が大きいと、安定した将来設計を組むのが難しくなりやすいです。
例えば「5年後には結婚してマイホームを購入できるよう、1,000万円貯金しよう」といった未来予想図を立てても、収入が一定ではないため、固定給に比べると貯金が難しくなります。
営業など歩合制が多い職種では、ノルマが課せられるケースが多いです。
ノルマの水準が高すぎたり能力不足だったりすると、ノルマを達成するために深夜残業や休日出勤をしなければいけないリスクがあります。
歩合制では、企業側は、成果を出せない社員に対して、雇止めや解雇を行うこともあるので、ノルマを達成できない状況が続けばクビにされるかもしれません。
ブラックな労働環境に陥りやすいので、歩合制で働く際は十分に注意してください。
歩合制は労働者にとって甘くはない制度ですが、法律上はどのように規定されているのでしょう。
労働者の保護を目的とし、労働条件の最低基準を示している労働基準法という法律があります。
労働基準法上では、歩合制という制度自体は問題ありませんが、従業員に対する「完全歩合制」は違法です。
この点、詳しく解説していきます。
歩合制は、大きく「固定給+インセンティブ」「完全歩合制(フルコミッション)」の2つに分かれます。
「月給30万円+歩合給」と書かれた求人は「固定給+インセンティブ」の一種です。また、完全歩合制は、不動産や営業職の求人でよく見受けられます。
両者の違いは、成果に対応しない部分の給与が存在するか、つまり必ず支給される給与があるのかという点です。
完全歩合制の場合、ベースが存在しないため、契約が1件も獲得できなければ、給与も0になります。
そして、重要なポイントは「従業員に対する完全歩合制は労働基準法に違反する」という点です。
つまり、正社員やパート、アルバイトなど雇用契約においては完全歩合制は適用できないのです。
正社員で完全歩合制と謳っている求人は法律違反なので、求人探しの際はくれぐれも注意ください。
「従業員に対する完全歩合制が違法」となる法的根拠は、労働基準法第27条(出来高払制の保障給)です。
労働基準法第27条には、出来高払制で使用する労働者に対して、使用者は労働時間に応じた一定の賃金を支払わなければいけない、とあります。
つまり、労働時間が8時間であれば、その8時間分に対応する賃金が支払わなければいけないのです。
完全歩合制の場合、賃金全てが成果に応じて支払われることになるため、労働基準法第27条に違反しています。
雇用する営業マンに対して「君は今月1件も契約できなかったから、給料は0ね」と言うのは、完全に違法です。
多くの方が気になるのが、条文にある「一定の賃金」の「一定」とはどの程度の水準を指すのかという点でしょう。
具体的な基準は述べられていませんが、一般的には平均賃金の60%程度が最低水準だと考えられています。
60%という率は、休業中の労働者に対して支払われる休業手当が平均賃金の60%であることなどから導かれます。
この一定額の保障給が支払われない場合、会社側は罰則として、30万円以下の罰金に科せられる恐れがあります。
雇用されて働く場合、労働基準法に抵触するため、完全歩合制では働くことができないと解説しました。
しかし、職種によっては完全出来高払が適している職種もあります。
また、固定給があるからといって安心はできません。違法な働き方を強いられるリスクはあります。
最後に歩合制の仕事で働く際の注意点を2つ紹介します。
労働基準法のほかに、労働者の賃金について規定した法律が、最低賃金法です。
労働者の生存権を保障するために、賃金の最低水準を提示し、労働者保護をはかっています。
最低賃金法には、地域ごとに実情に応じた最低賃金が定められるとしています。令和2年度の最低賃金(1時間当たり)は、以下の通りです。
歩合制の企業で働く場合、上記の最低賃金に抵触する恐れがあります。
特に固定給の額が低いと、そのような現象が起こる可能性が高くなります。
仮に固定給が15万円でインセンティブが0の場合、月160時間働いたとすると、時給は1,000円を下回ります。東京で勤務するなら、最低賃金以下です。
最低賃金以下で働かされないためには、固定給の水準を確認しましょう。
安定した生活の保障のためにも、固定給部分は高い方が良いでしょう。
労働基準法は雇用される従業員の保護を目的としているため、雇用契約ではない、業務委託契約は適用外です。
このため、フリーランスや個人事業主などが業務委託として働く場合、完全歩合制で働くことも可能です。
特に、デザイナーやコピーライターなどのクリエイティブ系の職種は、成果が全てであり、労働時間や業務の進め方等は労働者の裁量に任されているため、完全歩合制が適しているといえます。
業務委託契約で働く場合、以下のようなデメリットがあるのでご注意ください。
みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。