知っておくべき労働問題!!~雇止め・整理解雇のQ&A~

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目次

Q1、1カ月ごとの有期労働契約を繰り返し更新した労働契約の場合、雇止めはできますか。

A、1カ月の有期労働契約を繰り返し更新しても、期間の定めのない労働契約に転化するわけではなく、あくまで有期労働契約なので、1カ月の期間満了によって労働契約は終了します。

しかし、反復更新が常態化している場合には、「この1カ月後には労働契約を終了する」と雇止めの通知をしても、労働者にとっては不意打ちとなり、紛争化する可能性があります。

仮に、裁判となったとしても、特段の事情があれば労働契約が終了しないと判断されることもあります。

労働者の「雇用継続への期待」が法的保護に値するのか否かは、業務の内容・基幹性、雇止めの実績、反復更新の回数・年数、周囲の言動、更新手続きの厳格性、及び正社員と同様に就労していたかという要素によって決定されます。

この「雇用継続への期待」が法的保護に値するものだと判断されれば、労働契約は終了しないと判断されることになります。

法的には雇止めが認められる事案であっても、裁判紛争を起こさないために、協力的な労働者からは退職届を取得すべく話し合いを行うことが不可欠です。

また、非協力的な労働者に対しては、「今回が最後の更新」という特約付きで有期労働契約を更新したり、「遅くとも3カ月後の更新時には更新しない」といった特約も、場合によってはあり得ます。

しかし、このような特約だけで、雇止めが当然に認められるわけではなく、また、積み重ねられてきた雇用継続への期待が、特約に合意したことですべて消失するとは考えられません。

そもそも雇止め問題は、労働者の雇用継続への期待から生じるので、この期待を減らせば、紛争となる可能性も低くなります。

少なくとも、突然に雇止めとするよりは、「今回が最後」や「遅くとも3カ月後」という予告によって労働者の雇用継続への期待は小さくなったと考えられ、裁判となった場合のリスクも低減します。

Q2、不採算店の効率化の一環としてパートタイム労働者の雇止めを行いたいと考えていますが、この際、理由は必要ですか。

A、雇止めとは、期間満了を理由とする有期労働契約の終了をいいます。

有期労働契約を反復更新した場合、労働者に雇用継続への期待が生じて紛争の原因となるおそれがあり、裁判例も、一定の場合にこの期待を保護し、労働契約の終了を認めないと判断しています。

不採算店の効率化の一環としてパートタイム労働者の雇止めを行うとき、雇止め自体には期間満了以外の理由は必要なく、また、使用者と労働者との間の労働契約に付加して特段の理由が必要となるわけでもありません。

しかしながら、労働者が法的に保護されるべき雇用継続への期待を有する場合、使用者は終了の理由として相応の事情を用意する必要があります。

まず、雇用継続が法的に認められる可能性がきわめて高い場合、これに対抗できるだけの相応の事情として、解雇に比類する程度のものが求められます。

不採算店の効率化であれば、(1)経営上の必要性、(2)解雇回避努力義務の履行、(3)人選の合理性、(4)手続きの相当性の4点に関する事情が求められます。

しかし、パートタイム労働者については、長期雇用システム下にある正社員とは、解雇に比類する事情として求められる程度が異なり、解雇に比類するといっても、正社員ではなくパートタイム労働者の解雇に比類すればいいので、相当に軽度なものとなります。

実際に裁判所で争われれば、(1)(2)(3)はそれほど問題とはならず、(4)手続きの相当性が重視されることになります。

次に雇用継続への期待の法的保護がそれほど高くない場合、労働者が法的に保護されると誤解すれば紛争となってしまうので、紛争とならないための配慮が必要となります。

具体的には、「期間満了だから当然に契約終了とする」というものではなく、「不採算店の効率化のために更新できない」などと雇止めをする理由を丁寧に説明することが大切です。

Q3、有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準について、実務ではどのように対応したらよいですか。

A、「有期労働契約の締結、更新および雇止めに関する基準」(平成15年10月22日 厚生労働省告示357号)では、以下の内容を使用者に求めています。

(1)有期労働契約締結に際し、更新の有無を明示すること

(2)更新する場合がある旨を明示したときは、更新する・しないの判断基準を明示すること

(3)1年継続勤務等の一定の要件を満たす有期労働契約の雇止めでは30日前の予告をすること

(4)雇止めの理由について労働者請求により証明書を交付すること

厚生労働省の内部通達(「労働基準法の一部を改正する法律の施行について」平成15年10月22日 基発1022001号)では、(1)の更新の有無について、「自動的に更新する」「更新する場合があり得る」「契約の更新はしない」等を明示するものとしています。また、(2)の判断基準について、「契約期間満了時の業務量により判断する」「労働者の勤務成績、態度により判断する」「労働者の能力により判断する」「会社の経営状況により判断する」「従事している業務の進捗状況により判断する」等を明示するものとしています。さらに、(4)の雇止めの理由について、「前回の契約更新時に、本契約を更新しないことが合意されていたため」「契約締結当初から更新回数の上限を設けており、本契約は当該上限に係るものであるため」「担当していた業務が終了・中止したため」「事業縮小のため」「業務を遂行する能力が十分ではないと認められるため」「職務命令に対する違反行為を行ったこと、無断欠勤をしたこと等勤務不良のため」等を記載することを求めています。

しかし、同通達では、この雇止めに関する基準は有期労働契約の契約期間の満了に伴う雇止めの法的効力に影響を及ぼすものではないことが明記されています。

したがって、雇止めに関する基準自体に違反しても、直ちに雇止めが認められないわけでなく、裁判例でも、雇止めに関する基準が求める事項を明示しない場合や、30日前の予告がない場合でも、雇止めが認められているものがあります。

けれども、今後は、このような事項が雇止めの判断において重要となってくる可能性があり、また、紛争予防という見地からは、同基準を遵守すべきです。

Q4、再雇用後の契約更新基準に満たない高年齢社員に対し、雇用義務年齢未満で雇止めを行ってよいですか。

A、平成18年4月施行の高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(以下「高年齢者雇用安定法」)改正により、65歳未満の定年の定めをしている企業は、定年年齢の引き上げ、継続雇用制度の導入、定年廃止のいずれかの措置を講じることになり、当面、平成22

年3月31日までに定年を迎える労働者は63歳まで、平成25年3月31日までに定年を迎える労働者は64歳までの再雇用が認められます。

多くの企業は継続雇用制度として再雇用制度を導入し、法が求める再雇用者の選定基準を就業規則または労使協定で定めている一方で、6カ月や1年の有期労働契約として、状況をみて63歳まで反復更新する例も多くあります。

しかし、63歳までの雇用保障があるので、6カ月や1年といった期間満了だけでは雇止めはできず、期間満了に加えて、能力不足や不完全な健康状態で労務を十全に提供できないことが必要になります。

このように、期間途中の解雇と同様に厳格な更新しない理由が必要となります。

その上、60歳の再雇用時にチェックを受けているので、雇止めの理由の合理性が一層厳格に判断されることになります。

実務的に雇止めの正当な理由となり得るのは健康問題です。

60歳の再雇用時には何の問題もなかったが、60歳を超えて健康を害し、労務提供が不完全となる例は少なくありません。

また、年下の社員とのトラブルや協調性不足といった高年齢者にありがちな理由による雇止めも考えられます。

「有期労働契約の締結、更新および雇止めに関する基準」(平成15年10月22日 厚生労働省告示357号)では、更新の有無、契約期間満了時の業務量、労働者の勤務成績・態度、労働者の能力、会社の経営状況、従事している業務の進捗状況などといった更新しないときの理由が必要となりますが、そもそも高年齢者の再雇用では、更新があることが前提なので、「更新しない理由」に当たるものは少ないと考えられます。

よって、法的な解決策を求めるよりも、再雇用者と十分に話し合い、再雇用者から更新辞退の申し出がなされるように現場が努力することが必要です。

Q5、育児のために正社員からパートタイム労働者に雇用形態を変更した者に対する雇止めは可能ですか。

A、長期雇用システムの下では、正社員と非正社員とでは雇用保障の程度が大きく異なります。また、有期労働契約であれば、期間満了で労働契約が終了するのが原則です。

なお、この雇用保障の程度と労働契約終了の有無は、当事者の合意によって決まるので、育児のために正社員からパートタイム労働者に雇用形態を変更した場合、当事者意思によってパートタイム労働者の雇止めの可否が異なります。

育児休業期間終了後の正社員としての復帰を予定しているが、その企業に短時間正社員等の制度がなく、かつ就業規則上の育児休業・短時間勤務規程では不十分なとき、正社員を退職したうえでパートタイム労働者として再雇用される場合があります。

この場合、労使当事者の意思としては、有期労働契約であるからといって期間満了により労働契約を終了することは予定されていません。また、パートタイム労働者という形式をとるだけであって、実質的には正社員と同一である点も多いことから、少なくとも期間満了を理由とするだけでは不十分であり、雇止めは認められにくいと考えられます。

正社員を退職した時点で、正社員として復帰することは予定していないが、短時間労働者としての長期雇用を労使双方が予定していた場合、一般的な有期契約労働者と比較すれば、パートタイム労働者とはいえ雇用継続に対する期待は強く、かつ法的にも保護されるべきなので、雇止めは原則として認められないと考えられます。

しかし、正社員中心のシステムの中では、長期雇用が予定されているとはいえ、正社員と比較すればパートタイム労働者の雇用保障は弱まらざるを得ず、その意味で、雇止めが可能となる場面が生じる可能性があります。

正社員を退職した時点で短時間労働者としての長期雇用が予定されていない場合、雇用保障を維持したいのであれば正社員にとどまればよいので、正社員としての地位を自ら辞めたことのリスクは労働者が負うことになります。

したがって、このようなパートタイム労働者に対しては、企業が広い裁量をもって雇止めを行うことができます。

Q6、有期労働契約の女性労働者が妊娠しています。間もなくこの女性労働者との労働契約の更新時期が来ますが、妊娠・出産を理由に更新を拒否することはできますか。

A、改正雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)では、妊娠・出産等を理由として女性労働者に対し、解雇その他の不利益な取扱いをすることを禁止しています(9条3項)。

労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し、事業主は適切に対処するための指針(平成18年10月11日  厚生労働省告示614号)によると、この不利益取り扱いには、期間を定めて雇用される者について契約の更新をしないことも含まれます。

また、この「妊娠・出産等」には妊娠または出産に起因する症状により労務の提供ができないこと、労働能率が低下したことも含まれるので、つわり、妊娠悪阻、出産後の回復不全等により労務の不提供または不完全提供があっても、雇止めはできません。

このように、雇止めができない場合、契約は更新されることになるので、この契約更新によって育児休業の取得要件が満たされることもあります。

育児休業の取得要件については、育児休業・介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(以下「育児・介護休業法」)に規定されています。

育児・介護休業法では、育児休業の対象の有期契約労働者として、同一の事業者に引き続き雇用された期間が1年以上であること、かつ、子が1歳に達する日を超えて引き続き雇用されることが見込まれることを要件としています。

ただし、子が1歳に達する日から1年を経過する日までの間に労働契約は満了し、かつ、労働契約の更新がないことが明らかである者は除かれます。

したがって、例えば、書面または口頭で更新する場合がある旨明示されており、自動更新の回数の上限が明示されていない場合には、子が1歳に達する日から1年を経過する日までの間に労働契約は終了せず、育児休業の対象者となります。

また、1年契約で産前産後休業中に終期が到来しても雇止めできないので、契約は更新されることとなり、その結果、育児休業の申し出ができるようになります。

Q7、退職勧奨はどのように進めたらよいですか。また、どの程度まで許されますか。

A、退職勧奨とは、労働者が退職の意思表示をするように使用者が行う勧奨行為をいいます。

退職勧奨は、労働者の退職の意思表示を誘引し、これに応じて労働者が退職の意思表示をすることで法律行為が生じます。

申し出から一定期間が経過するか、使用者が承諾すれば労働契約は終了します。

退職勧奨が「勧奨」にとどまる限り、原則として違法とはなりません。しかし、限度を超え、態様が悪質である場合は違法となり、不法行為(民法709条以下)として損害賠償責任が追及されます。

具体的には、執拗な勧奨、欺罔や脅迫的な発言を伴う勧奨は違法となる可能性がありますが、退職勧奨という性質上、労働者が一度拒否しても続けざるを得ず、また当然、数を重ねなければなりません。

また退職勧奨については、退職の意思表示自体の効力が争われることもあります。

違法な退職勧奨によってなされた退職の意思表示は、無効または取消しとなるので、このような意思表示を根拠とする労働契約終了の合意は成立しません。

退職勧奨が違法とされない、または退職の意思表示が無効とされないためには、回数、場所、時間、対象者の拒否の強さ、言辞の強迫性などが判断要素となります。

個々の現場においては、拒否した対象者に翻意を促したり、退職勧奨に至った会社側の事情を説明したり、退職優遇策を内示したりすることは社会的に相当な行為ともいえるので、退職勧奨を実際に担当する者がこのリスクを認識して慎重に行えば、違法と評価されることは少なくなります。

実務的には、退職勧奨の前に専門の弁護士や転職支援会社によるロールプレイングを含めた指導が行われるのが通常です。

一方、特に学卒で入社して長年勤めあげてきた労働者にとって、退職または転職は一大決心であり、これまでの安定を失うことへの不安と、会社に残った場合の苦労と、就職先が見つかるかという心配に苛まれます。

そこで、退職の意思表示を取得するという目的達成のためには、対象者に退職または転職を決意させることが重要となります。

勧奨を担当する者が経営者あるいは上司という上位の視線で対象労働者に接した場合、紛争が生じます。

ここでの感情的なもつれが大きくなれば、裁判紛争となったり労働組合の交渉事項となったりすることもあるので、退職勧奨を成功させるためには、誠意・謝意を持って対応することが大切です。

Q8、半強制的な退職勧奨は解雇となりますか。

A、労働契約の終了には、労働者の一方的意思表示による「辞職」、労働者と使用者との合意による「合意解約」、使用者の一方的意思表示による「解雇」があります。

これらの区別は、法的にはそのような意思表示の有無で決まりますが、実務では明確ではない場合もあります。

半強制的な退職勧奨の結果、辞職したとしても、これが解雇となることはありません。

あくまでも労働者の意思表示は存在するので、この意思表示の無効または取消が問題となるにすぎず、使用者に解雇の意思表示がない限り、解雇の問題とはなりません。

退職勧奨時には、誤解を受けないように、あくまでも退職勧奨である旨を明示すべきであり、その後の紛争を防ぐためにも、退職届を労働者から取得しておくべきです。

Q9、希望退職プログラムを策定する場合、割増退職金の水準をどのようにすればよいですか。

A、希望退職募集に当たっては、対象労働者の年齢、割増退職金の額や支給係数、年休買い上げの有無、会社承認条件の有無、さらに退職金を会社都合とするのか自己都合とするのかなどの条件を設定します。

この条件の設定は、一般的には個々の労働者間で相対的に決めるのではなく、会社が用意できる財源と目標人数との兼ね合いで、使用者側が一律の条件をプログラムとして設定し、これに労働者が応募する形をとります。

実務的には、過半数労働組合がある場合には事前に労働組合と協議し、労働組合の協力を得ながら進めていくことが通常です。

割増退職金の水準設定も、使用者の自由なので、応募者に対して同一の金額または支給係数とすることもできますが、希望退職の募集を促すためには、労働者の納得感も重要であり、年齢による転職可能性の差や賃金制度による長期決済未了分の補填等の多種の要素を考慮して各企業は水準を設定しています。

希望退職を募集しても、応募が多数あることはあまりありません。

退職勧奨を併行して実施し、希望退職募集を繰り返すことによって予定の人数に達するのが通常です。

この際、応募者が少ないからといって募集の途中で退職条件を変更すると、「もっとよい条件が出てくるかもしれない」と考えて応募を控える者が出てきたり、募集の初期段階で応募した労働者からの不満も高まることがあります。

希望退職の目的達成のためには、当初の退職条件を維持することが不可欠となります。

しかし、今日のように時代の変化が急激な状況では、数年前と現在とでは企業環境が異なることは当然なので、退職条件の維持は、数年前に行った希望退職プログラムと同一条件で行うべきということまで意味するわけではありません。

ただし、あまりに大きな格差があると労働者に不安や不満が生じるので、注意が必要です。

Q10、「既婚の女性」のように特定の層を対象とする希望退職募集はできますか。

A、希望退職募集は、希望退職プログラムに対する労働者の応募、つまり合意解約の申し込みと、これに対する使用者の承諾という法的構成になるのが通常です。

対象者としてどのような層を設定するかは法的行為ではないので、有効・無効の問題とはならず、対象とならなかった層に含まれる労働者の「自分も希望退職させろ」という請求は成立しません。

ただし、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律では、定年および解雇について、女性であることを理由として男性との差別的な取扱いを禁止しており、退職の勧奨もこの性別による差別禁止の対象に含まれます。したがって、退職勧奨に当たって条件を男女で異なるものとすること、能力および資質の有無等を判断する場合に、その方法や基準について男女で異なる取り扱いをすることは、同法に違反するとして禁止されます。

このことは、希望退職に伴う退職勧奨の結果として、男女の比率が現従業員と同様であることまで求められるものではありませんが、著しく偏りがあった場合には、退職勧奨の過程で違法があったと考えられることもあります。

また、既婚・未婚の差を理由として希望退職条件を設定することも、適当ではありません。

確かに既婚者、特に女性の既婚者であれば配偶者の収入があることが多く、その労働者の生活への打撃は小さいようにもみえますが、ライフスタイルは各労働者の自由であり、既婚者は未婚者よりも生活が安定しているとは必ずしもいえません。

よって、少なくとも、機会の保障を重視する今日の考え方からすれば、既婚・未婚を希望退職の募集要件とすることは著しく合理性を欠きます。

これに対し、年齢と能力、ポスト、賃金が関係している長期雇用システムにおいては、人事管理の自由として企業の裁量が尊重されるので、年齢を希望退職の要件とすることができます。

したがって、希望退職の対象としてどのような層を設定するかは自由ですが、特定の層の設定が著しく合理性を欠く場合や公序に反する場合には、選定されなかった労働者に対する不法行為責任(損害賠償責任)が認められる可能性があるので、実務的には、一部の従業員を狙い打ちするような希望退職プログラムを作ることには慎重となるべきです。

Q11、希望退職や早期退職で会社承認要件を設けた場合、承認するか否かは会社の自由といえますか。

A、会社にとって必要な人材の退職を防止するため、希望退職や早期退職を募集する際には、「会社が承認した場合に適用する」旨を明示することが通常です。

裁判例でも、希望退職や早期退職は、あくまでも合意による労働契約の終了であり、申込をするか承諾をするかは各当事者の自由なので、会社が希望退職または早期退職の申込を承認するか否かは自由であると判断しています。

また、承認をしない理由を開示する必要もなく、承認しなくても違法とはなりません。

承認しないことについての合理的理由も必要ありませんが、労働組合活動や労働組合加入を理由として承認しないことは、不当労働行為とされる可能性があるので注意が必要です。

Q12、会社の説明が不十分であったために希望退職に募集しなかった場合、損害賠償を請求できますか。

A、希望退職制度では、割増退職金や転職支援など労働者に有利な条件が付されることがあるので、労働者の中には、この希望退職制度が発表される以前に退職してしまい、「制度があることを知っていたならば退職時期を変更したのに」と考える者もいます。

しかし、希望退職制度の設定は、あくまでも使用者の裁量であり、労働者が自分にも適用すべきだと主張する根拠はありません。

裁判例でも、使用者が労働者にとってより有利な条件を付した退職条件を新たに設定しても、そのような条件を設定することは禁止されていないので、退職した労働者の権利を侵害するものではないとしたものがあります。

さらに、会社は希望退職制度が設定されることを労働者に知らせる義務はなく、告知しなくても違法とはなりません。

また、その制度を告知しないまま退職勧奨を行っても、社会的相当性を欠くこともありません。

希望退職に応募することで生じるメリットとリスクは、基本的に労働者が享受し負担しなければなりません。

裁判例でも、「従業員が自らの自由意思において希望退職制度に応募するか否かの判断ができる程度に制度の具体的内容および、この制度を選択した場合の利害得失に関する情報を従業員に対して当然に提示しなければならない」としつつも、「特段の事情のない限り、希望退職制度採用時における業務状況の詳細や再建策実施後の将来の見通しについて具体的根拠を示して説明すべき法的義務はない」と判断しています。

Q13、賃金引き下げを行う前に整理解雇をすることができますか。

A、整理解雇を有効とする要素の1つとして、「解雇回避努力義務の履行」があり、労働者側に非がないにもかかわらず労働契約を終了させる場合には、使用者側でこれを回避するための相応の努力が求められると考えられています。

相応の努力として、具体的には、有期契約労働者の雇止め、役員報酬の引き下げ、管理職手当の削減、賞与・時間外労働の削減等が行われます。

このような解雇回避努力の対象は、正社員以外の雇用形態である労働者や正社員の中の一部の層の労働者です。

これに対して、正社員全員を一律に対象とする方法は、例えば、就業規則の賃金表の引き下げや、一定期間にわたる賃金引き下げがありますが、このような全部の正社員労働者に対する一律の賃金引き下げを、一部労働者の整理解雇の前に行うことは、法的に当然に求められるわけではありません。

また、解雇回避努力義務も、手当はともかく、基本給の一律引き下げまでを当然に求めるものではありません。

使用者の選択における基準としては、余剰人員の能力や質が重要となります。

能力不足やミスマッチなどで余剰人員の雇用の場が企業内にない場合は、雇用を維持しても意味がないので、将来業務量が回復した場合にも当該労働者の雇用の場がない以上、人員を削減するのが適当です。

一方で、余剰人員の能力や質が問題とならずに、単に業務量が一時的に現象しただけであれば、その期間だけを全従業員の犠牲の下に堪えるということもあり得ます。

Q14、「整理解雇の4要件」をどのように考えたらよいですか。

A、整理解雇が有効となるためには、(1)経営上の必要性、(2)解雇回避努力義務の履行、(3)人選の合理性、(4)手続きの相当性の4つの要件が必要であるといわれています。

しかし、この4つの要件を厳格に守らなければならないとすると、業績不振等で整理解雇の必要性が高い場合であっても4つの要件のうち1つが欠けただけで整理解雇が無効となってしまいます。

そこで、実務では、上記の4要件に則って判断し、4要件を満たさなければならないとしつつも、要件のうち1つでも満たさないものがあれば無効と判断するものは、ほとんどありません。

転職支援や退職金上積み等の会社側の配慮を、解雇が有効であると認められるための要素として考えたり、4つの要件のうちある要素が不十分であっても、他の要素がその不足を補充することを認めています。

例えば、経営上の必要性が弱かったとしても、整理解雇回避努力を最大限に尽くした上で、かつ、退職金上積みも高額であれば、整理解雇が有効と判断される可能性があります。

ただし、これにより整理解雇が大幅に緩やかになるわけではないことに注意が必要です。

Q15、業績悪化のために全従業員を一度解雇し、希望者のみを再雇用することはできますか。

A、長期雇用システムでは正社員の雇用は保障されており、業績不振を理由とする整理解雇であっても、必要最小限の人数で認められることになります。

全従業員を整理解雇できるのは、破産や清算などの事業継続を予定していない事業廃止の場合に限られ、民事再生や会社更生といった事業継続を予定している事業再生型においては、整理解雇が当然に認められるわけではなく、資産状況やキャッシュフローを精査したうえで、必要最小限の人数についてのみ整理解雇が認められます。

一般的には整理解雇まで行わずに、希望退職を強く推し進めて人員削減を達成します。

なお、裁判例では、退職金の原資となる金員が極端に不足しており、希望退職の方法をとった場合残留従業員の将来の退職金支払に不安が残るため、全員解雇として事業継続する部門の人員を再雇用した事案について、客観的に合理性があると判断したものがあります。

この裁判例は、同一企業において、整理解雇と再雇用とを行う場合です。

これに対して、従前の企業を解散して整理解雇した上で、事業譲渡を受けた新会社で一部労働者のみを雇用し、その際に労働条件を変更する方法も考えられますが、実務的にはこのような手法はとられません。

整理解雇を行えば集団労使紛争となる可能性も高く、社会的批判を浴びたり、かえって時間と費用がかかることがあるからです。

したがって、整理解雇は必要最小限の人数のみを対象とすべきであり、一部の従業員については整理解雇し、一部の従業員については労働契約を維持しつつ労働条件を引き下げることが通常です。

全員を整理解雇した後に一部を再雇用するのであれば全員の整理解雇は不要であるので、全員の整理解雇は無効となります。

Q16、パートタイム労働者や契約社員への切り替えを前提に、あるいは再雇用を前提に、正社員を整理解雇しても問題ありませんか。

A、正社員とパートタイム労働者や契約社員等の非正規社員とが混在する職場では、能力や職務の違いに比べて賃金の格差が大きい場合があります。

そのため、正社員全員を整理解雇し、その一部を低賃金で再雇用したり、別の労働者をパートタイム労働者や契約社員として、必要数雇用しようとする経営者がいます。しかし、業務がなくなったわけではないので、業務消滅を理由とする整理解雇はできません。

また、仕事に対して賃金が高すぎるということを理由としても、整理解雇ではなく賃金引き下げという対応策もあるので、これを理由として当然には整理解雇を行うこともできません。

通常であれば、まずは全従業員での応分の負担をすべく、就業規則の不利益変更が求められ、その後、整理解雇を検討する余地が出てきます。

他方、経営が著しく悪化した状況の下、整理解雇をする一段階前で、労働者に対して非正規社員としての一定期間の再雇用を提案することが考えられます。

この場合、正社員としての労働契約は終了しますが、整理解雇もできる状況において、その後一定期間の別形態での雇用を保障しています。

よって、仮にこの提案が受け入れられなかったとしても、非正規社員としての雇用保障を提案したことは使用者の解雇回避努力として認められ、その後の整理解雇が有効となる可能性が高くなります。

Q17、工場を閉鎖する際に、現地採用の従業員を勤務地特定を理由に整理解雇することができますか。

A、長期雇用システムの下で勤務地や職種を特定することは、使用者の人事権を制限することになります。また、学卒で入社して定年までの約40年を一つの勤務地または職種であり続けることは、他の従業員との関係や組織維持の点でも困難です。

労働者にとっても、その勤務地がなくなったり当該職種での能力不足が顕著となったりすれば、解雇されるリスクが生じます。

このため、裁判所は特に正社員に関しては、勤務地特定や職種特定を認めることに慎重で、勤務地特定であれば、入社の際に特別な事情が存在し、双方の明確な合意がある場合に限って認めるとしています。

一方で、特別な事情がない場合には、当面の期間に限っての勤務地の合意と考えることが通常です。

現地採用であっても、他の事業場や工場に配置転換・転勤となる実績があれば勤務地特定とはいえず、当然に勤務地特定となるわけではありません。

勤務地特定か否かは労働契約の解釈であり、当事者意思およびその意思を裏付ける事実が必要となります。

従業員の勤務地が当該工場に特定されておりその工場が閉鎖する場合、労働契約において当該工場での業務が労務提供の対象である以上、その対象がなくなれば労働契約の前提が消失するので、整理解雇の対象となります。

なお、このとき他の事業場への配置転換や転勤を配慮する必要はありません。

これに対して、勤務地特定でない場合には、たまたま当該工場に就労していただけなので、整理解雇の対象とはならず、余剰人員が生じて整理解雇が必要となる場合には、他事業場も含めた全従業員から人選されます。

しかし、明示の合意はなくても、当該工場に入社以来ずっと就労している従業員がいたり、当該工場と他の事業場や工場との共通性がなければ、実際の配置転換先にも雇用の場はないといったように、勤務地特定か否かが不明確な従業員も少なくないので、実務的には、このように簡単に割り切れるものではありません。

このため、現地採用の従業員に対して、勤務地特定を一応の前提とした上で、希望退職を募集することが多くあります。

Q18、将来の経営危機を避けるために、先行して整理解雇を行うことはできますか。

A、整理解雇の4要件論は、整理解雇を認めないことを目的としていたので、企業の維持存続が危うい程度に差し迫った必要性がある場合に限って、整理解雇は許されるとされていました。

しかし、企業の維持存続が危うい段階にまで至ると、事業再生は困難となり、解雇されずに残った従業員も、数年後には整理解雇となる可能性があります。

このため、整理解雇の要素としての経営上の必要性を緩やかに解する、実務に則した考え方が主流となってきました。

現在では、経営上の必要性がないという理由だけで整理解雇を無効とする考え方はとられておらず、企業の合理的運営上やむを得ない必要性があれば整理解雇が認められるとする考え方が主流です。

また、経営上の必要性だけを特に厳格に検討するのではなく総合的に考慮するので、経営上の必要性が低い場合の整理解雇であれば、他の要素である解雇回避義務の履行や退職金の上積み等を厳格に解することになります。

ただし、このように比較的緩やかに経営上の必要性を考えたとしても、「現時点では経営危機といえないが、将来的にはその可能性があるから」というだけで整理解雇を認めることはありません。

今日のように事業環境が急激に変化する時代において、将来について不安を持つことは当然ですが、この漠然とした不安だけで整理解雇ができるとすれば、長期雇用システムの下での雇用保障はまったく意味がないものとなります。

したがって、整理解雇の経営上の必要性としては、少なくとも近い将来に経営危機になることが確実だという一定程度の蓋然性や、事業の採算性悪化や余剰人員の確実な発生が見込まれるためにその対策が必要となるといったやむを得ない事情が不可欠となります。

Q19、整理解雇をする一方で、賃金引き上げや新規の整備投資を行うことは問題ありませんか。

A、整理解雇を有効とする要素として、経営上の必要性が求められます。

実務的には比較的緩やかに解されますが、それでも賃金引き上げや新規投資を行っている一方で整理解雇を行うことは、経営上の必要性がないとも考えられます。

しかし、今日では、整理解雇は事業廃止を避けるための消極手段ではなく、事業再生のための積極的な手段とも考えられるようになってきています。

事業再生のためには、残された従業員がモチベーションを維持できるように、さらには他社に人材が流出しないように、適当な処遇を行う必要があります。

また、企業も労働者も成果主義のような短期決済型賃金を受け入れつつある環境下では、事業再生に向かえば即座に処遇向上につなげることが論理的なので、整理解雇を実施するのと同時期の賃金引き上げが全く許されないと考えるのは現実的ではありません。

もっとも、大幅な賃金引き上げは経営上の必要性と矛盾するので、整理解雇の対象者の理解も得られずに紛争となるおそれがあります。実務的には、最大でも同業他社並みの賃金引き上げにとどめておくべきです。

同様に、整理解雇と同時期に設備投資を行うことは、直ちに整理解雇の経営上の必要性を否定することにはなりません。

今日のように技術革新がめざましい状況では、設備は陳腐化しやすく、恒常的な設備投資が必要とされます。

大規模な新規設備投資は経営上の必要性を原則として否定しますが、新規設備投資を一定期間まったく行えないとなると、事業再生は不可能となるので、これだけを理由として整理解雇が無効となることはありません。

新規採用は、整理解雇という人員削減策と正面から矛盾するとも考えられますが、10年後、20年後の従業員の年齢別構成を考えると、数年間にわたって新規学卒採用者がいないことは適当とはいえません。

したがって、新規採用が直ちに整理解雇の経営上の必要性を否定するわけではありません。

ただし、必要最小限の人数に限って認められます。

経営上の必要性は、経営者にしか判断できないものなので、経営者の判断は尊重されます。

しかし、その判断における裁量を明らかに逸脱しているような場合、または手続き的にみて十分な考慮過程を経ていないことが明らかであるような場合には、経営上の必要性が否定されることになります。

裁判例では、取締役の善管注意義務について、「企業の経営に関する判断は不確実かつ流動的で複雑多様な諸要素を対象とした専門的、予備的、政策的な判断能力を必要とする総合的判断であり、また、企業活動は、利益獲得をその目標としていることから、一定のリスクが伴うものである。このような企業活動の中で取締役が委縮することなく、経営に専念するためには、その権限の範囲で裁量権が認められるべきである。したがって、取締役の業務についての善管注意義務違反又は忠実義務違反の有無の判断に当たっては、取締役によって当該行為がなされた当時における会社の状況及び会社を取り巻く社会、経済、文化等の情勢の下において、当該会社の属する業界における通常の経営者の有すべき地検及び経験を基準として、前提としての事実の認識に不注意な誤りがなかったか否か及びその事実に基づく行為の選択決定に不合理がなかったか否かという観点から、当該行為をすることが著しく不合理と評価されるか否かによるべきである」とするものがあります(東京地裁判決平成16年9月28日)。

これは取締役の責任に関する裁判所の判断ですが、取締役の意見に基づく会社の行為の有効性の判断にも、上記裁判例の考え方は応用できます。

したがって、相当数の従業員を対象とする整理解雇の場合には、上記裁判例の規範と同様に、「著しく不合理」とされない限り当該企業の経営者の判断は有効なものとして尊重されると考えられます。

Q20、整理解雇回避措置には、具体的にどの程度のものが求められますか。

A、整理解雇に当たり、使用者は整理解雇回避努力義務を負うとされています。

整理解雇の有効性に関する判断要素の中でも重要であり、実際の判断では大きな争点となります。

解雇回避措置としては、整理解雇を実施する前に、人員数の調整、賃金の圧縮、労働時間の短縮を行います。

具体的には、非正規社員の雇止め、希望退職、採用の抑制、賞与の引き下げ、管理職の賃金カット、所定労働時間の短縮、残業規制等が挙げられます。

裁判例では、解雇回避努力義務について、整理解雇は労働者側に解雇される帰責性がないにもかかわらず解雇によって不利益を被らせるものなので、他の手段を採ることによって解雇を回避することができたにも関わらず、何の努力もせずに直ちに解雇した場合には、解雇権の濫用として整理解雇は無効と判断しています。

なお、解雇回避措置には様々な種類がありますが、実際の場面では、すべての解雇回避措置が求められるわけではなく、個別の事案に即した解雇回避措置が講じられます。

したがって、種々ある措置の中から個別事案として適当と考えられるものをいくつか行えば、一応の努力は果たされたことになります。

Q21、子会社の清算に伴い整理解雇をする場合に、親会社やグループ会社で子会社の労働者を雇用する義務はありますか。

A、労働契約は使用者と労働者との間の契約で、使用者は会社を単位とします。

最近ではグループ経営も盛んに行われていますが、グループを単位として労働契約を行うことはできず、あくまでも法人格の主体となる会社が単位となります。

よって、同一グループの会社であっても、親会社の労働者は当該親会社で雇用を保障され、子会社の労働者は当該子会社で雇用を保障されるにすぎません。

このように、労働契約は各会社単位なので、ある会社を清算等で事業廃止する場合、他社に労働契約が移転することはなく、他社が当該労働者に対して雇用する義務があるわけでもありません。

このことは、子会社と親会社の間でも、グループ会社との間でも同様です。

したがって、子会社を清算して整理解雇する場合、解雇回避のために親会社や同一グループ他社での雇用が法的に当然に義務付けられるわけではありません。

子会社を清算する際に事業を廃止するのではなく、親会社やグループ他社で事業を継続することがありますが、このような場合、清算会社の従業員を当然に整理解雇できるわけではありません。

事業譲渡であれば、労働契約は移転しないのが原則で、譲渡元企業と譲渡先企業と労働者の三者が同意して初めて労働契約は移転します。

このとき、一者でも同意しなければ、労働契約は譲渡元企業において継続します。

事業譲渡の形態がとられた場合、原則として、譲渡先企業は譲渡元企業での労働契約の移転を拒否できますが、譲渡元企業と譲渡先企業との間に資本関係がある場合や、両者が実質的同一性を有する場合、譲渡先企業は信義則により労働契約移転を拒否することができないとされています。

Q22、非正規社員を整理解雇する前に、正社員を整理解雇することはできますか。

A、整理解雇に際しては、使用者に整理解雇回避義務があるとされており、整理解雇を回避するために相当な努力がなされなければ、整理解雇は無効となります。

非正規社員にも多種のものがありますが、派遣労働者、パートタイム労働者、契約社員などは長期雇用システムの下になく、正社員とは異なり雇用保障は弱いと考えられます。一般的には、正社員を整理解雇しようとする場合、まずは非正規社員の労働契約の終了を先行させるべきとされています。

しかし、整理解雇でも高度の経営危機下の状況では、解雇回避努力義務の内容も緩やかとなるので、このときは、正社員と比較して非正規社員を優先的に労働契約終了とすべきとはいえません。

また、有期労働契約であっても、期間途中の一方的な労働契約終了は解雇に当たります。有期労働契約における期間中の雇用保障は、期間の定めのない労働契約に比べて強いので、期間途中には、非正規社員であるからといって、当然に正社員より先に整理解雇できるわけではありません(労働契約法17条1項参照)。

非正規社員との労働契約を終了とする際には、緊急の場合でない限り、期間満了の期日が到来した有期契約労働者から雇止めをすることになります。

整理解雇をも検討するような状況においてであれば、雇止めは原則として認められます。

期間途中であれば、有期契約労働者との話し合いによって、合意による労働契約の終了とすることが通常です。

Q23、整理解雇をする際に、対象者の選定をどのように行えばよいですか。

A、整理解雇の有効性判断においては、対象者の選定が合理的でなければなりません。

どのような人選を行うのかは、各企業の自由ですが、一般的には、勤務成績や労働能力等の会社への貢献度、労働者の生活に対する打撃度が基準となります。

実際の現場では、使用者が整理解雇の対象としたい労働者がいて、この労働者が選定されるように基準が作成されることがありますが、このような場合であっても、少なくとも説明がつく人選となっているので、直ちに不合理な人選とはなりません。

整理解雇の対象と選定されれば、どのような労働者でも納得することはないので、使用者としては紛争となることを覚悟して、合理的な説明ができるように事前に準備しておくことが必要です。

なお、人選基準を労働者に対し明示することは、必ずしも求められていません。人選基準を明示すれば、当てはめの是非について労働者との間で紛争が生じやすいですし、人選は使用者が悩んだ末の総合判断であり、一定の基準を機械的に適用して出されるものではないからです。

Q24、整理解雇を行う場合、労働組合や労働者に対してどのような説明、協議を行う必要がありますか。

A、整理解雇に関して、労働組合との労働協約に同意約款または協議約款がある場合、この同意または協議を欠くと整理解雇は無効になります。

これらの約款がない場合でも、使用者は信義則上、労働組合や労働者との協議、説明が求められます。

ここで求められる協議や説明は、個別事案に即した程度のものである必要があります。

このとき、整理解雇は労働者個人の問題なので、労働組合との協議よりも当該労働者個人に対する説明や事情聴取が重要となります。

労働者が整理解雇に納得することは滅多にないので、整理解雇に至る前の希望退職や退職勧奨の段階において、使用者が労働者に対して人員削減の必要性を具体的に説明し、かつ労働者から生活上・経済上における不利益の程度などを聞き、これを受けて転職支援や退職条件の再検討を行ったかが問題となります。

労働者に十分な情報と機会を与えた上で整理解雇に踏み切ったかどうかが重要です。

Q25、事業譲渡に伴う転籍に同意しない従業員を整理解雇することはできますか。

A、会社分割が組織法上の行為とされるのに対し、事業譲渡は取引上の行為とされています。

会社分割において、「承継される事業に主として従事する」場合には、分割先に労働契約が承継される(労働契約承継法3条)ので、労働者の個別同意なく強制的に転籍させられます。

転籍に同意しないことは分割先での就労を拒否したことになり、元の会社に対する辞職の意思表示として取り扱われます。

これに対して、事業譲渡に伴う労働契約承継は、譲渡元企業との労働契約終了と、譲渡先企業との労働契約の締結を意味し、転籍と同義となります。

なお、譲渡元と譲渡先と労働者の三者すべての同意がなければ転籍は成立しないので、一者でも同意しない場合には労働契約は移転されず、労働契約は譲渡元企業の下で存続します。

労働契約は事業ごとではなく法人を単位とするので、事業譲渡によって当該労働者が働いていた事業がなくなったことを理由に使用者が解雇しようとしても、使用者には当該労働者を他の事業部門に配置転換する義務が生じます。

仮に当該事業に20年間従事していても、それだけで当該事業に労働契約が特定するわけではなく、また、他の事業部門に適応する能力がないとしても、これは使用者の人事権行使の結果なので、当然には労働者に不利益を負わせることはできません。

したがって、事業譲渡に伴う転籍に同意しないために余剰人員が生じたとしても、当該労働者を整理解雇することは、原則としてできません。

実務では、事業譲渡に伴い、労働者の個別同意を得て相当数の転籍がなされます。

しかし、転籍と同時に労働条件を大きく引き下げるようなリストラ目的の事業譲渡では、転籍拒否者が出ることがあります。

この場合、会社の状況を理解して協力してくれた労働者が転籍して労働条件も下がるのに対し、転籍を拒否した労働者は従前の会社に所属して従前と同一の労働条件を享受することになり、バランスや他者の感情を考えると人事管理としては許容し難い部分があります。

転籍を拒否した労働者に対して今後厳しい人事権の行使がなされることは当然に予想されますが、使用者があえて解雇を選択することもあります。

Q26、会社解散で事業を廃止する場合、労働者を整理解雇できますか。また、事業譲渡して業務がなくなった場合、整理解雇できますか。

A、会社は労働者や労働組合の同意なく経営判断として解散できます。

裁判例でも、「会社が解散した場合、会社を清算する必要があり、したがって、もはやその従業員の雇用を継続する基盤が存在しなくなることが明らかである。したがって、会社の解散に伴う従業員の解雇、は客観的に合理的な理由を有するものとして、原則として有効である」として、(1)人員削減の必要性(2)解雇回避努力(3)人選の合理性

(4)解雇手続きの妥当性という整理解雇の4要件の適用を否定しています。

また、会社解散や営業譲渡に伴う従業員全員の解雇は、整理解雇とは異なると判断した裁判例もあります。

事業譲渡は譲渡元企業と譲渡先企業との個別取引行為であり、譲渡元企業と労働者との労働契約は、譲渡元・譲渡先企業と労働者の三者全員の同意がなければ譲渡先企業に移転しないので、1つでも同意がなければ、労働契約は譲渡先企業に移転せず、譲渡元企業との間に存続することになります。

譲渡元企業で業務がなければ整理解雇の有効性が問題となります。譲渡により業務が消滅したので、解雇回避義務等の他の要素を一応満たせば、整理解雇も有効となる可能性が相当に高くなります。

また、仮に譲渡元企業が解散した場合には、労働契約は終了します。

Q61、業務委託が打ち切られ業務がなくなった場合、整理解雇できますか。

A、業務委託契約は企業間の商取引なので、労働契約と異なり信義則や権利濫用による修正解釈は認めにくく、契約文言に基づいた権利義務となることが通常です。

実務では、契約条項に基づかず、合意による契約解消も少なくありません。

業務委託契約が継続的取引であっても、契約解消に対する救済は契約継続ではなく損害賠償が認められる程度であり、その損害賠償額も比較的低廉です。

業務委託契約の打ち切りによって、受託企業では業務が縮小または消滅していまい、その結果、受託企業の労働者が整理解雇されることもあります。

実務では、業務委託契約の打ち切りは当事者企業の合意によることがほとんどで、受託企業の経営者の判断に基づいて決定されます。

そのため、経営者の恣意的な判断で整理解雇が認められる可能性があるので、その整理解雇の有効性は慎重に判断されることになります。

裁判例では、特定出版物の編集委託が打ち切られた事案で、業務委託契約打ち切りの通告を受けた以上、受託企業に労働者を雇用し続ける理由はないと判断したものがあります。

また職務特定されていない事案においては、整理解雇の4要件に基づいて判断するものの、要件該当性を比較的簡単に認めています。

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