プライバシーの侵害とは?判断される3つの要素と会社における事例を紹介

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監修者:みんなのユニオン 執行委員
岡野武志

会社におけるプライバシーの侵害

会社で働いていると、プライバシーの侵害なのではないかと疑問に思う場面に遭遇することもあるのではないでしょうか

プライバシーの侵害の定義やどんなときにプライバシーの侵害と認められるのか分かりにくいですよね。

この記事では、プライバシーの侵害とはなにか、プライバシーの侵害と判断される3つの要素、会社におけるプライバシー侵害の事例を紹介します。

プライバシーの侵害とは

プライバシーの侵害は法律によって明確に規定されたものではなく、憲法によって認められた権利です。

法律による規定はありませんが、過去の判例において公開していない知られたくない私生活の情報を第三者に対して公開されることがプライバシーの侵害であると考えられています。

刑法上の規定がないので、プライバシーの侵害をしても刑事罰を受けることはありません。ただし、民法上の不法行為として損害賠償金の請求が可能です。

公開していない私生活の情報を第三者に対して公開されること

プライバシーの侵害は法律によって明確に規定されていません。そのため、プライバシーの侵害とはなにか、どんなプライバシーの侵害となるのかの定義があいまいになっています。

裁判所における過去の判例では、プライバシーの権利として「いわゆるプライバシー権は私生活をみだりに公開されないという法的保障ないし権利として理解される」と定義しています。

参考資料:『宴のあと』事件 東京地裁昭和39年9月28日

プライバシーの侵害をすると刑事罰に処されるのか

プライバシーの侵害は刑法上の規定がなく、刑事罰もありません。そのため、プライバシーの侵害をされても、相手を逮捕してもらったり、実刑にしてもらうことはできません。

プライバシーの侵害と混同されがちな名誉毀損については、名誉毀損罪という刑事罰があり、名誉毀損で有罪になった場合は「3年以下の懲役または禁錮、もしくは50万円以下の罰金」が科されます。

民法上の不法行為として損害賠償金の請求が可能

プライバシーの侵害で相手に刑事罰を与えることはできませんが、民法上の不法行為として損害賠償金の請求をおこなえます。

プライバシーの侵害に対して損害賠償金の請求をおこなうためには、該当する行為が裁判所で「プライバシーの損害である」と認めてもらうことが必要です。

プライバシーの侵害と判断される3つの要素

過去の判例においては、プライバシーの侵害に対し法的な救済が与えられるための要件として以下の3点が必要であるとしています。

  1. 私生活上の事実または私生活上の事実らしく受け取られるおそれのあることがらであること
  2. 一般人の感受性を基準にして当該私人の立場に立つた場合公開を欲しないであろうと認められることがらであること
  3. 一般の人々に未だ知られていないことがらであることを必要とし、このような公開によつて当該私人が実際に不快、不安の念を覚えたこと

参考資料:『宴のあと』事件 東京地裁昭和39年9月28日

上記の要件をかみ砕いて分かりやすくすると、以下の3点になります。

  1. 私生活に関する事実であること
  2. 公開されることで不快に思うと一般的に判断される内容であること
  3. すでに公開されている内容ではないこと

プライバシーの侵害と判断されるためには、どのようなことが必要になるのか具体的に解説します。

私生活に関する事実であること

プライバシーの侵害と認められるためには、侵害されるプライバシーが私生活に関する事実であることが求められます。誰が聞いてもデタラメだと分かることや冗談だと思われる内容の場合は認められないケースがあります。

また、事実ではなくても事実かもしれないと受け止められる内容の場合はプライバシーの侵害と認められる可能性があります。「あの人は同性愛者だ」と言いふらされた場合には、それが事実かどうかは関係ありません。

公開されることで不快に思うと一般的に判断される内容であること

私生活に関する事実であり公開されていない内容であっても、公開されることが一般的に不快に思うことだと判断されなければ、第三者に公開されてもプライバシーの侵害と認められないケースがあります。

「昨日の夕食はカレーだった」という事実は、私生活に関する事実であり公開されていない内容ですが、一般的には公開されても不快に思わないので、プライバシーの侵害と認められないこともあるということです。

すでに公開されている内容ではないこと

名前・住所・電話番号・職業などはプライバシーになりますが、すでに公開されている情報については、第三者に公開されてもプライバシーの侵害と認められないケースがあります。

ネット上で住所や電話番号を公開している場合には、第三者がネットに電話番号を書いたとしてもプライバシーの侵害と認められないこともあるということです。

プライバシーの侵害になる?判断が難しいケースを解説

職場に監視カメラを設置されるとプライバシーの侵害?

職場に監視カメラを設置されたとしてもただちにプライバシーの侵害とはなりません。

なぜならば、労働者の就業状況を管理するために撮影したり、セキュリティ対策の一環としてカメラを設置する行為は業務効率化の手段となるためです。

ただ、監視カメラの映像が誰でも簡単に閲覧できてしまうような場合はプライバシーの侵害に当たる可能性があります。

また、職場であっても更衣室やトイレの個室といったプライベートな空間に監視カメラを設置する場合はプライバシーの侵害に当たる可能性が極めて高いと言えます。

机の中を勝手に見られるのはプライバシーの侵害?

会社の上司や同僚に机の中を勝手に見られたとしても、それだけでプライバシーの侵害に当たるとは言い切れません。

業務上の正当な理由があり、就業規則や過去に周知したルールに基づいて机を開けられる場合であればプライバシーの侵害には当たらないでしょう。

たとえば、重要な書類が紛失し、全員分の机の中を調べることになったというケースであれば、「書類を探すため」という業務上の正当な理由がある上に、プラシバシーを侵害するために机を開けるわけではないため、プライバシーの侵害には当たらないでしょう。

しかし、嫌がらせや好奇心のために勝手に机を開けられたり、机の中の私物に関する情報を周りに言いふらされた場合であれば、プライバシーの侵害に当たる可能性が高まります。

給与情報を周りに言いふらされるのはプライバシーの侵害?

自分の給与情報が経営陣や経理担当者に言いふらされた場合、プライバシーの侵害に当たる可能性があります。

一般的には、自分の給与情報はあまり同僚には知られたくないような内容です。
なぜならば、給与をいくら貰っているのか知られてしまうと、高額な場合であれば嫉妬されて人間関係に支障をきたす可能性がありますし、低額な場合であれば自尊心を傷つけられることになりうるからです。

給与情報の公開がプライバシーの侵害に当たるのかどうかについて判断した判例は見当たりませんが、本人に無断で給与情報が公開された場合、状況によってはプライバシーの侵害として不法行為が成立する可能性があります。

会社におけるプライバシー侵害の事例4選

この章では、会社側からなされた行為がプライバシーの侵害であると認められた4つの事例を紹介します。

ロッカー内の私物を勝手に写真撮影したケース

共産党員あるいはその同調者であることのみを理由に、ロッカーを勝手に開けて私物を写真に撮影したケースです。

「職場における自由な人間関係を形成する自由を不当に侵害するとともに、その名誉を毀損するものであり、また、被上告人Y2らに対する行為はそのプライバシーを侵害する」としてプライバシーの侵害が認められています。

参考資料:関西電力事件

HIVに感染していることを第三者に漏洩したケース

派遣労働者がHIVに感染していることを派遣先会社が派遣元会社に漏洩しプライバシーの権利を侵害したと認められています。告知をすることに業務上の必要性が認められず、不法行為の成立が認められました。

参考資料:HIV解雇事件

私用メールが監視されたケース

上司を批判する内容のメールを、該当する上司に対して誤送信したことをきっかけに、メールの内容を監視されたケースです。

社内メールを私的利用した場合は、保護されるプライバシーの範囲は制限されるとしつつ、「社会通念上相当な範囲を逸脱した監視がなされた場合に限り、プライバシー権の侵害となる」と判断されています。

参考資料:電子メール・プライバシー事件

所持品紛失を理由に従業員に対して身体検査をおこなったケース

仕事先から財布がなくなったという連絡を受け、仕事をおこなっていた従業員に対し所持品検査をおこなったケースです。企業として必要であり効果的な方法だったとしても、従業員に対し所持品検査をおこなうことは許容されるものではないと判断されています。

所持品検査を適法とするためには、少なくとも以下の要件が必要とされています。

  • 所持品検査を許容する就業規則その他明示の根拠に基づいて行われること
  • 合理的理由に基づいて、一般的に妥当な方法と程度であること
  • 制度として、職場従業員に対して画一的に実施されるものであること

参考資料:日立物流事件

監修者


みんなのユニオン

執行委員岡野武志

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みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。

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