不当解雇・退職勧奨の
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女性の社会進出が進んだことによって社会で活躍する女性が増えた一方、妊娠を理由に解雇を言い渡されてしまったり、退職を迫られてしまう方も増えているかと思います。
今回の記事では、そのような妊娠を理由に解雇されたり、退職勧奨をされた時の対処法を説明します。
妊娠を理由に会社から解雇された場合、会社側は違法となるのでしょうか。
また、解雇まではいかなくても、減給や降格などの従業員にとって不利益取扱いは違法なのか確認しましょう。
妊娠による解雇は違法であり無効です。
男女雇用機会均等法第9条4項に、「妊娠中の女性労働者及び出産後の1年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、無効とする」と定められています。
ただし、会社側が解雇の理由が妊娠以外であることを証明できれば認められています(同項ただし書き)。
そのため、本当は妊娠が理由なのに、妊娠以外であることを理由にして解雇しようとする会社も中にはあります。
しかし、その理由は、客観的に見て合理的であると認められる必要があります(労働契約法第16条)。
例としては、従業員が会社の売上を着服していたことなどが挙げられます。
単に能力不足や勤務態度が悪いといったことを解雇理由にする会社も多いですが、ほとんどの場合は客観的にみて合理的であるとは認められません。
これらの理由が認められるには、会社が従業員に対して再三にわたる注意・指導を行なったが、一向に改善されなかったことを会社側が記録するなどして証明しなければなりません。
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妊娠を理由に、解雇以外の不利益な扱いを行う事も違法です(男女雇用機会均等法第9条3項)
ここでいう不利益な扱いとは、以下の事が当てはまります。
これらの例は従業員にとって不利益な扱いであり、違法です。
上記にもあるように、妊娠による解雇や不利益な扱いを禁ずることは、正社員のみならず契約社員や派遣社員、パートの方にもあてはまります。
ただし、あくまで会社が従業員に対して不利益な扱いをする事が禁止されるのであって、例えば妊娠中の女性自らが軽易な業務への転換を希望して配置転換が行われた場合などは違法ではありません。
解雇ではなく、会社をやめてもらえないかと会社側から退職勧奨された場合はどのように対処すればいいのでしょうか。
また、自発的に同意したわけではなく、社内の上司からしつこく言われたり、半ば強要される形で同意してしまった場合はどのような対処をとれば良いのか確認しましょう。
妊娠を理由に辞めて欲しいと言われた場合、辞めるつもりがないのであれば、はっきりと断ることが大切です。
会社側は妊娠したことを理由に解雇することは出来ません。
ここで働く意思をしっかりと示すことが重要です。
退職を迫られても応じない場合、上司から高圧的な態度で何度も自己都合退職を促されたり、人格を否定するような言葉とともに退職を迫られることもあります。
そのような退職勧奨は、強迫や強要にあてはまり違法です。
高圧的に退職を迫られても、毅然とした態度で断りましょう。
断ってもしつこく退職勧奨される場合は、「頭が混乱していてすぐには答えられないので、後日返答させてください」などと返事を保留し、その場を切り抜ける方法もあります。
その後、弁護士や労働局に相談すれば、退職勧奨の対策を具体的に教えてくれるでしょう。
また、退職勧奨に同意してしまった場合であっても、違法な退職勧奨による退職は無効であることを主張できます。
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妊娠を理由に解雇されることは、会社側の違法であり、無効になることがわかりました。
では、実際に妊娠によって解雇されてしまった場合、どのような対処をすればいいのか確認しましょう。
解雇を通知された時点で、解雇理由証明書をもらってください。
解雇理由証明書が必要な理由は、あとになって解雇の理由を会社側が変更してくるのを防ぐためです。
もっとも、会社側も素直に妊娠を理由に解雇と書くことは少なく、勤務態度や能力不足といった別の理由にすることが多いかと思います。
解雇理由証明書に書かれている理由が真実ではないことを示すために、解雇に関するやりとりの音声での記録やメールの履歴など証拠をとっておくことをおすすめします。
男女雇用機会均等法第9条4項ただし書きにより、解雇の理由が妊娠以外であることを証明するのは企業側にあります。
しかし、少しでも優位に進めるためにも、ご自身でできることは予め行うことが重要です。
証拠を集めたら、解雇の無効を主張する内容証明郵便を会社に送ります。
内容証明郵便とは、文書の内容と誰から誰に差し出されたかを郵便局が証明してくれる郵便のことです。
さらに、配達証明書つきの内容証明郵便で送れば配達記録も残るので、会社側からそのような郵便は届いてないと言われることを防ぐことができます。
また、解雇されずに就労を続けていれば本来もらえていたはずの給与も、内容証明郵便で会社側に請求することが可能です。
内容証明郵便を送っても、会社側から何の反応もなかった場合は、どうすれば良いのでしょうか。
そのような場合は、労働基準監督署へ相談しましょう。
会社側の法律違反が発覚すれば、労働基準監督署が会社に対して是正指導や勧告をしてくれます。
是正指導や勧告の為、強制力はありませんが会社側が聞き入れなかった場合は企業名を公開されることもあるので、ある程度の効果は期待できます。
労働基準監督署に相談しても、会社側が聞く耳を持たない場合は労働審判を申し立てることをおすすめします。
労働審判では、当事者(従業員と会社)の他に、職業裁判官の労働審判員1名と民間出身の労働審判員2名の労働審判委員会が間に入って調停による解決を目指します。
調停とは端的にいえば、話し合いのことです。
原則3回以内の期日で話し合いがまとまらず、解決できない場合は審判が行われることになります。
原則3回以内の期日で終了するため、平均2〜3ヶ月程度で解決できるところが労働審判のメリットです。
また、調停での決定や審判内容は、裁判上の和解と同じ効力があり会社側が応じない場合は強制執行できます。
ただし、ここで会社側との話し合いがまとまらずに、出された審判に会社側が納得せず異議を申し立てた場合は訴訟手続きに発展します。
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労働審判でも解決しない場合、訴訟をして裁判で争うことになります。
裁判になりますと、労働審判とは異なり手続きも厳格で、専門的な知識が必要です。
これらを一人で行うとなると、時間も労力も大きくかかります。
特に現在妊娠中で、これから出産を控える方にとって裁判は大きな負担です。
労働審判では弁護士に依頼していなかった方も、裁判まで発展したら労働問題に強い弁護士に依頼して対応を任せることをおすすめします。
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男女雇用機会均等法と労働基準法では、母性健康管理の措置として以下の事項が定められています。
(1)保健指導や健康診査のための時間の確保(男女雇用機会均等法法第12条)
(2)指導事項を遵守するための措置(法第13条)
(3)妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止(法第9条)
(4)紛争の解決(法第15条~第27条)
(5)産前・産後休業(労働基準法第65条第1項及び第2項)
(6)軽易業務転換(法第65条第3項)
(7)危険有害業務の就業制限(法第64条の3)
(8)変形労働時間制の適用制限(法第66条第1項)
(9)時間外労働・休日労働・深夜業の制限(法第66条第2項及び第3項)
(10)育児時間の請求(法第67条)
(11)罰則(法第119条)
法的に保護されている妊婦の権利や、禁じられている企業側の行動について解説していきます。
妊娠した女性労働者が保健指導または健康診査を受診するための時間を企業は確保しなければなりません(男女雇用機会均等法法第12条)。
妊娠中の場合、妊娠23週までは4週間に1回、妊娠24週から35週までは2週間に1回、妊娠36週以後出産までは1週間に1回は検診診査等の時間を確保する義務を企業は負っています。
産後(出産後1年以内)の場合、企業は医師等の指示に従って時間を確保する必要があります。
妊娠した女性労働者が医師等から指導を受けた場合、その指導を守るようにするため、企業は勤務時間の変更や勤務の軽減といった措置を講じる必要があります(法第13条)。
産前産後休暇の取得や妊娠中の時差通勤といった母性保護措置を受けたことを理由に、解雇や雇い止めといった不利益取扱いを企業はしてはいけません(法第9条3項)。
また、妊娠中および出産後1年を経過しない女性労働者に対して、妊娠したことを理由とした解雇は認められません(法第9条4項)。
ただし、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められる解雇事由であれば、妊娠中および出産後1年を経過しない女性労働者であっても解雇は有効です(労働契約法第16条)。
企業が母性保護措置を講じてくれず、妊娠した女性労働者と企業の間で紛争が発生した場合は、女性労働者は調停など紛争解決援助の申出を行うことができます(法第15条~第27条)。
6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内に出産する予定の女性労働者が企業に休業を請求した場合、企業は必ず休業させなければなりません(労働基準法第65条第1項)。
また、産後8週間を経過していない女性労働者が就業することはできません。労働者本人が就業を望んだとしても、企業は拒否しなければいけません(同法第65条第2項)。
ただし、産後6週間を経過した女性労働者が就業を希望し、かつ医師が支障がないと認めた業務に限り、企業は女性労働者を業務に就かせることが可能です(同項ただし書き)。
妊娠中の女性労働者が軽易な業務への転換を請求した場合、企業は応じる必要があります(法第65条第3項)。
妊産婦等を重量物を取り扱う業務、有害ガスを発散する場所における業務その他妊産婦の妊娠、出産、ほ育等に有害な業務に就かせてはいけません(法第64条の3)。
変形労働時間制が適用されている職場であっても、妊産婦が請求した場合、1日および1週間の法定時間を超えて労働させることはできません(法第66条第1項)。
妊産婦が請求した場合、時間外労働、休日労働、または深夜業をさせることはできません(法第66条第2項及び第3項)。
生後満1年に達しない生児を育てる女性労働者は、1日2回各々少なくとも30分、育児するための時間を請求することができます(法第67条)。
この育児時間は、労働時間6時間を超える場合に付与される最低45分、8時間を超える場合に付与される最低1時間の休憩時間とは別に請求できます。
上記の労働基準法に違反した者は、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられます(法第119条)。
また、厚生労働大臣が男女雇用機会均等法の施行に関して事業主に対して報告を求めた際、事業主が報告をしなかったり虚偽の報告をした場合は、二十万円以下の過料に処されます(男女雇用機会均等法第33条)。
みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。