その減給は違法?懲戒による理由や期間、限度を労働基準法に基づいて解説

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2020年10月1日以降の自己都合退職者は、失業手当の給付制限期間が短縮される変更があります。

コロナ禍をはじめとした経営不振の煽りを受け、リストラやボーナスカット、減給のニュースを目にすることが多くなってきました。「もしも減給されたらどうしよう」と不安を抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

会社から減給の通知があった場合は従うしかないと考えがちですが、実際は会社や経営者が一方的に言い渡せば通るものではありません。
この記事では、労働基準法第91条(減給についての考え方)に基づいて、減給が、違法、不当な処分にあたるか否かの考え方を解説します。

労働基準法に学ぶ、減給の基礎知識

減給の違法性を問うためには、正しい知識が不可欠です。

まずは、減給に関する基礎知識を見ていきましょう。

そもそも減給とはなにか

減給とは、懲戒処分の一つとして賃金を減額する処分のことです。

例えば以下のような場合、減給処分をされる可能性があります。

  • 業務命令や、業務上の指示に従わない
  • 無断で欠勤や遅刻を繰り返す
  • 機密情報を漏洩させた
  • 会社を誹謗中傷したり、名誉や信用を傷つけたりした

これらを繰り返させないようにするための罰の一つが、懲戒処分による減給です。しかし、減給額は会社や経営者の裁量で好きなように決めることができるわけではありません。

減給のルール:減給額にも上限がある

第九十一条 就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。

労働基準法

労働基準法第91条では、上記のように減給の制裁について金額の制限が明記されています。

分かりやすくいうと、次のようになります。

  • 一回の制裁で減給できる金額は日給の半分まで
  • 減給金額の合計は給与の1割を上回ってはいけない

なんらかの過失を犯したとしても、過剰な罰によって労働者が生計を立てられなくなることがないように、法律で保護しているのです。

つまり、上記を超える減給処分は労働基準法違法のため、違法な減給といえます。

減給のルール:就業規則「懲戒」に定義がある

減給は、就業規則の懲戒の項目の中にその理由が記されている場合にのみ有効となります。(普通、就業規則の懲戒の項には減給の対象になる問題行動が記されています)

こちらも労働者を守るためのものです。経営者の気分次第で給料が下げられ、労働者が困窮するということのないように、このような規定が設けられています。

減給の大原則:双方の合意がない場合は無効

前項をお読みになり、「減給を言い渡すために就業規則を変えられたら意味がない」と思った方もいっしゃしゃるのではないでしょうか。そういったことがないように、別の法律でその方法は禁止されているのでご安心ください。具体的には、労働契約法第9条本文がそれにあたります。

第九条 使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。

労働契約法

上記は「ただし、次条の場合は、この限りでない。」と続きます。もちろん例外はありますが、大原則としては双方の合意が必要なのです。つまり、経営者の一存で就業規則の変更はできず、労働者と合意しなければならないということです。

このように、減給には客観性(誰が見ても減給の理由が明らかであること)と妥当性(適正な方法や手続きが踏まれていること)が求められるのです。

では、妥当な減給とはどのようなケースなのでしょうか?次項で詳しく解説します。

違法ではない減給の4つのケース

法的には問題のない減給とされる、代表的なケースを4件ご紹介致します。

歩合制の労働契約の場合は「減給」ではない

1つ目が、成功報酬などの歩合制だった場合です。成果次第で給与が増減する働き方に合意の上で契約を交わしている場合、給与が減ったとしても減給とは呼びません。

降格による役職手当の減額

2つ目は、降格による役職手当の減額です。

懲戒処分には減給だけではなく、降格(役職の引き下げ)という措置もあります。

役職が引き下げになると、当然役職手当の金額も変更になります。事前に役職ごとの手当の金額が明示されている場合、役職手当の分だけ給与が減ったとしても、違法性はありません。

部署異動や配属替えになった場合も同様の考え方です。「職務や勤務地によって基準となる賃金が異なる」等の規定がある場合には、基本給などが変更になったとしても違法性のある減給とは言えないのです。

人事考課による減給

3つ目は、人事評価制度などに基づく人事考課の結果として減給になった場合です。

人事評価制度などに基づく人事考課の結果として減給になった場合、すなわち能力や成績などが至らないと判断された場合は、違法性はないとされます。

この場合には、評価や賃金テーブルなどが適切に運用されており、客観的な判断に基づくものであることを会社側が証明できることが前提条件です。

双方合意の上の減給

最後のケースは、双方合意の上の減給です。

例えば、家庭の事情で転勤ができなくなった場合、自ら役職や責任者などの立場を手放す場合などがこれにあたります。

お互いに納得の上で給与が減るのであれば、もちろん違法性は問われません。

基本として、ここであげた減給の4つのケースは違法ではないとされます。

しかし、これら以外の減給の場合、違法性がある可能性が高まります。次項でそれらをケーススタディとして紹介します。

違法性の高い減給のケーススタディ

ここからは、違法性のある減給について4つのケースを紹介ます。

「就業規則にない減給」はできない

前述の通り、減給には客観的な根拠や理由が求められます。その基準となるのが就業規則です。そのため、就業規則にない事由での減給は違法だと言えます。

具体的には、就業規則の懲戒規定に、降格や降職の区分が定められていない場合、また懲戒に該当する事由が定められていない場合がこれにあたります。

上記の問題は、根拠に乏しい上、懲戒処分の相当性を欠くことにあります。

相当性とは、簡単に言うと懲戒を受ける事由と懲戒処分が釣り合っているかの妥当性のことです。労働者側に重すぎる懲戒が課されないように、このような考え方があるのです。

「経営難による一方的な減給」はできない

景気や時世によって、会社の収益が芳しくないこともあるでしょう。しかしそんな場合でも、会社の裁量で一方的に減給を言い渡された場合は違法です。

倒産の危機にあったとしても、減給には全従業員の同意が必要になります。

「降格したが業務内容に変化がない」は不当

前項で、降格による役職手当の減額は違法ではないと書きましたが、これは業務の内容や責任が変わった場合のみです。

降格・降職したにも関わらず、実質的な業務の内容や責任の範囲が変わらない場合は違法とされます。

もちろん、退職に追い込むことを目的にした降格や、2段階以上の行き過ぎた降格は違法です。

減給の合意したかを書面だけで判断することはできない

また、前項で双方合意の上の減給は妥当性が高いとも書きましたが、これは真の意味での合意があった場合です。

労働者側が何らかの圧で本音が言えず書類にサインしてしまった場合、または経営者が「減給後に異議を出さなかったため黙示の同意とみなした」という場合でも、合意の上だと認められないケースも存在します。

論点は、単に書類の有無ではなく、客観的で合理的な理由があったことが明らかかという点です。書類すらない場合は、口頭でのやりとりがあったとしても合意の上だと認められないことが殆どです。

まとめ

万が一減給を言い渡されてしまったときに確認すべきことは以下の4点です。

  1. 就業規則の確認
  2. 理由が明示されたか
  3. 合意の上で書類に署名をしたか
  4. 減給の金額は規定以上でないか

減給は生活を変えてしまう可能性もあるため、疑問に思った際は上記4点を確認のうえ、専門家にご相談されてはいかがでしょうか。

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