フレックスタイム制での残業代の計算方法

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2020年10月1日以降の自己都合退職者は、失業手当の給付制限期間が短縮される変更があります。

自由度の高い働き方としてフレックスタイム制という言葉を耳にしたことがある人は多いと思います。

フレックスタイム制のもとで日単位や時間単位ではなく、独自の方法で労働時間が管理されています。

そのため悪質な使用者の中には労働者に長時間労働・残業を強いるためにフレックスタイム制を悪用するものもいます。

したがって、そのような使用者に騙されないようフレックスタイム制の労働時間管理についてしっかりと理解しておくことが必要となります。

この記事では、フレックスタイム制での残業代の計算方法や違法な場合の対処法まで解説しますので是非最後までお読みください。

フレックスタイム制とは?

フレックスタイム制とはどのような制度でしょうか。メリット・デメリットを解説していきます。

フレックスタイム制の導入を考えている人に向けてその手続的要件も併せて解説します。

フレックスタイム制とは何か

「フレックスタイム制」とは、労働者が始業・終業の時刻を自由に自分で決めることができる業務形態です。労働基準法第32条の3に規定されています。

フレックスタイム制の一例として、労働に従事しておかなければならない「コアタイム」という時間と、コアタイムの前後に設けられいつでも出退勤が可能な「フレキシブルタイム」という時間が設定されることが多いです。

フレックスタイム制のメリット・デメリット

フレックスタイム制では、出退勤の時間が自由に決められます。仕事の多寡に応じて早く帰ったり遅く帰ったりできるので効率的に働くことができます。働き方の裁量が増えることで人生の満足度も向上し生産性が上がるというメリットがあります。

他方デメリットとしては、労働者同士が一堂に会する機会が減るため、情報共有が希薄になってしまう可能性があります。また労働者個人によって出退勤の時間が変動しますので社外の人間や取引先との連絡には事前の調整が必要になります。

このようなデメリットもテレワークが普及することで克服することは容易かもしれません。

フレックスタイム制の導入方法

フレックスタイム制を導入するには就業規則への規定と労使協定で法所定の事項を定める必要があります。

2019年の法改正で清算期間が3か月以内に伸長されたことで、清算期間が1か月を超える場合には労使協定を労働基準監督署に届出るという新ルールが制定されました。1か月以内の場合は従来どおり届出は不要です。

フレックスタイム制の場合の残業代ルールと計算方法

フレックスタイム制では、日によって労働時間は変動します。長く勤務する日があれば、短い日もあります。そのため、日単位で労働時間を管理することができません。

そこで一定の期間を単位として労働時間を管理します。

次にフレックスタイム制の労働時間管理の方法を具体的に解説します。

清算期間と総労働時間

フレックスタイム制において労働者が労働すべき時間として定められた期間を「清算期間」と言います。そして、そのような清算期間内で、使用者が労働者に労働すべきであると定める時間を「総労働時間」と言います。

例えば、フレックスタイム制が採用される労働者には、「1か月の清算期間中に総労働時間150時間」といった形で労働時間を決めます。

2019年の改正により、これまでの清算期間の上限は1か月でしたが、3か月まで伸ばすことができるようになりました。

フレックスタイム制であっても法定労働時間の制約を全く受けないわけではありません。

総労働時間は「清算期間中の暦日数 ÷ 7日 × 40時間」で算出される法定労働時間以下でなければなりません。
例えば清算期間が1か月とした場合、その月の暦日数が31日であれば、総労働時間は177.1(=31日÷7日×40時間)時間以下でなければ原則としてなりません。

残業のルール

残業時間は総労働時間より実際に労働した時間が上回った部分になります。

ここで法定内残業と法定外残業という違いが残業代計算には重要になります。
法定内残業とは、「総労働時間を超えているものの,法定労働時間を超えていない残業時間」を言います。

残業代として問題になるのは上記の法定外残業のことです。

法定内残業では割増率が適用されず労働時間×1.0倍となりますが、法定外残業の場合には割増率が労働時間×1.25倍となります。

次の事例を考えてみましょう。

清算期間1か月・暦日数31日・法定労働時間177.1時間・総労働時間160時間・実労働時間:180時間

残業時間は実労働時間が総労働時間を超えた部分をいうので、20時間(=180時間-160時間)です。

このうち、法定外残業時間は実労働時間が法定労働時間を超えた部分ですので2.9時間(=180時間-177.1時間)です。

法定内残業時間は残業時間のうち法定外残業時間を除いた部分ですので、17.1時間(=20時間-2.9時間)です。

しかし、フレックスタイム制の残業時間の計算方法にはさらに特殊なものがありますので次で説明していきます

残業代の具体的な計算方法

  1. 清算期間が1か月以内の場合の計算方法
    清算期間が1か月以内の場合は清算期間を通じて法定労働時間を超えて働いた時間が法定外残業時間です。

    例えば、先ほど見たように法定労働時間177.1時間で、実際に働いた時間が180時間の場合は2.9時間(=180時間-177.1時間)が残業時間です。
  2. 清算期間が1か月超え3か月以内の場合
    この場合は法定外残業時間の計算が複雑になります。

■最終月以外

(1)1か月あたり週平均50時間を超える時間は法定外労働時間として各月で計算されます。

この規制のおかげで月によって繁閑差が激しい場合でも、繁忙期に過度に長時間の労働を強制することができなくなっています。

■最終月

(1)1か月あたり週平均50時間を超える時間は法定外労働時間として計算されます。

(2)上記を除き、清算期間全体の実労働時間が週平均40時間を超えた労働時間は清算期間の最終月の法定外労働時間となります。

(1)+(2)の合計時間が、最終月の時間外労働としてカウントされます。

抽象的には理解が難しいので具体例を用いて考えていきましょう。

清算期間が2020年1月~3月で、実際に労働した時間がそれぞれ1月225時間、2月170時間、3月150時間

■まず最終月以外について

(1)「1か月あたり週平均50時間を超えた労働時間」を考えていきましょう。

暦日数は1月は31日、2月は29日です。
隔月の週平均50時間の労働時間は、

1月は221.4時間(=31日÷7日×50時間),

2月は207.1時間(=29日÷7日×50時間)です。

このうち労働時間が超過しているのは1月の225時間のみで、法定外残業時間は3.6時間(=225時間-221.4時間)です。

■次に最終月について

(1)「1か月あたり週平均50時間を超えた労働時間」を考えていきましょう。

3月の週平均50時間の労働時間は221.4時間(=31日÷7日×50時間)です。
3月の実労働時間150時間は221.4時間を超えていません。

次に、(2)「清算期間全体の労働時間が週平均40時間を超えた労働時間」を考えていきましょう。

1月~3月の暦日数の合計は91日(=31日+29日+31日)です。

法定労働時間は520時間(=91日÷7日×40時間)です。

3か月間の実際に働いた労働時間の合計は545時間(=225時間+170時間+150時間)です。

これから法定労働時間を引き、さらに上記最終月以外の法定外残業時間を除いた時間が最終月の法定外残業時間となります。

つまり、545時間-520時間-3.6時間=21.4時間です。

これは清算期間の最終月3月の法定外残業時間です。

したがって、残業時間は1月は3.6時間、2月は0時間、3月は21.4時間となります。

違法な残業が行われている場合の対処法

以上説明してきたとおり、フレックスタイム制の計算方法は複雑化しがちです。

そのため、フレックスタイム制が導入されている労働者も自分に支払われている給料が適法なものかチェック出来ない実情があります。

ここでは、フレックスタイム制の運用が違法な場合の見ぬき方・対処法を簡単に説明します。

フレックスタイム制を導入する手続は完了しているか

いくらフレックスタイム制を導入していると会社が主張しても労働基準法上の手続を踏んで労使協定を交わし、就業規則に所定事項を記載していなければ全て違法であり無効です。

さらに1か月を超えるフレックスタイム制を導入する場合は労働基準監督署への届出も必要です。

まずは、就業規則をチェックしましょう。

違法な運用がなされていないか

フレックスタイム制はここまで見てきたように労働時間管理が複雑です。しかし労働時間の指定が難しい等の理由で残業代が支払われていないようなことがあれば違法です。

その他繁忙期は有給が取得出来ない、残業時間を翌月の労働時間に繰り越す等々はいずれも違法な運用になりますので注意が必要です。

違法な残業が行われているときの対処法 

正しい残業代を計算して会社に請求しましょう。

雇用契約書・就業規則のコピー・始業と終業を証明する資料・就労時間の労働内容が分かる資料等は残業代請求の重要な証拠になります。

正確な残業時間を記録するには、労働時間管理ソフト、タイムカードやメモ、家族への出退社時の連絡等も有効な資料になります。

また,賃金の請求についての時効は労働基準法115条,附則143条3項で3年と定められているため注意が必要です。

このように会社に残業代を請求したにもかかわらず、会社が何らの対応をしない場合や話が前に進まない場合は労働基準監督署や弁護士に相談することをおすすめします。

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